【季節を楽しむオススメ作品第4回】夏は冒険! 出会いが人生変えちゃうアドベンチャーアニメ

四季折々、この時期にこそ楽しめるアニメがある! 季節の話題にまつわる新旧の良作品をアニメライターが紹介します。

梅雨が明ければいよいよ夏。そして、夏といえば冒険! 子どものころ、限りある夏休みという時間に日常と違う生活を体験した記憶は、誰にでもあるでしょう。だから夏の冒険物語は心を引きつけるのかもしれません。心おどるひと時を、アニメで感じてみませんか。


「つり球」(2012年放送)


釣りと出会って始まるフィッシング・アドベンチャー。「夏はやっぱり海でしょ!」というあなたにおすすめの、海辺の青春ストーリーです。舞台は神奈川県藤沢市の江の島。

江の島の高校に転入してきた真田ユキは、人とのコミュニケーションが苦手でテンパリやすい男の子。彼は、“宇宙人”を自称する謎の同級生ハルに誘われて、釣りの楽しさに目覚めていきます。教えてくれるのはぶっきらぼうな地元っ子の宇佐美夏樹。アヒルを連れた不思議なインド人のアキラ・アガルカール・山田も仲間に加わることに。のんびりキラキラした日々を楽しむ4人を待っていたのは、なんと地球の危機でした……!

主人公は初めて釣りに出会い、1つずつ困難を越えて、その楽しさ、奥深さを知っていきます。4人が仲良くなるまでを描いた前半は、コミカルでありながら正統派のスポーツものの味わい。釣りや海に親しんでいない人も、ぐっと話に引きこむ強さがあります。

ユキや夏樹が、釣りを楽しむ中で抱えていたコンプレックスと向き合い、克服していく姿は、胸にじんと来ます。後半は一転シリアスに。「釣りが楽しい」で結ばれた個性も立場も異なる4人が、一致団結して危機に立ち向かい、思いもよらぬ緊迫した展開になります。見たらあなたもきっと釣りをしたくなるはず!


「サマーウォーズ」(2009年公開)


大家族と出会って始まる、電脳アドベンチャー。まさに夏休みの物語!

内気だけれど数学や数式の解析が得意な高校2年生の小磯健二は、憧れの先輩の篠原夏希に声をかけられて、「バイト」でいっしょに実家へ行くことになります。待っていたのは、26人の大家族。健二はひょんなことから、夏希の婚約者のふりをすることになります。

しかし、健二が携帯に送られてきた謎の数字列を解いたことがきっかけで、インターネット上の仮想世界OZ(オズ)が、謎の人工知能ラブマシーンに乗っ取られてしまうことに。夏希の曽祖母で89歳の陣内栄を中心に、健二を含めた陣内家は、コンピュータウイルスが引き起こす世界の危機と混乱に、力を合わせて立ち向かいます。

片田舎の大家族の武器は、アナログなマンパワーとインターネット、そして老人の智慧。ギャップのある取り合わせが、なんとも楽しい作品です。

舞台となった長野県上田市は、戦国時代に真田氏が築いた上田城を中心とする城下町。劇中の風景があちこちで実際に目にできるため、“聖地巡り”として現地を訪れるファンも多いとのこと。アニメをきっかけに、旅行に出かけてみるのもいいかもしれません。


「デジモンアドベンチャー」(1999年放送)


かわいいモンスターと出会って始まる異世界アドベンチャー。1年間にわたる全54話のテレビシリーズ。続編も多数制作されましたが、すべての始まりは、学年の異なる7人の小学生が参加したサマーキャンプでした。

サマーキャンプに来ていた八神太一たち7人は、日本で見るはずのないオーロラを目撃し、未知の世界「デジタルワールド」に飛ばされてしまいます。そこで出会ったのは、1対1のパートナーとなるデジモン(デジタルモンスター)。7人は生きて元の世界に戻るため、パートナーのデジモンたちといっしょにデジタルワールドを旅することに。やがて、デジタルワールドのゆがみが現実世界にも影響していることを、子どもたちは知っていきます。

パートナーであるデジモンを進化させるのは、子どもたちの心の成長。モンスターバトルものでありながら、現実の課題と向き合う子どもたちの成長ストーリーでもあり、そこが見る人の心を熱くしました。また、ごく普通の現代っ子たちが、ベッドもシャワーもない世界で、「元の世界に果たして生きて帰れるかどうか」という現実に直面するシビアな漂流ものでもあり、結構ハラハラさせられました。

高校生になった太一たちを主人公とした続編「デジモンアドベンチャー tri.」は、2015年11月21日から第1章「再会」が劇場上映予定です。前作が懐かしい人もまだ見ていない人も、上映前に見ておけば、さらに楽しめること請け合いです!


