【季節を楽しむオススメ作品第8回】厳しい冬の到来の前に。もう後がないギリギリ感を味わう極限アニメ

四季折々、この時期にこそ楽しめるアニメがある! 季節の話題にまつわる新旧の良作品をアニメライターが紹介します。

日に日に気温が低くなり寒い冬が近づく季節、年内に残された時間も短くなってきました。まもなく12月に入ってしまえば、今年もあと少し。やり残したことはありませんか? 厳しい寒さへの準備はできていますか? じっとしているわけにはいかない、ピンチの中であがけ、そして走り出せ! そんなギリギリ感に駆り立てられる極限アニメを集めてみました。


コードギアス 反逆のルルーシュ(2006年放送)/コードギアス 反逆のルルーシュR2(2008年放送)


神聖ブリタニア帝国の属領、エリア11と呼ばれる日本に暮らす高校生ルルーシュは、不思議な少女CCと出会い、「ギアス」と呼ばれる「他人を操る能力」を手に入れます。実は彼の正体は、人質として日本に送られて死亡したと思われていた、ブリタニア帝国の元第11皇子。ルルーシュは仮面の男「ゼロ」を名乗り、レジスタンスを率いて「黒の騎士団」を結成。祖国ブリタニアに反逆の戦いを挑みます。

最新作の「コードギアス 亡国のアキト」に連なるシリーズの第一作ですが、次を読ませない展開が本当におもしろい作品です。軍事的な作戦の展開やその成果もさることながら、主人公ルルーシュが、頭脳的な冷徹さと人間的な感情や甘さの両方を備えているのが、とても魅力的。奇策のねらいがハマって勝利を重ねるいっぽうで、大切に思う人を失っていき、追いつめられながら前へ進む姿が強い印象を残します。

ルルーシュをとりまく人間関係は次々と変わり、さまざまな愛憎劇が展開します。仲間と対立したり敵になったり、敵だった人物が強力な味方になったり、やさしい友人や従姉、妹を守りきれなかったりと、思わぬ事態が次々に起きます。幼なじみである枢木スザクとの友情と対立のドラマも見ものです。憎しみは愛情の裏返しで、その逆もしかり、と痛感します。


無限のリヴァイアス(1999年放送)


2225年、地球の衛星軌道にあった航宙士養成所が制御を失い、圧壊へのカウントダウンを始めます。教官たちが全員殉職し、生き残ったのは外洋型航宙可潜艦「リヴァイアス」に乗りこんだ487人の少年少女たちのみ。閉鎖された空間で子どもたちは、艦の指揮や物資の配給を自治で決め、ともに生活しながら生還しようとします。しかし生き抜くだけでも過酷な宇宙空間の中で、救助を求めるリヴァイアスはなぜか襲撃を受け、やがて世界からテロリスト扱いされて孤立していきます。

とにかく息詰まる漂流サバイバルものです。身を守り、生き抜こうとする子どもたちの群像劇が生々しい。自分を守り、大切な人を守るためにはどうしたらいいのか。全体の秩序を保ちつつ、1人ひとりも満足するための最善の策とは? 大のオトナでも答えを出せない状況に子どもたちが直面して、正論や生半可なやさしさが踏みにじられていく様子は痛々しい限りです。しかしだからこそ、もしそんな状況に直面したら、自分だったら……と考えずにはいられません。

優柔不断な平和主義者、キレやすい不器用もの、ズルい保身者、危機に使えない優等生、混乱に嬉々として暴れ回る不良、状況に流されるしかない弱者。細かく描かれる登場人物の中に、どこかに必ず共感できるタイプがいるはずです。


魔法少女まどか☆マギカ(2011年放送)


ごく普通の中学生の鹿目まどかは、ある日トラブルに巻き込まれて、人類に災厄をもたらす「魔女」と、魔女と戦い世界を守る「魔法少女」の存在を知ります。まどかの前に現れたキュゥべえというマスコット的な動物は、まどかに「願いをひとつ叶えるのと引き換えに、人類の敵の魔女と戦う魔法少女になってほしい」と言います。魔法少女に憧れながらも、決心がつかないまどか。しかしやがて、魔法少女をとりまくおそろしい現実が明らかになっていきます。

魔法少女たちが最初に叶えたいと思った「願い」は、決して大それたものではなく、ささやかであたたかい願いでした。にも関わらず、いったん魔法少女になると救いのない構造に心身は疲弊し、絶望が心を蝕んでいきます。過酷な現実から逃れることは誰にもできません。理不尽さがある意味リアルそのもので、テレビシリーズが大ブームになったあとは、いろんな解釈でこのストーリーが語られました。

今から新たに見るという人には、「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[前編] 始まりの物語」「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[後編] 永遠の物語」が、非常によくできた総集編でオススメです。さらに絶望を極めたい人は、「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編] 叛逆の物語」もどうぞ。


PSYCHO-PASS サイコパス(2014年放送)


舞台は、人間の心理状態や性格的傾向を計測し、数値化できるようになった社会。犯罪に関する数値は「犯罪係数」と呼ばれ、人々はその数値によって裁かれています。公安局刑事課一係に配属された新人「監視官」の常守朱は、犯罪係数の高い「執行官」狡噛慎也たちを統率して、さまざまな事件に立ち向かいます。しかしやがて、犯罪係数がゼロのまま凶悪な行為をはたらく槙島聖護という存在が明らかに。犯罪係数を司る「シビュラシステム」が「犯罪」を断じるこの世界で、何が正義で何がまちがっているのか? 朱と狡噛の考えは、次第に食い違っていきます。

