アーティストに直撃取材! 楽曲作りに活用しているオーディオ製品、教えてください! 第3回 Ta_2(OLDCODEX)
アーティストといえば、楽器にはとことんこだわっているイメージはあるけれど、再生環境であるオーディオ機器に関しては、それほど深い追求をしていないのでは?と思っている人も少なからずいることだろう。しかしながら、もともと音楽が好きで好きでたまらない、好きが高じてプロになってしまった人たちゆえに、実際のところは、オーディオ機器についてもかなりのこだわりを持っていたりするはず。そんな、アーティストだからこそのオーディオ製品チョイスと活用方法について、くわしく語っていただこうと思う。
今回のゲスト、Ta_2さんは、ペインターのYORKE.さんとのユニット、「OLDCODEX」のメンバー。「黒子のバスケ」や「Free!」といった人気作の主題歌を多く手がけてきた。また、熱量の高いライブにも定評があり、多くのファンを魅了している。2015年12月16日には、ニューシングル「Aching Horns」をリリース。これは、12月5日から公開が始まっている「映画 ハイ スピード!-Free! Starting Days-」の主題歌となっている。
ミュージシャンとして活動する彼は、普段から音へこだわって楽曲制作をしているという。そんなTa_2さんは普段どのような環境で音楽を聴いているのだろうか?
──普段使いしているプレーヤーを教えていただけますか?
Ta_2 Astell&Kernの「AK240」と「AK380」ですね。家で音楽を聴く時間が少なくなってきたなと思った時に、最初はMP3プレーヤーとかで聴いていたんだけど、それじゃ満足できなくなって。次にイヤホンをグレードアップさせていったんですけど、それも頭打ちになったかなというところで手を出したのがAKシリーズだったんです。俺がプレーヤーに入れているのは主にCD音源で、当然ミックスされた音なんですけど、アーティストたちが録音した時の状態に近い音として聴くことができて。それは本当にワクワクすることでした。彼らが録音した海外のスタジオの様子がわかるようで、AKシリーズによって、別の世界にトリップできるという感覚がありましたね。それで、決して安くはない機種ですが、仕事のためだ、バンドのためだと思って、自分の金銭感覚をだまし続けました(笑)。
──なるほど(笑)。実際に、AKを使うことで、仕事には何か影響がありましたか?
Ta_2 すごく影響がありましたね。最初に手を出したのは「AK120」だったんですけど、日常的に聴いていることで、音の聞こえ方がどんどん変わっていって、トラックダウンにも関わっていくようになりました。
スタジオのエンジニアやギターのチューニングをやってくれるテックといった音作りのプロにもAKシリーズをすすめていたんですが、みんな、いつの間にか買っていて。実際にAKで、こういうことがやりたいという音を聴いてもらって、制作スタッフと意識をしっかり共有できたのが、ニューシングルの「Aching Horns」なんです。細部までこだわり抜いて、自分でもかなり満足した音が作れました。
──普段、「AK240」と「AK380」は、どのように使い分けているんですか?
Ta_2 「AK240」のほうが普段の稼動は多いですね。240は、抜群のパンチ力があるんです。俺の感覚だとミッドハイ、ミッドローがすごく出ている印象があって、まるで大砲みたいに音をボンと飛ばしてくれるんです。だから、ラウド系のロックだったり、自分たちがやりたい音を聴くのに適していますね。それに対して、「AK380」は聴く音楽を選ぶ機種だなと。少人数のクラシックとかライブレコーディングとかの生のクリアな音や、テクノなどのDJ系の音楽を聴くのが楽しくて、仕事というよりも趣味で活用しています。
──今日は、アンプを付けた状態の「AK380」を持参しました。
Ta_2 あ、聴いてみたいですね。俺もアンプを買ったんだけど、まだ試してなくて。ぜひ、自分のLayla(イヤホン)でこのセットを試してみたかったんです。
(試聴する)
これは俺らがスタジオで聴いている音にかなり近いです。特にOLDCODEXの曲は、今までに聴いた中でぶっちぎりにいい。今聴いた「Aching Horns」も、MP3音源なのに、俺らが届けたかった音が鳴っています。ただ、アンプは低ゲインにしたほうがいいかも。高ゲインだと、少し潰れる印象があってもったいない気がします。
──ステンレススチールの「AK240」も持ってきました。
Ta_2 (試聴する)低域が締まるね、ステンレスは。ノーマルの「AK240」でロックを聴くとパンチ力があるんだけど、ふわっと広がりのある低域になっていて、ここが締まったらもっとかっこいいのにな、と思っていたんです。それがステンレスではしっかり締まっている印象があります。
でも、俺にとっての鉄板の組み合わせは、「AK380」でアンプを低ゲインにして、レイラだね。耳の中がマスタースタジオになるという感覚。俺は、再生環境で音をいじって自分好みにするよりも、アーティストたちが作ったそのままの音を聴きたいんですよ。そういう意味では、このセットが一番適していると思います。
──AKシリーズも制作に寄与したという新曲「Aching Horns」。どんな曲になりましたか?
