【季節を楽しむオススメ作品第9回】年末年始に見たい! 干支の「申」にちなんだアニメ9作品
四季折々、この時期にこそ楽しめるアニメがある! 季節の話題にまつわる新旧の良作品をアニメライターが紹介します。
2016年の干支は申(さる)。猿は古来、山神の使いとして農業の守護神として尊ばれ、縁起物のモチーフとされてきました。いっぽうで、サル知恵、サル真似など、人間に比べて考えが浅いことを揶揄するたとえにも使われています。さてさて、猿にちなんだキャラクターが登場するアニメでは、猿はどんなイメージで登場しているのでしょうか? いろいろ集めてみました!
まずはリアル猿たちのご紹介から。
母をたずねて三千里(1976年放送)
1882年、イタリアのジェノヴァに暮らす9歳の少年マルコ・ロッシは、海を渡ったアルゼンチンのブエノス・アイレスに出稼ぎにいったきり音信不通になった母親に会うために、たったひとりで旅に出ます。
旅の途中、幾多の困難にあいますが、たくさんの人と出会い、そのやさしさに助けられて、マルコは厳しい旅を乗り越えていきます。
かたくなで意志の強い少年マルコの旅の道連れになるのが、小さな猿のアメデオです。白い毛並みに黒い顔と手足、長いしっぽ。原作には登場しない、アニメオリジナルのキャラクターで、今やラスカルと並ぶ日本アニメーション名作劇場の人気ものです。
ちょこまかと走り回る様子がかわいらしく、劇中の旅先でも小さな子どもたちには大人気。なつく、甘えるといった感情表現を見せるタイプではありませんが、仕草で愛らしさを見せるアニメで映えるクールキューティーです。
高畑勲監督が手がけた、記録映画風のいぶし銀の味わいの名作テレビシリーズがオリジナルですが、別スタッフにより新作劇場版として制作された「MARCO 母をたずねて三千里」(1999年公開)も、時間的に見やすく、おすすめです。アラジン(1992年公開)
砂漠の都アグラバーで、貧しい青年アラジンは王女ジャスミンと出会って恋に落ちます。しかしその恋は身分違い。悩んだアラジンは、魔法のランプを手に入れて、魔人・ジーニーの力で王子になり、ジャスミンに求婚します。
愛のある結婚をしたいジャスミンと、一途で純真なアラジンは、とてもいいムードに。しかしアラジンは、王位を狙う魔法使いにして大臣のジャファーに、命を狙われることになってしまいます。
ディズニーの長編アニメで猿といえばこちら! 主人公・アラジンの相棒のアブーが有名です。帽子をかぶったしっぽの長い茶色い猿で、表情がとても豊かです。イタズラ好きで盗みの天才。
人間の言葉はしゃべりませんが、アラジンに忠告したりお節介を焼いたりと、コミュニケーション能力が豊かな友達です。ただし、彼がちょこちょこ動き回ると、しばしばトラブルを巻き起こすのでご注意を!ターザン(1999年公開)
アフリカのジャングルで置き去りにされていた人間の赤ちゃんを見つけた雌のゴリラのカーラは、“ターザン”と名付けて大切に育てます。大きくなったターザンは、ゴリラの群れの中で自分だけ容姿や能力が違うことに悩みますが、カーラに励まされ、強く大きく成長します。
やがて青年になったターザンは、ジャングルを訪れた「人間」の女性、ジェーンと出会って、育ててくれた家族と、未知なる人間社会の間で葛藤しつつ、本当の自分が生きる場所を探し求めます。
エドガー・ライス・バローズの小説「ターザン」を元にしてディズニーが作ったこの作品では、ゴリラは、人間とひとしく知恵と感情と社会性を持った生き物であり、ターザンの家族として描かれています。自分の子どもをなくし、ターザンを守り育てようと決意したカーラの母性愛が、せつせつと心にしみます。
大きな見どころは、ジャングルの木々の間を飛ぶように自在に往来するターザンの視点を、大迫力で楽しめること! 自然の中で生きる動物たちの世界が、美しい美術で味わえます。自然や動物が好きな人にはぜひ見てほしい1本です。おさるのジョージ(2008年放送)
ジョージは、好奇心旺盛でいたずら好きのこざるです。なんでもさわって、調べてみたくてたまりません。大好きな黄色い帽子のおじさんと一緒に、いろんなところへ出かけます。ジョージにとっては、毎日が冒険そのものなのです。
子どもに人気の「猿キャラ」といったら、外せないのが「おさるのジョージ」です。丸い頭にくりくりと表情ゆたかな丸い目をした、茶色い毛並みの子猿で、アフリカから黄色い帽子のおじさんに連れられてニューヨークにやってきました。
飼い主の黄色い帽子のおじさんは、植物館の学芸員。ジョージのいたずらや失敗もあたたかく見守ってくれる理想的な保護者です。おかげでジョージは、いつものびのびしています。
ハンス・アウグスト・レイとマーグレット・レイの夫妻による絵本「ひとまねこざる」と、これを原案にした「おさるのジョージ」シリーズのアニメ化作品です。原作は1954年が日本初版で、もう半世紀以上親しまれているロングセラー。子どもと一緒に、一度は触れておきたい作品です。血界戦線(2015年放送)
人間と異界人、モンスターがまじりあって闊歩(かっぽ)するカオスの都市、ヘルサレムズ・ロット。「秘密結社ライブラ」はこの街で、主にかつて吸血鬼と呼ばれた怪物たちを相手に、世界の均衡を保つために暗躍しています。
「神々の義眼」を持つ頼りなげな青年、レオナルド・ウォッチもそのひとり。異能力を持つ仲間たちとともに、様々な事件を解決し、あるいは巻き込まれ翻弄されて、日々を送っています。
