【アニメコラム】アニメライターが選ぶ、2015年秋アニメ総括レビュー! 『落第騎士の英雄譚』『ジュエルペット マジカルチェンジ』など、注目の5作品を紹介!!

12月はアニメ最終話ラッシュとコミックマーケットが重なることから、師(お坊さん)が走るほど忙しい師走と呼ばれている。そこで今回は2015年冬にフィナーレを迎えた注目作をアニメライターが総括レビュー!

学園ソードアクション『落第騎士の英雄譚』、お嬢様ラブコメ『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」としてゲッツされた件』、グルメ紀行アニメ『英国一家、日本を食べる』、シリーズ総決算の『ジュエルペット マジカルチェンジ』、ウルトラスーパーアニメタイム枠の『ハッカドール THE あにめ~しょん』をラインアップ。大団円となった作品たちを振り返って、新年の幕開けに備えよう。


落第騎士の英雄譚


魔法の才能を持たない代わりに剣技を極めた黒鉄一輝が、学園の最底辺から頂点へ登り詰める人気ライトノベルをアニメ化。一輝の切り札はすべての力を1分間に凝縮する必殺技・一刀修羅だ。色覚を遮断した状態で繰り広げられる殺陣がモノクロの映像と絶妙にマッチしている。白、黒、赤の3色で構成されたオープニングではキャラクターが次々と技を放ち、まだ見ぬ本編への期待を煽る。

ヒロインは恋に積極的なお姫様のステラ・ヴァーミリオン。胸で一輝の背中を洗ったり、ブラジャーのフロントホックを外させたりする場面は、ステラの豊満な肉体と相まって抗えない魅力が備わっている。スタイリッシュなバトルと同じように、こちらもソードアクションの名に恥じない出来映えとなった。


俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」としてゲッツされた件


お嬢様学校の箱入り娘に世間への免疫をつけさせるため誘拐された高校生・神楽坂公人を巡る学園ラブコメディ。テレビアニメ化にあたりタイトルが一部変更され、ゲッツという言葉に置き換えられた。そういった事情はスルーされるのが常だが、本作ではむしろゲッツを全面に押し出す方針が貫かれている。

原作の帯に登場していたお笑い芸人・ダンディ坂野は、アニメで「ゲッツ!監修」に就任。本人役で本編にも出演し、まごうことなきゲッツを見せつけてくれた。その言葉に導かれるように、人見知りだった天空橋愛佳は友達をゲッツし、親から縁談を迫られた有栖川麗子は本当に好きな相手をゲッツしようとする。そんなお嬢様たちを見れば、ゲッツこそ本作にふさわしいタイトルだと気付かされるはずだ。


英国一家、日本を食べる


100日間にわたって和食を食べ続けたイギリス人フードライターの日本旅行記をテレビアニメ化。北海道のカニから沖縄のゴーヤまで、全国各地であらゆる食材を食べ尽くしていく。ときには箸使いや温泉といった日本文化にまで踏み込み、日本人でさえ知らない食の歴史を解き明かす。息子のアスガーとエミルが取材先で起こす騒動も、単なるルポに留まらないコミカルな味付けをくわえている。

後半の実写コーナーでは食にまつわる魅力的な人々が出演。競りの前にシチューを頬張る築地市場のおっちゃんや、85歳ながらボリューミーな朝食を食べる沖縄のおばあは、一度見たら忘れられない笑顔を浮かべている。美味しい食事はこんな表情を人にもたらすのかと驚かされてしまう。正月にはスペシャル版「英国一家、正月を食べる」が放送される。子供のころはお年玉をもらうための罰ゲームとしか思えなかったおせちに英国一家がどんな視点を与えてくれるのだろうか。


ジュエルペット マジカルチェンジ


毎年異なる作風の「ジュエルペット」シリーズ。7年目の本作はハイテンションなコメディに仕上がった。家出した印鑑が帝国を築いたり、バナナをペットとして飼ったり、ヒロインの頭に巨石が何度もぶつかったりと、カオスなエピソードが連発。3週間連続で水着・温泉回をオンエアした攻めの姿勢も評価せざるを得ない。

いっぽうでアニメシリーズの完結を示唆するエピソードも描かれている。ルビー、サフィー、ガーネットと1年目からのメンバーが同窓会を開く「ジュエルペットだョ! 全員集合」や、歴代ヒロインたちが登場した「ルビーとルビー」は、コミカルな内容ながら一抹の寂しさを感じさせる。2016年2月からはジュエルペットに続く、新キャラクターのアニメ「リルリルフェアリル~妖精のドア~」がスタートする。サンリオとセガトイズが送り出す新たなプロジェクトに期待したい。


ハッカドール THE あにめ~しょん


スマートフォン向けニュースアプリが原作という異色ショートアニメ。マスコットキャラクターのハッカドール1号、2号、3号が人々をはかどらせるために体を張って奮闘する。彼女たちが応援するのは、システムエンジニア、声優オタク、魔法少女、アニメ制作進行といった、過酷な状況に置かれた人ばかり。ときには依頼人を死へ追いやるハッカドールと解像度バレも辞さないハイテンションな映像のマリアージュが7分間の本編を駆け抜ける。

アニメ、ゲーム、ドラマなど、ジャンルを横断するパロディも見どころ。視聴者に向けたお色気シーンもバッチリで、捗るという日本語の多様性を我々に教えてくれた。闇鍋のようなカオスさがネットを網羅するニュースアプリらしい一作だ。




(文/高橋克則)

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