【季節を楽しむオススメ作品第2回】風薫る初夏に、新たな挑戦を! 風が人生を変えるドラマチックアニメ
四季折々、この時期にこそ楽しめるアニメがある! 季節の話題にまつわる新旧の良作品をアニメライターが紹介します。
新緑がまぶしい5月は、風がさわやかに感じられる、1年で一番エネルギーにあふれた季節。そして風はしばしば、変化や前進のメタファーでもあります。5月の風を思わせる、爽快でエネルギッシュなアニメ作品を集めてみました。
まずは、風が劇中で重要なモチーフになっている作品から。
ニューヨークで暮らす11歳の少年シュウは、かつて地球上に存在した伝説のモンスター「レジェンズ」の1体、ウインドラゴンのシロンを甦らせ、彼をめぐるさまざまな騒動に巻きこまれていきます。
子供とモンスターがコンビを組んで戦う「モンスターもの」で、シロンは風属性のウインドラゴン。それもあってか、風が作品を象徴する要素となっているのがポイントです。
主人公のシュウは、「この世は全て風まかせ」が口グセの、自由気ままなのんき者。彼が悩むとき、風は止まり、空気は停滞し、物事は難しくなるのです。シロンとひとつになって風を感じながら空を飛翔すれば、とりあえず次への道は開ける。その爽快感が、作品の持ち味のひとつです。
大地丙太郎監督がテンポよくお得意のギャグを盛り込んだ、ドタバタコメディアニメ。キャラクターデザインは子供向けですが、あなどるなかれ。レジェンズという秘密を抱えた子供たちの葛藤、見守る大人たちの変化など、話が進むほどシリアス要素も重みを増します。BGMで流れる軽快で本格的なジャズも作品を盛り上げ、見るほどにクセになります。
三頭身のロボットたちが繰り広げる、異色の熱血スポーツアニメ。舞台は、ロボットがさまざまなスポーツを行う「アイアンリーグ」が人気を集める未来。ラフプレーが横行するアイアンリーグで、正々堂々戦うスポーツの楽しさを追求する、弱小チーム・シルバーキャッスルの戦いを描きます。
タイトルに「疾風」とありますが、メインキャラクターとして登場するスター選手の名前が「マッハウィンディ」。その名の通り、風のようにフィールドを駆け、涼やかな勇姿を持つ華のある人気選手で、性格も軽やか。思い立ったら、生まれ育った実力トップの人気チームを即日退団するという、よく言えばフットワークの軽さ、悪く言えば勢いで行動する考えなしの一面があります。
この作品も、キャラクターデザインを見ていると子供向けに見えますが、熱い魂とプレイが周囲を変えていくストーリーは、正統派のスポーツものの味わい。そこに、ロボットの人権問題や、望まず軍事利用される悲劇など、いろんな問題が絡んできます。個性的なキャラクターや魅力的なライバルが揃い、見始めたら止まりません。
テレビシリーズの人気を受け、続編OVA「疾風!アイアンリーガー 銀光(シルバー)の旗の下に」(全5話)が制作されています。
機械文明が発達した街「カーム」で暮らす少年ゼッドは、閉塞した世界に息苦しさを感じていました。ある日、警察に追われて光の渦に飛び込んだゼッドは、戦乱が続く異世界にたどり着き、「シャード」の力を使う「シャードキャスター」として、戦いに身を投じることになります。やがて、カームで親友だったノアと異世界で再会することになりますが、別々の陣営に属する2人は、運命に翻弄されることに。
トレーディングカードゲームとのタイアップアニメとしてスタートした、異世界での冒険モノ。人間ドラマやストーリーを重視していて、人死になどの重い展開もあるダークファンタジーに仕上がっています。
ゼッドが悩み迷うときには、導くように風が吹いてきます。その風を受けて行動するとき、事態は動き、周囲も変わる。立ち止まらず、突き抜けていくゼッドの生き方は、状況がハードなだけに爽快です。異能バトルものであるのはもちろんですが、いくつもの国や勢力がそれぞれの思わくで動いていく物語は、歴史ファンタジー、戦記モノに近い味わい。じわじわハマります。
遥か未来、人類は何百年もの間、地中に穴を掘って生活しているという世界が舞台です。主人公は、穴掘りが取り柄の少年シモン。巨大なロボット・ガンメンと出会い、地盤を突き破って初めて地上の世界を知った彼は、仲間たちと旅に出ることに。そして時に大きな挫折を経験しながら、運命を切り開き生き抜いていくことになります。
冒頭、地中の世界の息苦しさが実感できる分、地中から地上に出たときの爽快感は大きく、「風が吹き、青空が広がる世界ってすばらしい!」と感じさせられます。そしてその勢いに乗って、止まらない物語と迫力のメカバトルが、ガンガン展開していきます。ひと言で耳に残る、印象的なセリフ回しも絶妙です。
のちに再構築して制作された、「劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇」(2008年公開)と「劇場版 天元突破グレンラガン 螺巌篇」(2009年公開)の2本が、まとめて見るのにはおすすめです。全部で4時間、見終わったら熱いセリフとド迫力のメカアクションにぶん回され、頭がグワングワンになること間違いなしです!