猿といったらこちらもお忘れなく。みんなのマスコット、音速猿のソニックです。白い体にまんまる目玉、黒い顔と手足を持つ手のひらにのるような小さな猿。しっぽを持たず、人語もしゃべりませんが、なかなか賢く、レオナルドの指令をこなしたりもする働き者です。
音速猿は一見猿に見えますが、「異界交配生物」、つまり自然の生物ではありません。能力は、目に見えない速度で動きまわること! スリや盗みにはもってこいで、そもそもレオナルドとの出会いも、ソニックがカメラを盗んだことでした。何もしなくてもかわいいし、思わぬ作戦で役に立ったりもする。心をなごませてくれるマスコットです。
さて、世界でも有名な猿のキャラクターといわれて思い浮かぶのが、中国の伝奇小説「西遊記」の主人公、スーパーモンキーの孫悟空でしょう。この名や世界観を借りた作品も、アニメには数々あります。
ドラゴンボール(1986年放送)
伝説の「ドラゴンボール」は、世界中にちらばった7つを集めれば、なんでも願いをひとつだけかなえてくれるという不思議な球。しっぽの生えた野生児で拳法が強い少年、孫悟空は、ドラゴンボールを集める少女・ブルマと出会い、やがて亀仙人のもとで拳法の修行を行い、天下一武道会に出場することになります。
いまや日本で「孫悟空」といえば、「ドラゴンボール」の主人公! 本家と並んで有名なほどです。SF格闘漫画として名前だけを借りた別物になりましたが、当初のストーリーでは、「西遊記」パロディとしての要素もしっかりありました。
「宝を求めて旅をする」「筋斗雲に乗って空を飛ぶ」「武器は如意棒」「豚のウーロンが相棒」「燃える山と牛魔王と芭蕉扇のエピソード」などなど。「西遊記」のネタを探しつつ、初期の冒険のエピソードを見るのも楽しいかもしれません。幻想魔伝 最遊記(2001年放送)
金髪の破戒坊主・玄奘三蔵は、かつて封印された牛魔王の蘇生実験を阻止するため、三仏神の勅命を受けて天竺(てんじく)国を目指しています。
共に旅をするのは、孫悟空、猪八戒、沙悟浄という3人の仲間と、ジープに変身できる白い竜。互いに憎まれ口をたたきあい、一見仲の悪そうな彼らは、誰よりも深い絆で結びついた唯一無二の関係で、その因縁は500年前に由来するらしきことが示されています。
こちらはクールなイケメン4人組による西への旅の物語です。登場人物がみんな美形で、タバコやライター、拳銃にジープなどが登場する世界観ですが、登場人物からアイテム、エピソードにいたるまで、かなり細かく「西遊記」の設定がそのまま生きています。
アニメの第1シリーズ「幻想魔伝 最遊記」に続き、続編の「最遊記RELOAD」(2003年放送)、「最遊記RELOAD GUNLOCK」(2004年放送)ほか、劇場版、OAVなどさまざまなかたちで展開された人気シリーズになっています。SF西遊記スタージンガー(1979年放送)
銀河系宇宙の中心にある大王星から放射されるスペースエナジーが減少したために、宇宙の各地では天変地異が起こり、善良な生物が凶暴化して、スペース・モンスターに変貌していました。
スペースエナジーを復活させる鍵となるのは、地球に住む月の王女であるオーロラ姫。3人のサイボーグ、暴れん坊のジャン・クーゴ、お調子者のドン・ハッカ、クールで頭脳派のサー・ジョーゴを護衛として従え、危険な宇宙を越えて、遥か大王星まで旅をすることになります。
「惑星ロボ ダンガードA」に続いて制作された、松本零士原作、東映動画によるアニメーションです。人を疑わない善意のオーロラ姫と乱暴者で警戒心の強いクーゴが、やれ敵対する相手を信じるの信じないのと、今後の行動を巡って衝突するのがお約束でした。
でも3人は結局のところ、甘々だけど自己犠牲もいとわず、強い意志と大きな人間愛を持つオーロラ姫に、自らも救いを感じ、プラトニックに愛しているんですね。宇宙の浄化をつかさどるミニスカートの姫を守る3人の騎士。男の子向けのアニメですが、女子の心をくすぐるロマンもある、勧善懲悪のSFアクションアニメです。西遊記 孫悟空対白骨夫人(原題:金猴降妖)(1985年中国公開)
天竺(てんじく)を目指して旅をする三蔵法師と孫悟空、猪八戒、沙悟浄の前に、妖怪が人間の娘に化けて現れます。悟空はすぐにその正体を見破り、打ちかかりますが、妖怪は逃亡。三蔵法師は「悟空が人間を殺した」と誤解して怒ります。
これが3度に及び、ついに悟空は破門されて、生まれ故郷の花果山に帰ることに。しかし悟空を欠いた三蔵一行に、新たなピンチがせまります。
本家の「西遊記」の有名な1エピソードを、中国の上海美術映画製作所が制作したアニメーションです。日本ではNHKで1991年(平成3年)に放送されました。また、サントリーの烏龍茶のCMに登場したことでも話題になりました。
京劇の扮装を元にした、顔が白塗りで黄色い衣装の孫悟空が、しなやかなアクションを展開します。1970年代に水墨画アニメーションで世界をあっと言わせた上海美術映画製作所の本家「西遊記」アニメを、機会があったらぜひ見てみてください。以上、猿と「西遊記」に関係したアニメ9作品をご紹介しました。
「西遊記」がらみのアニメはまだまだたくさんあります。また、猿のキャラクターもかわいいのからマヌケなのまで様々。猿に投影されているイメージの多様さをあれこれ考えながら、年末年始にアニメを見てすごすのも楽しいかもしれませんね。
(文/やまゆー)
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