【アニメコラム】アニメライターが選ぶ、2015年春アニメ総括レビュー! 「放課後のプレアデス」「ダンまち」など、注目の5作品を紹介!!

いよいよ夏が到来し、4月開始の新作アニメも多くがフィナーレを迎えた。そこで今回は完結した人気作・注目作の総括レビューを掲載する。ガイナックスと自動車ブランド・スバルがタッグを組んだオリジナルアニメ「放課後のプレアデス」、テレビドラマ化もされた人気コミック原作の「山田くんと7人の魔女」、京都アニメーションの吹奏楽アニメ「響け!ユーフォニアム」、本編だけでなく衣装も話題の「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」、世界唯一の角栓アニメ「にゅるにゅる!!KAKUSENくん2期」の5作品をラインナップ!



■「放課後のプレアデス

遭難したプレアデス星人の母船を直すため、5人の女子中学生が魔法使いになってエンジンのカケラを探し出す。あらすじを聞くと普通の魔法少女モノに思えるが、空を飛ぶ魔法のステッキは第一宇宙速度を軽々と突破し、舞台は地球から全宇宙へ広がっていく。太陽系や銀河系を超えて事象の地平面にまで達するマクロな世界設定と、キャラクターの内面に迫るミクロな視点をあわせ持った、まぎれもない宇宙SFだ。
ガイナックスらしくSF考証にもこだわっており、ウラシマ効果や多世界解釈など過去作品のモチーフが使用されている。最終話「渚にて」では「THE END OF EVANGELION」を彷彿させる場面さえ登場する。あのラストシーンを新たな立ち位置から捉え直したような「放課後のプレアデス」の結末は、爽やかで少し切ない余韻を残している。



■「山田くんと7人の魔女

ファーストキスの相手と結婚しようと思っているオタの純情をあざ笑うかのように、登場人物たちが次々とキスを交わすことで物語が進展する本作。キス・セックス・結婚が神聖不可侵のトリニティを形成している我々にとって、愛のないキスが飛び交う光景は乱痴気騒ぎも同然だ。アニメ公式サイトの背景が♂と♀で埋め尽くされているのも、まったく破廉恥な話である。
しかしその本編は意外なくらい真っ直ぐなラブストーリーに仕上がっているのは、主人公・山田竜の一途さゆえだろう。キスの能力でさまざまな体に入れ替わってもヒロイン・白石うららのために奮闘する姿は純真そのもの。いかなるときでも変わらない心の大切さを教えてくれる。中身が入れ替わったキャラクターの声を演じ分けるキャストの熱演も見所。



■「響け!ユーフォニアム

高校入学初日に吹奏楽部の演奏を聴いた黄前久美子は、その下手さ加減に思わず顔をゆがめる。「だめだこりゃ」と漏らすほど散々な腕前らしいのだが、いっぽうでそんな演奏にも関わらず目を輝かせて聴き入る女子生徒の姿も描かれていた。久美子とは違い、彼女たちは演奏の良し悪しがわからない人のようだ。本作はこのようにして、持てる者と持たざる者をあっさりと暴露してしまう。その残酷さは最終話では制服によって表現されており、オーディションの合格者は冬服、不合格者は夏服と、ひと目でわかるようになっていた。
第11話の再オーディションでは対比がより際立っている。部員全員の拍手でソロパート担当者を決めるはずなのに、ほとんどの部員は手を叩くことができないのだ。これまで問題が起きないような選択をしてきた部員たちは、どちらも角が立つ選択肢を前に沈黙するしかなくなってしまう。その中で久美子は立ち上がり、高坂麗奈のために拍手を続ける。あの拍手が高らかに鳴り響くのは、自分も特別な存在になろうという決意の音色が備わっているからだ。

■「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか

異世界を舞台としたファンタジーではあるが、主人公・ベル・クラネルが冒険者というよりプロを目指すアスリートの卵に見えるのは気のせいだろうか。冒険を指南するギルドのアドバイザーはトレーナーのようだし、ダンジョンのお供をする荷物係のサポーターはどこかキャディに似ている。それにベルが有望株だと気付いた途端デートに誘うあのアドバイザーは、純朴なドラフト高校生を狙う女子アナと瓜二つではないか。

そんな妄想がふくらむのも、ベルを支え続ける糟糠(そうこう)の妻・ヘスティアの存在があってこそ。神様でありながらバイト生活に身をやつすまで献身的に接する彼女だが、尽くせば尽くすほど冒険者としてのベルの名声は高まり、女性キャラからの好意を一身に受けてしまう。まるで悪いヒモに引っかかっているかのようなヘスティアの健気さに胸を打たれる1作。



■「にゅるにゅる!!KAKUSENくん2期

人間の毛穴に詰まった角栓をモチーフにしたショートアニメシリーズ。1期はブライダルエステによるデウス・エクス・マキナという鮮やかな幕引きを図ったが、2期では角栓たちがアイドルグループ「にゅるズ」を結成。アニソンの祭典「Animelo Summer Live」への出場を目指すという、もはやお肌とは関係のないストーリーが繰り広げられている。

主人公のニュルオは子役の伊藤悠翔くんが続投。いたいけな少年にきわどいセリフをしゃべらせる方向性は変わっておらず、ユルユルでギリギリなエピソードを楽しむことができる。終盤には1期のキャラクターも登場し、物語の舞台はついに宇宙へ……。オンエア終了後もにゅるズの活動は続いているのでこちらも要注目。


(文/高橋克則)

2015春アニメ・レビュー投稿キャンペーン実施中!(7月20日まで)
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