【アニメコラム】アニメライターが選ぶ、2015年夏アニメ総括レビュー! 「がっこうぐらし!」「トライブクルクル」など、注目の5作品を紹介!!

今年の9月も数多くのテレビアニメがフィナーレを迎えた。そこで今回はスーパームーンに目もくれず液晶テレビのブルーライトを浴び続けていたアニメライターが2015年夏終了アニメを総括レビュー。 日常アニメかと思いきやゾンビが徘徊するサバイバルホラー「がっこうぐらし!」、最終話直前のストリートダンスアニメ「トライブクルクル」、個性的すぎるヒロインたちが勢揃いした「モンスター娘のいる日常」、原作小説第1巻を1クールかけて描いた「六花の勇者」、荒ぶる黄獣が三たび復活「うーさーのその日暮らし 夢幻編」をラインアップ!



がっこうぐらし!


ゾンビ映画の父であるジョージ・A・ロメロの作品について、学生時代の恩師は「ロメロには愛がある」と語っていた。ロメロはゾンビと人間を区別することなく、両者に対して慈しみの視線を注いでいるのだという。その考えに従えば「がっこうぐらし!」はロメロの志を受け継いだ作品にほかならない。

そもそもゾンビと少女は近しいものとしてこれまでも描かれてきた。本作と同じくニトロプラスの脚本家が関わった「魔法少女まどか☆マギカ」では、少女が自分はゾンビだと吐露する悲痛なシーンが存在していたし、同作を手がけたシャフトによる「さよなら絶望先生」のOPアニメでは少女たちがゾンビのような足取りで迫るカットが挿入されていた。

そして「がっこうぐらし!」の主人公・丈槍由紀も人間でありながら死者に近いキャラクターとして描かれている。彼女はクラスメイトが死んでしまった後の方が学校になじんでいるようにさえ思える。OPテーマの「ふ・れ・ん・ど・し・た・い」という死体への親近感を隠さないタイトルや、抗生物質によってゾンビ化が治まるという展開も、少女とゾンビが地続きであることを強く意識させる。最終話で“かれら”がいなくなった校庭を見て「寂しい」という言葉まで漏らす彼女たちにはロメロと同じ血が流れているはずだ。


トライブクルクル


日常のストリートダンスバトルからスタートした物語は、いつのまにか全世界を巻き込んだ陰謀にまで到達。禁断のダンスで人々をコントロールし、スポンサー企業が清涼飲料水から大量破壊兵器まで売りさばいている衝撃の事実が暴露された。「人の命より金が大事な連中がいっぱいいる」とスポンサーの手先たちを指さすシーンは、何やら朝アニメらしからぬ迫力である。

だが主人公の飛竜ハネルはそんなややこしい話を一蹴して「踊ればいいじゃん」とシンプルな答えを口にする。その言葉にはダンスは人を変える力があるという作品のテーマが集約されている。かつてのハネルがそうであったように、人はダンスを見るとなぜか踊りたくなってしまうのだ。

1年間放送された4クール作品らしく、本筋の合間に挟まるサブストーリーも印象的。漬物のオバケに襲われるエピソードではダンスアニメらしくムーンウォークで逃げるといった遊び心にクスリとさせられる。


モンスター娘のいる日常


森羅万象が萌え擬人化されるようになって久しいが、ほとんどは単なるコスプレである現状をどう受け止めればよいのだろうか。もはやオリジナルの原型すら留めていない無残な擬人化キャラクターを見ていると、対象が人のかたちをしていなければ愛でられない人間の罪深ささえ感じられる。

そんな暗い気持ちになったときは、本作のヒロインを見てほしい。下半身が蛇で全長7メートルのミーア、鳥の翼と脚を持ち卵を産むパピ、水を吸うことで体の大きさが変化するスライムのスー、蜘蛛の体から糸を出し眼が6つあるラクネラ。「モンスター」と「娘」という2つの要素を兼ね備えた彼女たちは、無理矢理人間にされてしまったキャラにはないエネルギッシュな魅力にあふれている。

「モン娘」の好意を一身に受け止める主人公・来留主公人の広大なストライクゾーンも素晴らしい。すべての種族をありのままに肯定する彼の平等主義は、ハーレムものの主人公が持つべき思想そのものだ。そのやさしい視線は作画にも受け継がれ、いつもトラブルに巻き込まれる警官や同人誌ショップを占拠するオーク、他種族を差別するチャラ男やガン黒女といったサブキャラであっても、一度見たら忘れられない筆致で生き生きと描き出されている。


六花の勇者


ダッシュエックス文庫のファンタジー小説をテレビアニメ化。原作付きのアニメは駆け足になることも多い中、1クール全12話で約300ページの第1巻をていねいに表現した。原作の大きな流れやセリフ自体はあまり変えずに、アクションシーンやキャラクターの掛け合いを膨らませている。とくに主人公・アドレットが使用する秘密道具は原作以上の多彩さを見せ、視聴者を飽きさせない仕上がりである。火薬の聖者・フレミーが召喚する銃弾や、沼の聖者・チャモが口から吐き出す凶魔の描写も見逃せないポイントだ。

7人集まった勇者の中から偽物を探し出すミステリー作品でもあり、丸々1話分を会話に費やしているエピソードも存在している。神殿内の一部屋で繰り広げられる会話劇は緊張感に満ちていて、硬軟織り交ぜた演出を楽しむことができる。


うーさーのその日暮らし 夢幻編


黄色いダークアニマル・うーさーがテレビアニメ第3期でも夢のコラボレーションを披露。第1話のウルトラマンゼロを筆頭に、自身が公式宣伝大使を務めるアニサマ2015、pixivのアイドルグループ・虹のコンキスタドール、鳥取県のゆるキャラ・くらすけくんまで、豊富な人脈を見せつけてくれた。

第6話では「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」とコラボ。どちらもサンジゲン制作という“身内”の力を利用して、3DモデルやBGMまで“拝借”する驚きの展開でファンの度肝を抜いた。13人のクリエイターに依頼した脚本もバリエーションに富んでいて、各話それぞれ異なる味わいを楽しめる。なかにはカオスすぎてとまどいを隠せないエピソードもあるがそれでも面白く見られるのは、あらゆるものとコラボする黄獣の包容力ゆえだろう。



(文/高橋克則)

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