【アニメコラム】アニメライターによる2015年春アニメ中間レビュー

春は年間を通じてもっとも多くのアニメがスタートする季節。1クールアニメはもちろん、半年や1年にわたってオンエアされる作品も揃っている。今回はそんな2015年春の新作テレビアニメを中間レビュー!

吹奏楽部を舞台とした青春ストーリー「響け!ユーフォニアム」、講談社漫画賞に輝いたSFコミックのアニメ第2期「シドニアの騎士 第九惑星戦役」、シリーズ7年目を迎えた「ジュエルペット マジカルチェンジ」、大方の予想通り再復活した「銀魂゜」、そして人気ゆるキャラが主人公の「ふなっしーのふなふなふな日和」の5作品をラインアップ。ヒット作・話題作を振り返って、これからの展開に期待していこう。


■「響け!ユーフォニアム

涼宮ハルヒの憂鬱」「たまこまーけっと」をはじめ、数多くの人気作を手がけてきた京都アニメーションが送り出す吹奏楽アニメ。同じく音楽をテーマにした「けいおん!」ではゆるふわな女子空間が描かれていたが、本作は部活特有の難しい人間関係にも踏み込んでいる。苦手な相手に話しかけようとして思わず息を飲み込んだり、会話を終えてから口に手を当て呼吸を整えたりする仕草から、心の機微を感じ取ることができる。

その細やかな描写は、ユーフォニアムが息を吹き込む楽器であることと無縁ではないだろう。方向性の違いから部員が退部したり、先輩より上手い後輩が入部するといった複雑な状況を、京都アニメーションがどう描くのかも見逃せないポイントだ。


■「シドニアの騎士 第九惑星戦役

正道ロボットSFと銘打つハードな世界観を持ついっぽう、主人公の谷風長道がありとあらゆる生物からモテまくるハーレムアニメでもある本作。正統派ヒロインの星白閑、男でも女でもない科戸瀬イザナ、妹キャラながら積極的な緑川纈、11人もいるクローンの仄姉妹、オレにだけは素顔を見せてくれる小林艦長、野性味あふれる熊の寮母ヒ山ララァまでよりどりみどり。第2期では触手系ヒロインの白羽衣つむぎまで登場し、無数の触手で長道の体を包み込む始末。せいぜい美少女にしかモテない凡百の主人公とはまったく格が違いすぎる。

大学デビューや社会人デビューを控えるティーンエイジャーならいざしらず、残されたメモリアルが還暦祝いぐらいなオタにとって、ハーレムアニメを見るという行為は己の現実を直視させられるつらい行為である。それでもなお「シドニアの騎士」が楽しく見られるのは、すべてのものから愛され、愛そうとする志の高さゆえにほかならない。



■「ジュエルペット マジカルチェンジ

「ジュエルペット」シリーズが7年目に突入。シリアス寄りだった前作から一転、従来のコメディ路線へとシフトチェンジ。主人公のルビーが7年間行方不明になっていたりと、第1話から衝撃的な設定が明かされた。第6話ではハローキティとマイメロディ(のぬいぐるみ)が巨大化し、夢のタイマンバトルが勃発。さらにサンリオの大先輩たるキティのことを、ルビーはまさかの怪獣呼ばわり。そんなコミカルなところからもサンリオの懐の深さがうかがえる。

本作では新たな試みとして、ジュエルペットが魔法少女に変身するというギミックを取り入れている。だが今のところ変身時間はごくわずか。失敗してオバちゃんになったりお皿になっていた時間のほうが長いくらい。この設定を1年間かけてどう生かしていくのだろうか。Cパート「ただいま逃亡中」のかわいいタッチも印象的で毎週待ち遠しくなってしまう。



■「銀魂゜

「宇宙戦艦ヤマト」以来の伝統に乗っ取って、アニメ「銀魂」が2年ぶりに復活。初回のラストでは「ドラゴンボール」のキャラがほぼそのまま登場するなど、過激なパロディはいまだ健在。カット割りまでオリジナルと似せる気合の入れようで、いい意味で変わらない新シリーズを満喫できそうだ。

「銀魂」はこれまでも「ドラゴンボール」をネタにすることが多かったが、今期は現時点で何度も登場している。まるで終わることが許されないアニメとしてシンパシーを感じているかのよう。初回にアニメ化されたのが、時の流れを止めてしまう三千世界時計のエピソードだったのも何やら示唆的である。今夏スタートする「ドラゴンボール超(スーパー)」とともにジャンプ原作アニメを追いかけていきたい。



■「ふなっしーのふなふなふな日和
人気のゆるキャラがテレビアニメになって登場。人間界に舞い降りた梨の妖精ふなっしーが、みんなの笑顔のために奮闘するほのぼのストーリーが繰り広げられている。近所の子供を助けたり、捨て猫を育てたりと、本作のふなっしーは実に健気でかわいらしい。

以前ほかのアニメにゲスト出演したときは、梨ビームを出したり、SMのムチで打たれたり、秒間24フレームでヌルヌル動いたり、毛穴すっきりパックに引っこ抜かれたり、CMでは実の弟を喰ったりと、カオスっぷりを遺憾なく発揮していただけに、同じふなっしーなのか疑われるほど。トンデモキャラが鳴りを潜めてしまったさびしさはあるが、キャラデザのキュートさと相まって、親子いっしょに安心して楽しめる一作となった。「ふなっしーのふなふなふな日和」は毎週月曜~金曜日に放送されているが、水曜日によく出てくるオリジナルのライバルキャラ・ぐれっしーにも要注目だ。


2015年春アニメの一覧は、こちら。


(文/高橋克則)

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