ホビー業界インサイド第2回:個人作品からプラモデルへ~メカトロウィーゴの起こした小さな奇跡 プロモデラー、小林和史インタビュー

アニメや漫画などの原作を持たないロボット・キャラクター、「メカトロウィーゴ」が人気だ。昨年秋に、合金玩具などを開発している株式会社“千値練”が、完成品トイの「35メカトロウィーゴ」を発売。今年6月に、老舗プラモデルメーカーのハセガワが「1/35メカトロウィーゴ」の組み立てキットを発売し、プラモデル初心者を含むライトユーザーを巻き込みつつある。

だが、メカトロウィーゴは、プロモデラー・小林和史さんの個人作品にすぎず、メディアの強力なバックボーンに支えられているわけではない。ではなぜ、多くの人々を魅了するのか。ウィーゴの生みの親、小林さんのご自宅を訪ね、その人気の秘密に迫る。


メカトロウィーゴ誕生までの軌跡


――小林さんの経歴を調べてみたら、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の3Dモデリングを担当と書いてあって驚いたのですが、本職は?

小林 今は、映像作品のCG作成と、ガチャガチャや玩具の原型制作を兼業しています。

――小林さんのデザインされたメカトロウィーゴが、完成品トイでもプラモデルでも大人気なのですが、どのような経緯から生まれたデザインなのでしょうか?

小林 1989年ごろ、デザインの専門学校に通っていまして、その頃からWF(ワンダーフェスティバル。個人制作のガレージキットの展示即売会)に参加しはじめました。ずっと友だちの手伝いや、版権物のキャラクターを作って参加していたのですが、自分のオリジナル作品は作ったことがありませんでした。そのうち、オリジナルフィギュアを作っている友人から「小林さんも、自分のオリジナルで作品を作ってみたら?」と誘われました。自分はロボットが好きだったので、オリジナルで作るならロボットがいい。だけど、デザインを手で描くような技量はなかったので、とりあえず自分の好きな形や要素を詰め込んで立体にしてみよう……と作ってみたのが、1/12“チューブ1号”というロボットなんです。


――チューブ1号は、最初から販売するつもりで作ったのですか?

小林 いえ、複製などは考えていない一品モノ、WFでの展示用に作りました。すると、「もしガレージキットになったら、欲しい」というリアクションを、お客さんからいただけたんです。ただ、チューブ1号は1/12なので、このまま複製すると高額なガレージキットになってしまう。そこで、小さめの1/20スケールで作り直して、2007年夏のWFでガレージキットとして販売したんです。さらに翌年、1/12スケールのチューブ1号も、BEAMSさんからガレージキットとして発売されることになりました。

――BEAMSというと、アパレルや雑貨のお店ですよね?

小林 ええ。原宿にある“Tokyo Cultuart by BEAMS”というお店の立ち上げの際、その代表の方が、たまたま“MFLOG”(ガレージキットなどを扱う模型専門誌)に掲載されたチューブ1号を見て声をかけて頂きました。ただ、しばらくの間、僕のオリジナル作品はチューブ1号しかありませんでした。これは構造が少し複雑だったので、2作目ではもう少し簡単な構成で、初心者でも簡単に組み立てられるガレージキットとして、メカトロウィーゴを考えたわけです。

――すると、ウィーゴは、小林さん個人の作成したガレージキットとして生まれたわけですね?

小林 そうです。最初に作って2011年夏のWFで販売した1/20ウィーゴは自分で型をとって、手でレジン(ガレージキットの原料)を流して、3体ぐらいしか用意できませんでした。その最初の3体を、2011年夏のWFでは販売しました。その翌年、2012年冬のWFで、RCベルグ(ガレージキットの成型業者)にお願いして、カラーレジン成型の1/20メカトロウィーゴ「みずいろ」「きいろ」を販売しました。それが、ウィーゴの本格的なスタートです。


――カラーレジンで成型したということは、“色を塗らずとも成型色で見せられるガレージキット”を狙ったのでしょうか?

小林 ええ、市販のネジを同梱して、塗装しなくても、誰にでも組み立てられるガレージキットにしたかったんです。2012年夏、このカラー成型された1/20ウィーゴが、ワンダーショウケース(有能なガレージキット作家をプロデュースするWF公式ブランド)に選ばれ、少し知名度が上がりました。

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