【懐かしアニメ回顧録第9回】30年前の“いちばんいい時代”を描いた「メガゾーン23」は、単なる懐古趣味とは言い切れない!?
中年ライター・廣田恵介が、日本アニメのあんな時代・こんな時代を気ままに語る「懐かしアニメ回顧録」。新世代・旧世代ともに、作品のつくられた時代を振り返りつつ、ともに現在と未来を明るく楽しく過ごそう。さて、1985年に発売され、大ヒットしたOVA作品「メガゾーン23」が誕生30周年の今年、ついにBlu-ray Archive BOXとして発売される。1985年の東京、フリーターの矢作省吾は見たことのない巨大バイク、ガーランドと出会う。人型ロボットに変形するガーランドは、実は500年後の未来の技術で造られており、省吾が1985年の東京と思い込んでいたのは、都市宇宙船の中に再現された架空の街にすぎなかった……その事実を隠蔽する軍部に反発し、省吾はガーランドだけを唯一の武器に立ち上がる。
「メガゾーン23」には「PART II」と「III」があり、「三部作」のように扱われる場合がある。“板野サーカス”で一世を風靡した板野一郎氏が監督した「PART II」は「話は繋がっているのに、絵柄がまったく違う」驚愕のコンセプトで、安易につくられがちな“続編モノ”に革命的なバリューを与えた。……が、あまりに画期的かつリスクが高いためか、追従する作品はなかったようだ。むしろ、物語の時間軸をはるかな未来に設定し、どちらかというとスピンオフに近い立ち位置の「III」のほうが“続編モノ”としては無難なのだろう。が、おそらく無難につくっては面白くない。「本当に、これでいいのか?」という危うさをはらんでいるほうが「メガゾーン23」っぽい。憧れのアイドルがいて、主人公の身近に美少女が3人もいてベッドシーンもあって、80年代の東京の街を入念に再現しながら、可変ロボット同士の肉弾戦があって、宇宙戦闘機も出てきて……こんな趣味に走った統一感のないディテールを散りばめながら、本当に1本の作品として終われるのか? 見ていてハラハラさせられる無印の「メガゾーン23」(あえてPART Iとは呼ばない)が、もっとも過激だったように思う。
バブル景気(という言葉は1985年当時、まだなかったが)に浮かれる東京が、コンピューターに管理された架空都市であり、人気アイドルの時祭イヴまでもが、CGの作り出した虚像にすぎなかった……。アイデンティティーを奪われた省吾は、このいびつな世界に、どう落とし前をつけるのか? 落とし前など、つかないのだ。省吾はガーランドごと軍に叩きのめされ、無人の渋谷の街に、打ち棄てられる。こんな最悪の朝だというのに、美しい陽がのぼる。体中の傷、1つひとつに染みこむような朝の光。ツエをついて、省吾は渋谷の街をヨロヨロと歩き出す。完全な敗北。誰もが、こんな朝を迎えたことがあるはずだ。救いもない、慰めもない、ただ痛みしかない泥だらけの朝を。僕が、このラストシーンを自分のことのように感じられたのは30歳をすぎた頃。90年代後半で、景気は冷えこんでいた。「今が、一番いい時代」――ヴァーチャル・アイドルの時祭イヴも、省吾の恋人の唯も、同じことを言う。1985年に制作された「メガゾーン23」を振り返るとき、誰もがその予言めいたセリフに愕然とするはずだ。誰もいない渋谷の街を、ひとり歩き出す傷だらけの省吾……。彼を励ますように流れてくるエンディング・テーマ「淋しくて眠れない」は、残酷なまでに力強い。
ただ、細かいことを言うと、このラストシーンには2種類がある。最初にVHSで発売されたものは、ひとり歩き出す省吾の背中からカメラが遠ざかっていくだけだが、劇場公開されたバージョンでは、省吾の背中に、恋人の唯の笑顔が重なるのだ(僕の所有するDVD-BOXに収録されているのは、このバージョン)。これでは、「すべてを失ったかに見える省吾だが、彼には、恋人が待っている」と言わんばかりのハッピーエンドになってしまい、希望がありすぎる。そう簡単に救われないのが、“若さ”だという気がする。失っても失っても、なかなか倒れないから“若い”のだ。そして、敗北による喪失を、ひたすら歩き続けることによって埋めていくのが、人生ではないだろうか?
……と、年寄りらしく説教してみたが、主人公がボコられて終わる「メガゾーン23」のラストシーンは、それほど痛烈だったのだ。後年、「渋谷区円山町」(2007年公開)という映画に出会った。この映画で、行くあてのない仲里依紗と原裕美子の2人が、呆然とさまようのが渋谷の街だ。2人の少女に突き刺さるような朝の光は、「メガゾーン23」のラストを彷彿とさせる。「メガゾーン23」は、都会のもつ残酷さやセンチメントを鮮やかに描き出したアニメでもあった。
(文/廣田恵介)
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