ホビー業界インサイド第6回:プラモデルという商材の面白さにこだわる! マックスファクトリーの提案するPLAMAXの魅力とは?

「figma」などの美少女フィギュアで知られるマックスファクトリーが、独自に展開しているプラモデル・ブランド“PLAMAX”シリーズ。

そのラインアップは、1/72スケールの「太陽の牙ダグラム」、「艦これ」の艦船とフィギュアをワンパッケージに収めた「駆逐艦×艦娘 島風」、山下しゅんや氏の描く軍服美女シリーズ「ミリタリーQtys」、そして、「1/35ロシア 現用タンククルーセット」など、意外な広がりを見せつつある。

その根本にある、プラモデルへのこだわりの理由とは? 社長の渡辺誠氏、社長室の高久裕輝氏、企画部の清水圭氏にうかがってみた。


パーツの大きさを数パーセント変える技術


──マックスファクトリーは80~90年代、「機甲界ガリアン 鉄の紋章」「強殖装甲ガイバー」などのソフトビニール製キット(ソフビキット)を、いくつも出していましたね。あの簡単に組み立てられそうな雰囲気が、PLAMAXに引き継がれている気がするのですが?

渡辺 せっかくキットを買ってもらったからには、ユーザーさんに完成させてほしい……。まず、その気持ちが強くあります。もうひとつは、安定した品質で、キットを供給していきたい。この2つが、昔から強く心にありました。80年代当初に比べると、レジンキャスト製のキットは進歩しましたけれど、当初は気泡がボコボコに入っていても「ガレージキット・スピリッツ」という言葉で、美化されていた気がするんです。鼻の頭に気泡が入って欠けているのに、「だけど、好きな人なら、3万でも買ってくれるでしょ」というアマチュアリズムで押し通してしまう。それは、商売する人間の態度ではないですよ。僕は昔からメーカー志向が強くて、「この大きさなら、これぐらいの値段で」という、バリュー感を大事にしてきました。僕らが努力すれば、3万円のキットが6千円になる――その成果が、ソフビキットだったんです。金型があれば品質は一定に保てるし、それほどお金もかからない。つまり、以前はプラモデルまでは生産できないから、代わりにソフビキットを出していたところがあります。


──いま出ているPLAMAXは、それぞれ、敷居が低いですね。

渡辺 とにかく、ユーザーさんに手を動かしてほしいんです。「多色成形だから、塗らなくても色分けされてるよ」とか「目を塗るのが大変なら、デカールが入ってるから大丈夫」とか、ユーザーさんの背中を押してあげることが、コンセプトなんです。

──なぜ、「太陽の牙ダグラム」の1/72スケール・キットから始めたのでしょうか?

渡辺 タカラが「ダグラム」をシリーズ展開していた30年ほど前、僕は、タカラでアルバイトしていました。「ダグラム」のプラモデルの見本品を作りたいからです。それぐらい、「ダグラム」に思い入れが強かったんです。

清水 タカラの旧キットはとても売れましたから、模型としての原体験が強いアイテムなんですよね。それだけ人気があるのに、タカラのプラモデル以降、なかなか「ダグラム」はキットになりませんでした。今回は接着剤不要のスナップ仕様で、色分けまでしたので、キャノピー(風防)の枠まで、きっちり塗り分けてあるキットにしたい。その部分では、完成品の美少女フィギュアを生産してきた弊社のノウハウが、おおいに役立ちましたね。


──スナップ仕様というのは、必須条件だったのですか?

清水 ええ、比較対象がガンプラ(バンダイの「ガンダム」シリーズ)になるのが、わかりきっていたましたから。僕はマックスファクトリーに入ってすぐ、「ダグラム」の開発を引き継いだのですが、テスト成形されてくるパーツを見て、「金型がよく彫れてないから、パーツが合わないんだろうな」と思っていました。

──金型さえよくできていれば、しっかりした製品ができてきそうなものですが?

清水 ところが、金型がよくできていても、成形条件でパーツの形状は変わってしまうものなんです。簡単に言うと、めいっぱい圧力をかけると、パーツはちょっとふくららみます。圧力を下げると、ちょっと縮みます。最初はそれが理解できていなかったので「先週はピタリと合ったのに、なぜ今週は、パーツの合いが悪いんだろう?」と、納得できなかったんです。ですから、「このキットの場合は、こういう条件で成形します」と調整できれば、安定します。そこが決まらないと、成形のたび、違う品質のものが上がってきてしまう。


渡辺 圧力だけでなく、温度や湿度でも変わるんです。

高久 金型の中にパイプが通っていて、お湯を通してパーツの冷却時間を調節したりもします。すると、数パーセント、パーツの大きさを変えられるんです。

おすすめ記事