【中国オタクのアニメ事情】中国で話題になった冬の新作アニメ(マニア編) 中国のアニメ配信と続編作品の難しさ

中国オタク事情に関するあれこれを紹介している百元籠羊と申します。

冬アニメもそろそろ終盤かと思いますが、前回に引き続き、今回は中国で配信されている冬アニメで、現地のマニア層を中心に話題になっている作品についてと、冬アニメで強かった続編作品の人気に関する中国オタク界隈の事情などを紹介させていただきます。


マニア層を中心に人気になっている作品


今期も中国のオタクのマニア層の間で話題になったアニメはいくつかありますが、その中で比較的広い範囲から注目され、話題にもなっているのは「冴えない彼女の育てかた」かと思われます。


中国のオタク界隈ではラノベ原作アニメ(特に中国のオタク界隈でよく知られているレーベルの作品)は、ラノベ読みの層からの支持があり、アニメ配信開始前の作品紹介から、他の原作アニメやオリジナルアニメに比べて堅調な人気となる傾向がありますが、「冴えない彼女の育てかた」はラノベ読みの層以外からの支持も獲得しつつあります。

中国のオタク界隈においては、原作者の丸戸史明さんの手がけたPCゲーム「WHITE ALBUM2」の評価がきわめて高く、アニメ配信前からラノベ読み層以外のマニア層からも注目が集まっていました。始まってみれば手堅い作品展開に加えて、日本の同人関係の内容(特に同人ゲーム制作)についてのストーリーが「新鮮な日本のオタク事情に関する情報」と受け止められることになったようです。

中国でも最近はオタク系のイベントがさまざまな都市で開催されるようになり、同人誌制作も珍しい話ではなくなっていますが、同人ゲームに関してはまだ同人誌ほど明確にイメージできていません。日本の作品は入るものの、日本においてどのような形で扱われているのか、制作されているのかといった情報は少ないため、同人ゲームに関するオタクの知識を学べる作品として歓迎されている面もあります。

また、作中に出てくるアニメやギャルゲーなど、各種のオタクネタが現在の中国のオタクのマニア層にとって手頃なレベルだったのもプラスに働いているそうで、「冴えない彼女の育てかた」は中国のオタク系コミュニティにおいては、「語れる」「ネタにできる」作品ともなっているそうです。


中国のアニメ配信と続編作品の難しさ


冬アニメは、前回のライト層編と同様、「東京喰種トーキョーグール√A」、「黒子のバスケ」、「アルドノア・ゼロ」など続編作品が人気となっていますが、これは第2期や第3期の作品は新作の中に埋もれやすい、第1期ほどは伸びないという傾向のある中国の動画サイトにおけるアニメ配信では少々珍しい結果と言えます。

中国では春節休みにおける学生、若い世代の帰省とそれに伴って同年代の交流が大きく減少するという事情があることから、冬アニメに関しては昨年、一昨年ともに新作を積極的に発掘、追いかける人が減り、定番や作風が確定していると思われる「外れないであろう作品」に流れる傾向がありました。今年の春節は例年よりも遅いため、冬アニメへの注目だけでなく、イベント関係も含めて春節モードの空気が長く残り、動きの鈍い時期が長めになっていたようです。

そういった背景もあってか、冬アニメにおいては続編の人気が目立っていますが、続編であれば人気になったというわけではありません。たとえば「デュラララ!!×2 承」は、中国のオタク界隈における事前の予想、人気からすれば意外な苦戦をしています。

中国でも「デュラララ!!」の人気は高く、原作のライトノベルも、2010年に放送されたアニメ第1期も大人気となり一大ジャンルを形成するなど中国のオタク界隈に大きな影響を与えた作品ですし、その人気の根強さから中国のオタク業界では冬アニメの期待作のひとつとされていました。しかし始まってみればアクセス数が思ったよりも伸びない……といった状況となっています。
それでも「デュラララ!!」はまだ比較的よい方で、過去にはさらに残念なことになってしまった続編作品も珍しくはありません。

冬アニメで人気となった続編作品は、作品の面白さもさることながら、「春節特有の事情があり、第1期からそれほど間が空いておらず、ファンの記憶、コミュニティにおける熱、話題としての鮮度が十分に残っていたから人気となった」という見方もあります。

この見方に関しては、私自身も納得できるところがあります。過去、期待されたほど人気を獲得できなかった、埋もれてしまった続編作品は、前作から時間が空いたことにより、続編の開始時点で以前のファンが別の作品に移ってしまっている。中国のオタク層にとっては過去の作品扱いになっていたようなものも見受けられました。

ネットにより日本から入ってくる情報、コンテンツが昔と比べて急増しているとは言え、それでもアニメ配信以外のオタク関係の環境(書籍での展開や、各種イベント、ラジオ番組など日常的に接することのできるもの)は、まだ日本と中国では大きな差があります。

中国で人気になる作品の多くは、やはりアニメ経由となっていますが、これはアニメ配信がなければ作品に接する機会が激減するということでもあります。
もちろん今の時代、時間とお金をかければ日本に近いレベルで作品を追いかけることも不可能ではなくなっていますが、それはあくまでマニアな層の話です。ライトな層はやはり基本的にネットで見ることのできるアニメと、その作品の話題がメインとなっています。

そういった環境にあることから、中国ではアニメ配信がない期間におけるライトな層の作品に対する熱の冷め方は日本より随分と急激なのです。

そして現在の中国の動画サイトにおける視聴者は、ライト寄りな層が多数となっていますから、「間が長く空いた」続編アニメは作品の人気は根強くても、中国の動画サイトにおけるアクセス数に関しては苦戦する……といったことになってしまうのも珍しくないのです。

アニメの正規配信の増大により、中国における作品の広まり方、人気の出方も大きく変化しています。そして中国のオタク界隈では「作品の人気」に関して、それがどういった層におけるものなのか、また、動画サイトにおける配信ビジネスや動画サイト上の人気につながるものなのか……といったことを、ある程度区別して考えるべきだという認識も出ている模様です。


(文/百元籠羊)

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