【季節を楽しむオススメ作品第10回】寒さ厳しい冬にほっこりしたい。心あたたまる珠玉の8作品

四季折々、この時期にこそ楽しめるアニメがある! 季節の話題にまつわる新旧の良作品をアニメライターが紹介します。


梅も咲き出す暖冬もどこへやら、寒さも厳しくなってきました。「真冬並みの気温です」って、当然ですよね、真冬ですからね! そんな季節に、ほっこりアニメで心をあたためてみませんか?

さて、そもそも「心あたたまるアニメ」って、どんなアニメだと思いますか? 単なるハッピーエンドでは、もの足りませんね。

通常おもしろさの基準になるハラハラドキドキは、ある種の興奮状態ですから、「ほっこり」とはちょっといえません。ときめきを感じる恋愛も、嫉妬や不安と紙一重の感情ですから、危険をはらんでいます。極限状態のサバイバルやホラーなんてもってのほかです!

そう考えると、「ほっこり」「心あたたまる」というのは、赤ん坊が母親の胸にいるような、人のあたたかみを感じながら、安心してくつろいでいるような心の状態のことなのかなあとも思うのです。

そんな穏やかであたたかい作品を集めてみました。


「ARIA The ANIMATION」(2005年放送)


舞台は、テラフォーミングされて水の惑星となった元火星「アクア」。水無灯里(あかり)は、観光都市ネオ・ヴェネツィアで、ゴンドラを漕いで観光案内をする観光水先案内人「ウンディーネ」の見習いとなって、業界一の成績を持つアリシアの下で、一人前のウンディーネを目指して日々を重ねていきます。

「未来系ヒーリングコミック」といわれた原作コミックを、ていねいにアニメ化し、人気シリーズとなりました。「ARIA The ANIMATION」「ARIA The NATURAL」(2006年放送)「ARIA The ORIGINATION」(2008年放送)と3期にわたってアニメ化されました。2015年にはTVアニメ10周年プロジェクトとして「ARIA The AVVENIRE」全3話が制作されました。

美しい水の都市、ネオ・ヴェネツィアを舞台に、移り変わる季節の中、友人の藍華、アリスとともに真摯に穏やかに仕事に向き合う姿が描かれます。長いシリーズの中で灯里は、青い目をして帽子をかぶった火星猫のアリア社長も、癒し度120%!思えば、「ピュアな美少女たちの日常もの」の走りだったかといえるかもしれません。



「アイカツ!」(2012年放送)


アイドル養成学校・スターライト学園に所属する生徒たちは、みんな現役のアイドルたち。星宮いちごは、国民的アイドルの神崎美月に憧れ、親友の霧矢あおいに誘われて、スターライト学園中等部に編入。紫吹蘭など学園の仲間たちとともに、アイドル活動(=アイカツ)に励み、日々成長していきます。

こちらも、ピュアな少女たちが真摯に仕事に取り組むお仕事アニメです。アイドルとしての成功に必要なのは、たゆまず自分の魅力を磨いて伸ばしていくこと。いちごたちは迷ったり困難にぶつかったりしながらも、どこまでも明るく一途にアイカツします。

ひとつのテーマが「受け継がれるバトンと想い」。先輩アイドルから後輩アイドルへ、試練の越え方や覚悟の決め方、落ち込んだときの心の持ちようなどが語られるシーンは、名場面ぞろいです。うっかり就活時期や仕事で悩んでいるときに見ると涙が出そうになるほど、いいことを言っています。

かわいい少女たちにほっこりして、明日からがんばろうという気持ちになれる作品。現在、星宮いちごの後輩、大空あかりを主人公とした4th シーズンが放送中です。


「アルプスの少女ハイジ」(1974年放送)


両親をなくした幼い少女ハイジは、アルムの山小屋で暮らす気難しい祖父(おんじ)に預けられます。無邪気なハイジと暮らすうちに、おんじの心もなごみ、大自然の中でハイジはさまざまなことを学んでいくことに。しかしある日、ハイジをおんじのところに連れてきたデーテ叔母が、今度はハイジをフランクフルトに連れ去ります。実業家の娘のクララの遊び相手となったハイジは、山を懐かしんで病気になってしまいます。

知らぬ人とてない名作アニメですが、全編見ていない人も今では多いでしょう。チーズを乗せたパンや、干し草のベッドなど、アルムの山での「日常」描写は素晴らしく、五感に訴えかけてきます。懐かしアニメを扱った番組では、「クララが立った」のシーンばかりが感動的に何度も流されますが、自然や動物たちと過ごす豊かな時間にも見どころはたくさんあります。

高畑勲、宮崎駿、小田部羊一といった名だたるアニメーターが関わったことでも有名なこの作品では、全体に、登場人物の大人たちもしっかりと肉付けされていて存在感を放っています。子どもを見守る、賢くて理解のある大人の存在。そして、その大人に見守られて羽ばたく子どもたちという構図は、どんな作品でもあたたかい安心感をくれるものですね。



「夏目友人帳」(2008年)


常人には見ることのできない「妖」を見る力を持った高校生の夏目貴志は、小さいころから人になじめず苦労をしてきました。祖母の夏目レイコの遺品「友人帳」を受け継いだ夏目は、自称・用心棒のニャンコ先生に「友人帳」をねらう妖たちに守ってもらいながら、名前を縛って使役している妖たちに少しずつ名を返し、自由にしていきます。

