【アニメコラム】アニメライターによる2015年秋アニメ中間レビュー

2015年のフィナーレを飾る秋アニメはどの作品も序盤を終えて、大きな盛り上がりを見せている最中だ。今回はあと7週間で新年を迎える事実を受け入れられないアニメライターが秋アニメを中間レビュー!

ド派手なアクションが炸裂する「ワンパンマン」、理系ミステリー原作の「すべてがFになる THE PERFECT INSIDER」、オリジナルミュージカル「Dance with Devils」、日曜朝のダンスアニメ「ブレイブビーツ」、あの聖帝が主人公の「北斗の拳 イチゴ味」をピックアップした。木枯らしを吹き飛ばす熱いアニメをお見逃しなく!


ワンパンマン


どんな相手もワンパンチで倒す最強のヒーロー・サイタマ。彼が手を出すと一瞬でバトルが終わってしまうため、怪人の圧倒的なパワーと破壊される街の描写に力が注がれている。怪人がビルやマンションを壊せば壊すほど、そんな強敵をあっさり倒すサイタマの強さが際立ってくる。エンディングアニメで描かれる風景は、サイタマの力を表現するため犠牲になった街をとむらっているかのようだ。

それでもサイタマに親近感を覚えてしまうのは、彼が大したバックボーンを持たないせいだろう。ヒーローは基本的に悲しいエピソードに比例して強くなるが、サイタマの過去と言えば就職活動に失敗したり、頭髪が抜け落ちてしまったことぐらい。ほかのヒーローとは反対に、誰よりも強くなったがゆえに悲しさを背負い込んだ男なのだ。狭い浴室でヒーローグローブを手洗いする彼の背中には深い哀愁が漂っている。


すべてがFになる THE PERFECT INSIDER


今期アニメはやんごとないお姫様やお嬢様が勢揃いしているものの、小市民に異常な関心を示したり、第1話で下僕になったり、何かと親しみやすい相手として描かれている。そんな中で一癖も二癖もあるのが、本作のお嬢様・西之園萌絵だ。大学のキャンプでは「包丁を持ったことがなくて」と周囲の手伝いをせず、「一度食べてみたかったんです~」と言った焼きそばには箸を付ける気配さえ見せない。星条旗を全身で表したかのようなファッションも感情移入を拒むが、当然これらは意図されたものだ。

その方針は演出面でも貫かれている。天才プログラマー・真賀田四季との面会時に多用される真正面からの切り返しショットは、他の人間が入り込む余地がないような印象を受けるし、登場人物に焦点が合っていない画面や、過去と現在が交錯するプロットも共感を難しくしている。「どんな人間も誰かと同じように感じることなんてできない」というセリフが飛び交う本作。シンパシーを許さないキャラクターたちはどこに着地するのだろうか。


Dance with Devils


高校二年生の少女・立華リツカがイケメン揃いのアクマたちに翻弄されるオリジナルテレビアニメ。本編はミュージカル仕立てになっており、毎回インサートされる挿入歌が見どころである。第5話「独尊と衝迫のブレーキン」のメインをはった南那城メィジはラップ調の挿入歌「VANQUISH」でオレ様キャラを披露。エジプトのピラミッドやスペインの闘牛を支配する姿も描かれ、これまでのエピソードとは異なる破天荒な世界を見せつけてくれた。

リツカがキュートな見た目に反して気が強いのも魅力的だ。彼女を守ろうとする兄・リンドによって家に閉じ込められたときには、バールで迷わず鍵を破壊! 直前のミュージカルパートではリンドが妹への想いを熱唱していただけに、兄の歌声は届かなかったのか……と思わず同情してしまった。キャラクターの意外な一面を垣間見られるミュージカルアニメに要注目!


ブレイブビーツ


前番組「トライブクルクル」に続く日曜朝のダンスアニメ。小学六年生の主人公・風車響がダンスワールドからやってきたロボット・ブレイキンと合体し、ダンスヒーロー・フラッシュビートに変身。不思議な石・ダンストーンが巻き起こした事件を超絶ダンスで解決するキッズアニメらしい設定を取り入れた。響とブレイキンがダンスを通じて友情を深める成長物語を楽しむことができる。

オーソドックスな世界観のいっぽうで、響がダンスを恥ずかしがるなど小学生男子らしい様子もていねいに描かれている。さらにはピンクの野良ワニが街を徘徊しているなどカオスな要素も顔をのぞかせており、「トラクル」同様に予想のつかないストーリーが待ち受けていそうだ。泣きぼくろがチャーミングな響のお母さんからも目が離せない。



北斗の拳 イチゴ味


不朽の名作「北斗の拳」を題材にした人気コメディ漫画をアニメ化。劇画調のリアルな絵柄はそのままに、世紀末を楽しげに生き抜く聖帝サウザーの日々が描かれている。サウザー様生誕30周年記念作の名に恥じず、聖帝を演じるのはオリジナルキャストである銀河万丈。この時点で勝利は確約されたも同然だ。サウザーがただ笑っているだけで面白いのだから仕方がない。

本編では、あられもない姿になったケンシロウの胸を光で隠したり、吐血を赤ではなく白で塗ったりと、自主規制を逆手に取った表現が盛り込まれた。そのアグレッシブな演出からは反骨心さえ感じられる。アニメスタッフもまた、防御の型を持たない南斗鳳凰拳の伝承者なのであろう*。同枠の「DD北斗の拳2」ではジバイセキニャンなる怪しげなキャラがほぼ毎回登場するのも気になるが、パロディ元と同じような扱いなので失礼な行為には当たらないのかもしれない。

*編集部注 南斗鳳凰拳は一子相伝です


(文/高橋克則)



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