【アニメコラム】キーワードで斬る!見るべきアニメ100 第1回 「ガールズ&パンツァー劇場版」ほか
アニメファンの飲み会というのはえてして、大喜利というか連想ゲーム的なものになりがちだ。「○○には××なシーンが出てくるよな」と誰かがひとこと言えば、ほかの誰かが「××なシーンといえば△△を忘れちゃいけない」と返してくる。アニメとアニメはそんなふうに見えない糸で繋がれている。キーワードを手がかりに、「見るべきアニメ」をたどっていこう。
大ヒットになった「ガールズ&パンツァー劇場版」を見て驚いた人は多いはず。なにしろ約2時間の上映時間のうち、半分以上が試合=戦車戦なのだ。成分比的には「ガールズ&パンツァー&パンツァー」といったほうが正確だろう。
改めて説明すると「ガールズ&パンツァー」は、「戦車道」という架空の(女性だけがたしなむ)武道がある世界を舞台に、大洗女子チームが奮戦するアニメだ。登場する戦車は第二次世界大戦で活躍した戦車が中心。各戦車は特殊なカーボンコーティングを施されているため、実弾を撃ち合っても大丈夫、という設定になっている。
劇場版では、試合シーンは大きく2つ。1つは冒頭から展開するエキビシジョンマッチ。ここでは大洗町の実在の風景を生かして試合が展開される。ゴルフ場から始まった戦闘は、商店が立ち並ぶ町中へと移動し、アウトレットモール、砂浜と進んでいく。
怪獣映画やロボットアニメといったジャンルは、一種の戦争映画として制作・消費されてきた側面がある。大洗の実在の建物を「スポーツという名目」で壊しまくる「ガールズ&パンツァー劇場版」は、その点で怪獣映画・ロボットアニメといったジャンルを経由したうえで生まれた、“1回転した戦争映画”と言うことができる。
もう1つの試合シーンは、丘陵地帯から始まり古い遊園地で決戦となるクライマックス。こちらは、前半はいかにも“戦争”的な舞台だが、後半の遊園地は「戦車道」でないとありえないようなトリッキーなステージ。ジェットコースターのレールの上を豆戦車が走り、植木でできた迷路で追いかけっこを繰り広げられる。このクライマックスがとてもたっぷり続く。
これだけ戦闘シーンが長いとダレてきそうなものだが、そうはならないのは、キャラクターの数が多く、短い点描でその個性や変化が印象的に描かれるから。ちなみに、ここでいうキャラクターとは登場人物のことだけではなく、個性豊かな戦車群も含まれる。シンプルにまとめられたストーリーという幹に、多彩なキャラクター(人間&戦車)という枝葉を繁らせた本作。シンプルなストーリーだけに試合シーンがドラマを遅延させることにはならず、むしろ多彩なアイデアが盛りこまれた試合シーンを集中して楽しむことができるようになっている。
ストーリーがシンプルというのは、戦闘シーンを楽しむうえで重要な要素といえる。'78年に公開された映画「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」もまさにその通りシンプルな内容+戦闘シーンてんこ盛りの映画だ。
同作は大ヒットした「宇宙戦艦ヤマト」の続編。新たな敵・白色彗星帝国によってもたらされた宇宙の危機に対し、ヤマトが単身立ち上がる――という内容だ。
前作が宇宙を舞台にした航海もの(海洋もの)の側面があったのに対し、こちらはぐっとSFの体裁を借りた「戦争もの」に近い。総尺151分という長尺ながら、ドラマはヤマトが旅立つまで(「宇宙からの助けを求める声に応えたいが、それは命令違反(謀反)になる」という葛藤)と、クライマックスの絶体絶命のピンチ(もう戦う武器がない時にどうすればいいのかという葛藤)に集約。残り時間のほとんどは白色彗星帝国との戦いに費やされている。なにしろクライマックスの戦闘だけでも「白色彗星を倒す」→「その中から都市帝国(小惑星を改造した巨大都市)が現れる」→「その中から超巨大戦艦が出てくる」と3段階にわたって戦闘が展開するのである。日本アニメ史の中でも屈指の長尺になるわけだ。
逆に100分あまりの中(「さらば~」より50分近く短い!)にバトルもドラマもギュッと押し込んだのが'07年の「ストレンヂア 無皇刃譚」。戦国時代を舞台に、明の武芸集団に追われることになった少年・仔太郎と、彼を守ることになった謎の男・名無しの戦いを描く。「ガルパン」「さらば~」よりは葛藤に力点がある作りだが、「シェーン」や「グロリア」といった映画の系譜の上にのっている正統派の作りなので、決して複雑ではない。最強であることを求める男・羅狼と名無しのクライマックスは、アニメならでは高低差を生かしたチャンバラで、手描きのケレン味ともっともらしさが絶妙のバランスで共存していている。「痛みがあるほうが、生きている気がする」 という名無しのセリフの通り、痛みを感じさせる戦いだ。
最後に「手描きの極まった戦闘シーン」がといえば絶対にはずせない'94年のOVA「マクロスプラス」を。テストパイロットであるイサムとガルドが見せる空戦シーンは空前絶後。無数のミサイルと、それをかわす可変戦闘機の挙動。観察力と想像力の織りなすスペクタクルには圧倒されるばかり。「マクロスプラス」の戦闘シーンを見ると、手描きだろうが、3DCGだろうが、観察力と想像力が「表現」というものの両輪だと思い知らされる。
(文/藤津亮太)
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