管理社会の中で人間性が押し殺される未来世界を描くディストピアものです。法治国家なら「罪」を決めるのは法律です。法律が禁じているから、殺人も盗みも罪なのです。「システム」が罪を決める世界では、システムが犯罪係数をはじき出さない限り、何が行われようとそれは「罪」ではないわけです。えー、そんなバカな!? 見ているうちに、自分の価値観まで揺るがされてきます。

メインキャラクターである「監視官」の朱、「執行官」の狡噛、テロリストの槙島は、いずれもシビュラシステムに疑問を持つという点では共通している似た者同士です。立場を違えそれぞれの正義を追求した結果、三者がひとつに重なることはありません。何が正しいのか、間違っているのか。迷い、考え続けるのが人間なのでしょう。


DEATH NOTE デスノート(2006年放送)


高校生の夜神月(ライト)は、死神のリュークが落とした「デスノート」を拾い、所有者となります。デスノートとは、そのノートに名前を書くだけで、人を殺すことができる道具でした。月はデスノートを使って、犯罪者のいない新世界を作り、自分がその神となることを決意。警察庁刑事局局長の息子という立場を利用しながら、「キラ」として犯罪者を処断していきます。その前に経ちはだかるのが世界的探偵のL。ふたりは息詰まる頭脳戦を展開します。

実写化され、映画やテレビドラマにもなった大人気作です。アニメの見どころといえば、実写版よりも原作コミックに沿った内容になっていることでしょう。ただし、主要なキャラクターの死亡シーンの前後は、アニメならではの変更や脚色がほどこされていて、独自の解釈や思い入れを感じます。ここは、好みによって評価が分かれるところかもしれません。

デスノートを使って、犯罪者から自分に都合の悪い人間まで、多数の人間を片端から手にかけた月はまぎれもなく、情のかけらもない冷酷な悪人です。しかしながら、迷いなく自分の思いを貫いた、ゆらぎのない強靭な人間でもある。そんな彼が迎える最後の決着は、どういうものがふさわしいのか? コミックとアニメを見比べてみると、受ける印象が大分違うのでおもしろいでしょう。


バジリスク~甲賀忍法帖~(2005年放送)


時は慶長19年。徳川家康は三代将軍の世継ぎ問題に決着をつけるため、甲賀と伊賀の忍び10名ずつを死闘させ、その決着で後継者を決めるという決断を下します。甲賀卍谷衆の跡継ぎ・弦之介と伊賀鍔隠れ衆の跡継ぎ・朧は、宿怨の鎖を断ち切ろうと誓いあった相思相愛の婚約者同士。しかし、2人の願いは踏みにじられ、人智を越えた忍法殺戮合戦が始まります。

山田風太郎の「甲賀忍法帖」を元にしたコミックのアニメ化ですが、とにかく忍法対決がおもしろい! マンガやゲームを見慣れた現在見ても驚きあきれるような、奇妙で個性豊かな忍術使いたちが、それぞれの誇りをかけ、技を尽くして戦いあうさまに圧倒されます。アニメの描写やスピード感がまた圧巻で、迫力の忍術バトルを体感できます。

最後のひとりになるまで、戦いは終わりません。各話の冒頭で、指名された20人の忍びの名を書いた「人別帳」が登場しますが、勝負が進むにつれて、名前がひとりずつ朱赤で消されていくのが、なんとも切ないんですね。弦之介と朧は互いに「戦いたくない」と思っているけれど、まず家康に与えられた任務がそれを許さない。さらに自分を信じて戦った仲間たちの犠牲が増えるにつれ、事態は絶望的になります。次第に加速するこのやるせなさ、切なさがドラマを盛り上げます。


千年女優(2002年公開)


引退した伝説の映画女優・藤原千代子は、取材にこたえてインタビュアーとカメラマンを前に、自分の過去を語りはじめます。思い出のきっかけとなるのは、小さな箱に収められていた古い鍵。千代子の体験談は、彼女が出演した映画の世界とまじりあい、現在・過去・未来へ時空を越えた波瀾万丈の物語となっていきます。

説明すると難しくなってしまいますが、要は、一度出会っただけの淡い初恋の相手を一途に思いつづけた女優の「恋」の物語です。現実世界と虚構の世界が入り交じる中、千代子はさまざまな役を演じながら、軽やかに時空のはざまを越えて疾走します。その姿は恋という想いの強さであり、自由さでもあります。その前に現実や虚構世界の障害の数々が立ちはだかります。

何よりも残酷なのが「時間」です。恋に憧れる少女だった千代子が、女優として成功し、数々の映画に出演し、やがて引退し……流れていく時間はとどめようがありません。この、「過ぎていく時間に追われ、置いていかれる感覚」の描き方が秀逸です。果たして千代子は愛しい「鍵の君」と再会できるのか? 千代子は幸せだったのか? 最後に千代子がたどりつく答えに爽快感があります。


以上、現実に、時間に、絶望に追い立てられる展開から目が離せない、ギリギリの感覚がたまらないアニメ7作品をご紹介しました。

ハラハラドキドキのホラーやサバイバルな作品は多々ありますが、ここで紹介したアニメは、ただ怖いというだけではない「極限」を描いています。逃げて脱出するだけでは救われない。たとえワガママな動機からでもいいから、あきらめずにあらがって踏み出せば、道はある。そんな勇気と明日への活力をもらって、年末の忙しさと寒さを乗り切りましょう。



(文/やまゆー)

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