力を集める冒険や戦いの物語は数々あれど、すでに持っている大きな力を「少しずつ返して減らしていく」物語は、珍しいかもしれません。といっても展開は甘々ではなく、過ぎてゆく時の無情さ、人と妖の恋愛の哀しさに、切なくやりきれない思いもともないます。でもだからこそ、小さなやさしさ、あたたかさが心をゆさぶり、輝くのです。

独特の穏やかで切ない雰囲気が人気を呼び、「続 夏目友人帳」(2009年放送)、「夏目友人帳 参」(2011年放送)、「夏目友人帳 肆」(2012年放送)と第4部まで制作されました。


「はなまる幼稚園」(2010年放送)


はなまる幼稚園に通う杏は、小さくても恋する女の子で、担任の「つっちー」こと土田先生が大好きです。友達のクールで物知りの柊ちゃんと、純情可憐な小梅ちゃんが、杏の恋を応援します。

ちまちま動く園児たちがいとおしすぎる、幼稚園日常コメディ。女の子はこまっしゃくれて大真面目、男の子はヤンチャでおバカ。恋に遊びにお昼寝に一生懸命で忙しい園児たちの毎日が、実にかわいらしく描かれて、思わずなごむこと間違いなし!

キャラクターが歌うエンディング主題歌が、全12話で全部異なっているのもお楽しみのひとつです。

ピュアで一途な存在にほっこりするというなら、小さな子どもは、動物と並んで最強でしょうね。


「ぶぶチャチャ」(1999年放送)


幼児が登場する物語はいろいろあるけれど、3歳の幼児が主人公の話は珍しいものです。「ぶぶチャチャ」は、主人公「ボク」と、クルマになった犬の話。「ボク」の大親友の犬のチャチャは、交通事故で死んでしまいましたが、オモチャのクルマになって帰ってきました。犬のしぐさで動き回る不思議なクルマの「ぶぶチャチャ」と「ボク」は、大人が見ることのない世界で、毎日小さくてすごい、さまざまな冒険をします。

毎日澄んだ目をきらきらさせて、物心つきはじめた小さな子どもは何を見ているのでしょう? どんどん成長していく子どもは、何におどろき、何を怖がり、何によろこんでいるのでしょう? 体験が1つひとつ未来に向かって積み重ねられる幼児の世界を、ていねいに楽しく描き出しています。ヘンテコな動きがゆかいゆかい! これはアニメでしか描けない世界ですね。

続編として「だいすき!ぶぶチャチャ」(2001年放送)が制作されました。


「トイ・ストーリー」(1996年日本公開)


カウボーイ人形のウッディは、アンディ少年のお気に入りです。ところが誕生日にもらった新たなおもちゃ、宇宙ヒーローのバズ・ライトイヤーに、アンディは夢中になってしまいます。おもしろくないウッディはバズと喧嘩をするうちに、ふとしたことからアンディとはぐれてしまいます。果たして2人は、アンディが引越しで家を離れるまでに戻れるのでしょうか?

子どもとオモチャのハートウォーミングストーリーといえば、これは外せませんね。おもちゃたちが人間に内緒で動き回っているという設定は、子どもの想像の世界そのままです。そして、持ち主の気まぐれで人気がうつろったり、もてはやされても飽きたら捨てられたり、状況に応じて天狗になったり落ち込んだり……なんていうストーリーは、おもちゃたちの話に見せかけて、実は人間社会の縮図でもあります。

そもそも冒頭から、見る人が大人であれば、「子どもは成長するもの」「おもちゃはいつか捨てるもの」とわかっているわけで、そこからすでになんだかもう切ない気分になります。いつまでも続く幸せなんてないんです。いやー、深い。でもだからこそ、荒波を乗り越えてたどりつく幸せな結末には、心にぽっと熱がともり、ほろりとしてしまうのです。

続編として「トイ・ストーリー2」(2000年日本公開)、「トイ・ストーリー3」(2010年公開)も制作されています。


「ウォレスとグルミット、危機一髪!」(1995年公開)


とぼけた発明家のウォレスと、忠実な飼い犬のグルミットは、大の仲良しです。窓拭きサービスを始めたウォレスは、プレストンという名の犬を飼っている毛糸屋の美人店員、ウェンドレンに恋をして、熱心にアプローチ。いっぽう、ウォレスとグルミットの家に小さな羊が迷いこんできますが、ある事件の予兆でした。

最後にご紹介するのは、「ひつじのショーン」が生まれるきっかけになった、ショーンのデビュー作。アードマン・スタジオ制作のクレイアニメーションです。

キャラクターもストーリーもほのぼのとしているのですが、手作りのあたかみのあるクレイアニメーションの画面と細やかな動きが、何よりほっこり。「ウォレスとグルミット」シリーズは、全部で6作ありますが、これが3作目。この1作でも独立して楽しめます。

ウォレスが作った奇妙な発明品を始め、機械の細かなギミックが楽しめます。「ひつじのショーン」が好きな方は、小さなショーンと、たくさんの羊の仲間たちのアクションシーンににやりとするかもしれません。

以上、心あたたまるアニメ8作品をご紹介しました。

自分が好きな作品こそが、何より心をあたためてくれるとは思いますが、もし新たな作品を見てみたくなったら、こんな作品を見てみてはいかがでしょうか?

心の中からほっこりあったまることができるかもしれませんよ。

(文/やまゆー)

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