きっかけはHEROMANのフィギュアから。「ベイマックス」コンセプト・デザインのコヤマシゲト インタビュー!

映画『ベイマックス』(12/20公開)は、東京とサンフランシスコを融合したかのような架空都市“サンフランソウキョウ”が舞台の、ディズニー・アニメーション作品。

ひとりぼっちの天才少年“ヒロ”が、亡き兄が人々の心と体を守るために作ったケア・ロボットのベイマックスとともに、失ってしまったかけがえのない絆を取り戻し、危険を冒して兄の死の真相を探っていくという、勇気を描いている。

日本文化がリスペクトされた世界観の中、白くて丸い空気の詰まったボディでヨチヨチ歩きという、ベイマックスのロボット・デザインのコンセプトを担当された、コヤマシゲトさんに、お話をうかがいました。




――今回のコンセプト・デザインの話は、『HEROMAN』(2010年)がきっかけだったとうかがいましたが?

ええ、正確には『HEROMAN』のフィギュア(バンダイ製「ROBOT魂」)だったんです。ドン・ホール監督たち、メイン・スタッフが来日取材しているとき、秋葉原で『HEROMAN』のROBOT魂を見つけたらしく、たまたま、食事会でドン監督と会う機会があって、「秋葉原で面白いロボットのオモチャを見つけたよ」と『HEROMAN』のROBOT魂を見せられたんです。「そのロボットをデザインしたのは僕ですよ」と言ったら、「面白い巡り合わせだね!」とドン監督も驚いて。「じゃあ、何かあったら手伝ってくれない?」「ええ、もちろんですよ」と、そんな話をして別れました。そうしたら後日、本当にディズニー・スタジオから連絡が来て「ぜひやりましょう」という話になったんです。

――『HEROMAN』の後ですから、3~4年前ですか?

アニメの放送後ですから、2011年だったと思います。リーマンショックの影響などがあって、『HEROMAN』は北米では放送されなかったんです。当然、ソフトも発売されていなかったので、北米では『HEROMAN』を知っている人も少なくて。ですから、ドン監督は何の先入観もなく、「面白いオモチャが売っているな」と、デザインだけをみて手に取ってくれたわけです。アメリカ人の感覚からすると、顔もついてるし、相当に変なタイプのロボットに見えたんでしょうね。



――当時、『ベイマックス』の企画は動いていたんですよね?

“Big Hero 6”(『ベイマックス』の原題)という企画が動いているらしい、とやんわりとは聞いていました。


――では、ドン監督たちは新作の資料集めのために来日していたのですか?

そう、日本の風景の写真を撮ったり、画集やフィギュアを買う目的で来日していたんです。成田亨さんの展覧会に行ったり、とにかく日本の特撮やアニメ、そして街並みを徹底的にリサーチしていましたね。


――日本人スタッフをスカウトしに来ていたわけではないんですね?

そういうことではなかったんだろうと思います。物語の舞台となる“サンフランソウキョウ”のコンセプト・アーティストとして、イラストレーターの上杉忠弘さんが参加されていますが、日本人だからという理由で起用されたわけではないでしょう。上杉さんは海外のアニメーション(『コララインとボタンの魔女』)にも関わられていますし、大変素晴らしいイラストを描かれる方なので、その実力が買われたんだと思います。


――ディズニーでは、『ファイアボール』で福地仁さんが主役ロボットをデザインされていますよね。


福地さんと柳瀬(敬之)さんの素晴らしいお仕事でした。ただ、『ファイアボール』の場合はディズニー・ジャパンの制作ですからスタジオもスタッフも国内で、『ベイマックス』は本国のウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの制作なので、だいぶ制作方法が違うのではないかな、と思います。とはいえ、僕としてはピクサーやニコロデオンといったスタジオにも友人たちがいて、アメリカの制作スタイルもある程度は把握していたので、それほど違和感なく参加できました。

――コヤマさんとしては、「いつかディズニー作品に参加してやろう」という野心はあったんですか?

アメコミやカートゥーンが好きなので、漠然と「海外作品にも参加してみたいな」と思ってはいました。だけど、そんなにギラギラやりたがったとしても、そう簡単にやらせてもらえそうもないので……(笑)、今回は「たまたま知り合った友達の企画を手伝う」みたいな素直な感覚でした。

BIG HERO 6 - Concept Art by Shigeto Koyama. (c)2014 Disney. All Rights Reserved.

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