【中国オタクのアニメ事情】中国で話題になった7月新作アニメ、先行き不安な作品や新たなアニメ配信の形も
中国オタク事情に関するあれこれを紹介している百元籠羊と申します。
今回は前回のコラムに続いて、中国で正規配信されている7月の新作アニメ作品の中で人気になっている作品や面白い動きが出ている作品などを紹介させていただきます。
干物妹!うまるちゃん
オタク向けという面では前回のコラムで紹介した「下ネタという概念が存在しない退屈な世界」とともに、7月の新作アニメにおける話題作となっています。
主人公の名前の「土間うまる」を中国語表記にした場合「土間埋」となり、日本以上にインパクトのある名前になってしまうのもさることながら、作中で展開されるさまざまな、主にダメな方面のオタクネタ、顔芸、デフォルメ描写などが話題になり盛り上がっている模様です。
「うまるちゃん」は複数の動画サイトで配信されていますが、興味深いのは動画サイトごとの再生数の明暗が分かれている。具体的にはいわゆるニコニコ動画的なコメント付き動画サービスである「bilibili」とその他の動画サイトで再生数の差が顕著に出ている点ですね。
「bilibili」では動画サイト内の新作アニメランキングの上位にあり再生数もかなり伸びていますが、他のサイトでは中堅程度の再生数となっているようです。
ニコ動的なコメント付きのサイトで視聴する際には、コメントによる疑似同期的な視聴体験に加えて作中のネタに関するツッコミやオタク関係のネタに関する知識の共有が行われることから、中国のオタク界隈で話題にしやすいネタを理解するうえで、オタク関係の知識が必要な作品は強く受け入れられやすいという話もありますが、「うまるちゃん」に関してはそれが明確に出ているようです。
そういった背景もあるため「うまるちゃん」は、中国のオタク界隈の視聴者が作品を楽しむ際の環境の違いが、人気や話題の拡散に関して出た作品と言えるかもしれません。
Charlotte (シャーロット)
原作、脚本に麻枝准、制作はP.A.WORKSと、中国でも評価の高いクリエイターと制作会社によるアニメということで「Charlotte」は配信開始前から中国のオタク界隈で注目が集まり、配信開始後も順調に人気を集めていくこととなりました。
「久々に前評判通りの人気、特にクリエイターや制作会社による注目による期待通りの人気になった作品かもしれない」
という話も聞こえてきます。
「Charlotte」も複数の動画サイトで配信され、そのストーリー展開などに関して良くも悪くも話題になっているようです。それに加えて興味深いのは配信が行われている各動画サイトにおける人気の傾向が「うまるちゃん」とは異なり、「bilibili」以外の動画サイトにおいても好調な人気と再生数になっているという点です。
このあたりの違いに関して中国のオタクな人たちと話したところ、
「ストーリーや作中の伏線、SF的な要素に関する考察を行ううえでは、じっくり見て感想のやり取りを行う旧来の視聴スタイルの方が向いていたということも考えられる」
「『Charlotte』も作品を見る上で弾幕コメントによる疑似同期視聴の一体感がプラスになる面があるのは間違いないが、弾幕コメントなしでも楽しめる」
という見方を教えていただきました。
「うまるちゃん」や「Charlotte」に限らず、中国の動画サイトで配信された作品の人気や再生数の傾向を見ていくと、各動画サイトのユーザー層の傾向や配信システムとの相性などの影響も見て取れるようになっています。
中国における日本のアニメの人気に関しては、中国のオタクな人たちの好みに加えて、「アニメを視聴する環境」や「アニメに関して語るコミュニティ」などの影響も意識していくべきなのかもしれませんね。
監獄学園
「監獄学園」は原作漫画の知名度が中国のネットユーザーの間でも非常に高くさらにはアクセス数を稼げるお色気系ということで、配信開始前から7月最大の期待作にして問題作として注目を集めていました。現在は7月の新作アニメの中ではトップクラスの再生数になっている模様ですし、中国のオタク層だけでなく、一般層の方にも人気が広まっているとのことです。
しかし人気は高いものの
「お色気要素が強い」
「危ないネタが多い」
ということもよく知られているので、
「上からの取締りを受けるリスクが高いのでは」
という心配が、ファンからも業界からも出ているそうです。
実際、そのまま何も対策を取らずに配信するのは難しいと判断されたのか、現在中国の動画サイトでは「監獄学園」という原題そのままのタイトルではなく
「紳士学園」
という中国語タイトルで配信されているようです。
(中国のオタク界隈でも「紳士」という言葉には「変態という名の紳士」という意味が加わっています)
中国の動画サイトで配信されているお色気要素のあるアニメは、表立って話題にならなくとも再生数が安定して伸びていく傾向がありますし、「監獄学園」も現在の勢いを見る限りでは今後もロングテール的な再生数の伸びを期待できる作品かと思われますが、中国の社会的な風向き次第でどうなるかわからないのも確かで、
「いつまで配信できるのか?」
ということに関しても気になってしまう作品です。
DIABOLIK LOVERS
厳密に言えば新作ではないのですが、テンセントでは7月の新作アニメ枠の作品の1つとして「DIABOLIK LOVERS」の中国語吹き替え版が配信されています。
この中国語吹き替え版はなかなかの再生数を稼いでいるようですし、中国語吹き替え版との連動効果なのかはハッキリしませんが、同じくテンセントで配信されているオリジナル音声版のほうの再生数もここに来てまた伸びているようです。
中国の動画サイトで配信されている日本のアニメには「国語版」などとも呼ばれる中国語吹き替え版がそれなりにありますが、「DIABOLIK LOVERS」のような明らかにオタク向けでファン層も明確な作品が中国語吹き替え版で配信されるのは非常に珍しいケースです。
現在の中国のオタク界隈では
「オタクならば日本語オリジナル音声版を見るべし」
といった意見が主流ですが、ライト層、そして「アニメを見ることもある」程度の一般層に対する新規開拓としては中国語吹き替え版の効果も期待できるかと思われます。
こういった中国語吹き替え版に関しては基本的に日本側が動くのではなく現地側からのアプローチによる形になるかと思いますが、作品の人気を活用、拡大するうえでは面白い試みですね。
以上の作品のほかに前回のコラムで紹介させていただいた作品も好調のようですし、7月の新作アニメもいろいろな人気作、話題作が出る結果となりました。
しかし人気の面ではともかく、中国における日本のアニメの配信に関しては少々難しい状況になってきているようです。
3月末に行われた日本のアニメ配信に対する取締り以降、日本のアニメ配信ビジネスは冷え込みを見せていますし、それに加えて最近の中国の景気後退の影響がコンテンツ業界に出ているという話もあります。日本のアニメに関する需要が存在するのは間違いないのですが、ビジネス的には先行き不安になってしまっているのも確かです。
そんなわけで、中国における日本のアニメ配信に関しては相変わらず先の読めない状況となってしまっている模様です。
(文/百元籠羊)
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