改めて説明するのも無粋なほど有名な、宮崎駿原作・監督による、スタジオジブリの名作映画です。
「風の谷」は、主人公のナウシカが生まれ育った、辺境の小国の名です。国内には海から吹きつける風を動力とした風車が多数あります。近場への移動手段は、風に乗る小型の一人乗り軽量飛行機メーヴェ。また、強い風は胞子を防ぎ、この国を腐海の浸食から守る役割も果たしています。
独自の気候が、産業や風俗習慣を作りあげている、しっかりした世界観を持つ本格ファンタジー。改めて秀逸な設定だなと感じます。
個人的には、1994年に完結した原作コミックを、最後までアニメで見てみたいものです。往年の名作のアニメ化が続く今だからこそ、期待したい!
そして風はしばしば、最速を競い合うレーサーの象徴ともなります。マシンレースを描いた作品から2つご紹介しましょう。
「新世紀GPX(フューチャーグランプリ)サイバーフォーミュラ」(1991年放送)
近未来の架空のモータースポーツ「サイバーフォーミュラ」を描くレースアニメ。当時のF1ブームを受け、本格的なレースアニメとして誕生しました。
全37話を通して10戦が描かれ、ラスト2話での日本最終戦の熱さが話題となり、その後のブームの引き金に。以後、OVAで「新世紀GPXサイバーフォーミュラ11(ダブルワン)」(全6話)、「新世紀GPXサイバーフォーミュラZERO」(全8話)、「新世紀GPXサイバーフォーミュラSAGA」(全8話)、「新世紀GPXサイバーフォーミュラSIN」(全5話)と、1992年から2000年に至るまで続けて制作された、ロングラン人気シリーズになりました。
ブリード加賀などのキャラクター人気がブームのきっかけで、女性人気が中心でしたが、ドライバーやメカニックたちの熱いレース描写は男性にも大きな人気を呼びました。
ミニ四駆を楽しむ兄弟、星馬烈(せいばれつ)と星馬豪(せいばごう)が、さまざまなミニ四レーサーと競い合う、ミニ四駆レースアニメ。通称「無印」と呼ばれる第1期のオープニング主題歌が、「ウィニング・ラン! -風になりたい-」です。
「ミニ四駆」とは、タミヤが販売する、小型モーターを搭載した四輪駆動のプラモデル。ちょっとしたカスタマイズで驚くほど走りが速くなるという特性があり、手をかけた分、自分のマシンへの思い入れも深くなります。
走っているのは手のひらサイズのプラモデルですが、アニメを見る子供たちは、烈や豪とともに、自分がマシンに乗り込んで、「コンマ1秒でも1ミリでも速く」のレース気分を楽しみました。
個性的な世界各国のライバルが出そろう「爆走兄弟レッツ&ゴー!! WGP篇」(1997年放送)が、当時のファン(特に大きいお姉さん!)に人気でした。これから初めて見るという人は、まず「映画 爆走兄弟レッツ&ゴー!!WGP 暴走ミニ四駆大追跡!」(1997年公開)から見るのもいいでしょう。
以上、さわやかで時には熱い風を感じる7作品をご紹介しました。
あなたの人生に風、吹いていますか? なんだか停滞してるなーと思ったら、こんなアニメに触れてみるのもいいかもしれませんよ。
(文/やまゆー)
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