Ta_2 「映画 ハイ☆スピード!」の主題歌であり、俺らにとっては12枚目のシングルなんだけど、いろいろな音を聴いてきた中で、再び原点回帰できた曲になりました。この曲に込めたかったのは、自分を変えるために、正直になるという願いです。
正直になるというのは、人間にとっては実は難しいことなんですよね。大人になればなるほど、社会という理不尽なものにまみれていって、正直にモノを言えなくなるのが常だから。でも、それは自分を殻の中に閉じこめているということでもあって、だったら破るしかないだろうと。
だから、「Achning Horns」は、メロディはどちらかというと切ないんだけど、演奏は逆にものすごく激しいんです。さらに歌い方もわざと荒々しくして。自分が本当に叫びたいことを込めたので、今まで一番素直な曲になりました。
──CDにはカップリング曲が2曲収録されていますが、そちらは?
Ta_2 2曲目の「Reminder」は、ライブで演奏を始める前に、言ってみれば出ばやしのようなSEを流しているんですけど、それすらも曲にしちゃいたいよねと話していて。OLDCODEXとして、その日のステージで最初に何を見せたいかというと、それはバンドの特色なんです。俺たちってどんなバンドなんだろうと考えた時、一番キャッチーなことは絵描きがいるってことで、だったらYORKE.のライブペインティングに合った曲を作ろうと。
この曲の作曲は、長く一緒にやっていたebaなんですけど、OLDCODEXの始まりの音、YORKE.が絵を描きたくなるような曲を作ってくれと頼みました。
──3曲目の「Get Up To Go」はTa_2さんの作曲ですね。
Ta_2 俺が作曲して、ebaがアレンジしました。この曲はかなりヘビーです。ギターリフ一発でかっこいい曲を作ろうと。聴く人が聴いたら、往年のハードロックを連想すると思います。日本語詞が多いし、分かりやすい曲なので、カラオケでも歌いやすいんじゃないかな。ただ、途中でやたら叫ぶことになりますけど(笑)。
今回のシングルの3曲は、芯は同じだけど表現方法が違うという感じ。新しいOLDCODEXの形がちらっと見えたような気がして、俺にとっては発見が多い3曲になりました。一皮むけたシングルになったんじゃないかと思っています。
──2016年2月10日、11日には日本武道館での2DAYSライブがあります。最後に抱負を聞かせてください。
Ta_2 前回の武道館ライブがまるで赤子だったかのようなステージになると思います。また、一段階レベルアップして、今、ウチのバンド、よくわからない感じになってますから(笑)。今までが「AK120」だったら、今度は「AK240」になりました、みたいな(笑)。
ライブタイトルは「Veni Vidi」というんだけど、そこに俺たちのライブにかける気持ちを全部こめてます。検索をかけてくれればどういう意味がわかるから、ぜひ調べてから遊びに来てください。
OLDCODEXプロフィール
ボーカルTa_2、ペインターYORKE.からなるユニット。2009年に結成され、ロック、ラウド、ダンスの要素を強く持ったサウンドを主にしつつ、ペインティングを織り交ぜた、視覚的にも楽しませる作品を打ち出している。
ユニット名は、「OLD」「CODEX」=「古い」「聖書などの写本」という意味を合わせた造語。
アニメタイアップ曲も多く、代表的なものに「黒子のバスケ」歴代エンディングテーマである「カタルリズム」「WALK」「Lantana」、「Free!」歴代オープニングテーマである「Rage on」「Dried Up Youthful Fame」がある。2016年2月10日、11日には、2度目となる日本武道館ライブ「Veni Vidi」を開催。
■12thシングル「Aching Horns」
レーベル:ランティス/2015年12月16日発売
初回限定盤(CD+DVD) 1,800円(税抜)
通常盤(CD) 1,300円(税抜)
アニメ盤(CD) 1,200円(税抜)
【収録曲】
01. Aching Horns (作詞 : YORKE. 作曲 : Ta_2 編曲 : 小山 寿)
02. Reminder (作詞 : YORKE. 作曲・編曲 : eba)
03. Get Up To Go (作詞 : YORKE. 作曲 : Ta_2 編曲 : eba)
(取材/野村ケンジ、構成/鈴木隆詩)
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