「河童のクゥと夏休み」(2007年公開)


河童と出会って始まる自然体験アドベンチャー。日常が変わっていく冒険を体感したい人におすすめします。

小学5年生のちょっと冷めた少年、上原康一は、大きな石の中で仮死状態になっていた河童の子どもを見つけます。クゥと名づけた河童の子どもは、上原家の一員に。最初は人間を警戒していたクゥですが、次第に「怖い人間ばかりではない」と思うようになっていきます。また康一も、古風で礼儀正しいクゥの言動に影響を受けて、いろんなことを考えるようになります。

夏休み、岩手県の河童伝説の残る遠野地方を訪れ、康一とクゥは共に時間を重ねます。しかし、現代社会は河童が生きていくにはやはり厳しい環境でした。テレビへの出演やマスコミの取材攻勢をきっかけに、クゥは少しずつ生気を失っていきます。

クゥの造形が、あまりかわいくないところが、この作品のミソです。第一印象では「ちょっと不気味かな?」と思える造形ですが、見ているとどんどんかわいく感じるのがおもしろいところです。

河童や座敷童やキジムナーといった妖怪は、かつてあった豊かな自然が残した片鱗といえるでしょう。身近な妖怪伝説を、たどってみたくなります。


「侵略!イカ娘」(2010年放送)


侵略者と出会って始まる、ほのぼの海の家アドベンチャー。「夏は海! 海に行きたーい!」と考える方も多いと思いますが、こちらは笑ってなごみたい人におすすめのドタバタコメディ。第2期「侵略!?イカ娘」(2011年放送)と合わせてご覧あれ。

海を汚してきた人類をこらしめるために、地上世界を侵略するために海からやってきた“侵略者”イカ娘。しかしイカ娘は、最初の侵略拠点と考えた海の家「れもん」すら制圧できず、そこで働かされることになります。だんだん侵略者としての自覚がなくなるイカ娘の、明日はどっちだ?

アニメは、イカちゃんがとにかくかわいくてなごみます。頭の矢印型の触手も、楽しく動くこと動くこと! 「~イカ?」「~ゲソ」というセリフの語尾が、第1期放送当時、ネットを中心に大いに流行ったものです。

EDが全話でちょこっとずつ違うので、ぜひ見比べてみてください。


「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(2011年放送)


幽霊と出会って始まる、ひと夏のノスタルジック・アドベンチャー。心地よく泣きたい人におすすめします。

宿海仁太(じんたん)たち6人は、小学生のときに「超平和バスターズ」を結成し、秘密基地に集まって遊んだ幼なじみでした。でも本間芽衣子(めんま)が事故で亡くなったあと、残った5人の間には距離ができ、高校に進学した現在では疎遠になっています。ある日、不登校のじんたんの前に、昔の姿のめんまが幽霊になって出現。何かが心残りらしいめんまのために、じんたんは昔の仲間に協力を求め、めんまの「お願い」をかなえようとします。

5人の登場人物が、それぞれにめんまに対して負い目や執着を持っていて、1人ひとり自分自身と向き合い、過去を乗り越える様子が描かれるので、何と言うか、心に痛いです。見ている人も、思春期ならではの自分自身の心の傷や弱さを思い出して、ドキリとすることがありそう。それだけに、それぞれの感情が吹き出し、涙があふれるシーンでは、こちらも涙腺が決壊することに……。クライマックスは花火のエピソードです。

劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(2013年公開)は、テレビシリーズ1年後の5人の姿と、それぞれの回想を描いた内容で、見た人には問答無用でおすすめ。まだ見ていない人は、テレビシリーズを見ないとちょっとわかりにくい内容になっています。

「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」は、2015年にフジテレビでドラマ化予定。また、本作のアニメスタッフが再結集して、同じ秩父を舞台に制作する新作アニメ映画「心が叫びたがってるんだ。」が、2015年9月19日公開予定です。今から見てもまだまだ楽しめる名作といえるでしょう。


以上、不思議なひと夏の冒険を味わえる6作品をご紹介しました。

夏という限られた時間を意味のあるものにするためには、まず何かに出会うこと。そうでないと、自分が変わることも、何かをつかむこともできません。冒険は、海や山に行かないとできないと思いがちですが、意外に身近なところから始まることもあるかもしれませんね。


(文/やまゆー)

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