【季節を楽しむオススメ作品第11回】見えない未来に挑みつづけろ! 初志貫徹の王道6作品

まだまだ厳しい寒さが続く中、4月を前に、受験や就職・転職活動など、いろんな挑戦の時を迎えている人も多いのではないでしょうか。

困難の中で見えない未来を見つめ、最初にこうと思ったことをやりぬくのは、とても大変なことです。フィクションの世界でもそれは同じこと。成長するということは、すなわち、現実を踏まえて自分が変わること。その中でも青い理想を守り抜いて初志貫徹するのは、意外に難しいことなのです。

見ていると明日への希望がわいてくる、自分を貫き通す不屈の魂を描いた、王道の作品をご紹介します。


「NARUTO -ナルト- 疾風伝」(2007年放送)


主人公の忍の少年・うずまきナルトは、体内に九尾と呼ばれる化け物を封印されて、忍五大国のひとつ、火の国の木ノ葉隠れの里に生まれました。父母のいないナルトはいつも孤独を抱えていましたが、3人1組の班の仲間のうちはサスケ、春野サクラと心を通わせ、仲間の大切さを知っていきます。

しかしサスケのうちは一族には、里の犠牲になって全滅した痛ましい歴史がありました。その事実を知ったサスケは里を出奔し、木ノ葉隠れの里への復讐を誓います。サスケが里の敵となった後も、ナルトはあくまで友と考え、取り戻そうとします。いっぽうで、うちは一族と木ノ葉隠れの里の因縁は、かなり根深いものであることがわかってきます。恨みと痛みを乗り越えて、ナルトはサスケと再び手を携えることができるのでしょうか?

少年時代を描いた「NARUTO -ナルト-」(2002年放送)に続く青年編が本作です。強大な敵との苛酷な戦争が続き、仲間からも犠牲者が出て、里の創設にまでさかのぼる血と恨みの歴史が次々に明らかになっていきます。憎しみが連鎖する現実の中で、グレてしまった友人1人を改心させることは、不可能にも思えるし、もうどうでもいい小さなことのようにすら思えてしまいます。

でも、自分が孤独の痛みを知るからこそ、ナルトはぶれないし、迷いません。愚直にも思えるその一念が、敵や味方の心を動かした結果、やがてナルトは希望を与え、思いを託される存在になっていくのです。長い長いこの物語の中で、ぶれない曲げないナルトの姿は感動的。原作は完結しましたが、TVシリーズは現在、その終盤。長い年月を、原作と共に走りきったアニメのラストシーンを見るのが楽しみです。



「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」(2009年放送)


兄のエドワード(通称エド)と弟のアルフォンス(通称アル)のエルリック兄弟は幼い日に、死んだ最愛の母親をよみがえらせようとして、錬金術の最大の禁忌「人体錬成」を行いました。そしてその代償としてエドは身体の一部を、アルは身体全部を失います。成長したエドは、「政府の狗」と呼ばれる国家錬金術師となり、兄弟で元の体に戻る方法を探し続けます。

さまざまな利害や憎しみがぶつかりあう中、痛みを背負った2人のまっすぐな行動は、出会った多くの人の心を動かし、結びつけていきます。いっぽうで、大きな力を秘めた「賢者の石」と、国家の成り立ちにも関わるホムンクルス(人造人間)たちの巨大な陰謀が姿を現し、やがて全国民の命を巻き込む「約束の日」の激戦を迎えることに。果たして希望は残されているのでしょうか?

次第に明らかになる「お父様」と呼ばれるラスボスとホムンクルスたちの計画は、あまりにも壮大な規模でした。彼らの野望が成就すれば、国ひとつがまるごと滅び、エドとアルの大切な人たちも全員が命を落としてしまいます。けれど、兄弟はあきらめません。決して許すことのできない企てを阻止したうえで、自分たちの体を取り戻すことを。

エドとアルはとても意志が強く、自分たちの思いを曲げませんが、同時に人の言葉に耳を傾け、他人の痛みを理解する思いやりも持っています。自分たちの目的のためなら、他人を踏みつけにしてもいいとは思っていません。そして、自分たちの罪や過ちから逃げず、人のせいにすることもしない。加速していく戦いの中で、まっすぐな思いを持ちつづけた兄弟の旅路の果てに待つものは……? 違う立場の人間が理解しあい、つながることは、何よりも大きな力になると思える結末になっています。


「青の祓魔師」(2011年放送)


神父に育てられた双子の兄弟、奥村燐と弟の雪男。ある日燐は、この世が人間が棲む「物質界(アッシャー)」と悪魔の棲む「虚無界(ゲヘナ)」から成り立っており、自分が悪魔の王サタンと人間の女の間に生まれた存在だと知ります。育ての父は、燐をサタンから守るために落命。燐は封印された悪魔の力を解放して、青い炎を帯びて戦います。

養父の死後、燐は自分の力を人間のために使おうと決意し、養父の仇を討ち「サタンをぶん殴る」ため、エクソシストを養成する「祓魔塾」に入塾します。塾では仲間との絆を深めつつ、「サタンの子」として警戒されることも。それでも情に厚い燐は、悪魔の声を聞けることもあって、決して一方的に悪魔を悪者だとは決めつけません。あやうい立場にあるにも関わらず、結構フリーダムです。そんな兄を守りたい、生真面目で心配性な弟は苦労が耐えません。悪魔と人間の戦いの中、兄弟はどのような道を歩むのでしょうか?

全25話のTVシリーズは、原作の「京都・不浄王編」に入る前までのエピソードから、オリジナルの展開に入ります。その分、「サタンをぶん殴る」と決意した燐と、燐を守りたい雪男のふたりが、果たしてどのように戦い抜くのか? ひとつの決着までを描き出していて、味わい深いものがあります。

無鉄砲な燐の欠点を雪男が補い、真面目な雪男の弱点を燐が補う。出生の秘密により難しい問題を抱えた燐と雪男が、兄弟の力でひとつの壁を越えていく展開は、アクション描写もあってかなり爽快です。アニメを見たあとに原作の「京都・不浄王編」へ戻るのもいいでしょう。


「犬夜叉 完結編」(2009年放送)


現代の女子中学生・日暮かごめが、神社の井戸をくぐり抜けてタイムトリップした先は、戦国時代。そこでかごめは、封印された半妖の少年・犬夜叉と出会います。かごめの体内から出現したのは、あらゆる願いを叶えるといわれる宝玉、「四魂の玉」。戦いの中で四魂の玉は無数の欠片となって飛び散ります。欠片は、妖怪に力を与えるなどトラブルのもとになるため、犬夜叉とかごめは欠片を取り戻す旅に出ます。

実はかごめは、犬夜叉と愛し合い、罠にかけられて命を落とした巫女、桔梗の生まれ変わり。ふたりは惹かれあいますが、50年前に死んだはずの桔梗も、かりそめの身体を得てよみがえり、犬夜叉をはさんでの三角関係になります。50年前に桔梗を罠にかけた張本人である妖怪の奈落は、またもや人の心をもてあそび、弱みにつけこみながら、今度こそ四魂の玉を得ようとしています。因縁を断ち切り、奈落を倒すことはできるのでしょうか?

2000年から4年間放送された「犬夜叉」の原作が完結したのを受けて、5年ぶりに続編が制作され、原作のラストまでがアニメ化されました。ファンにとっては感無量です。無数の小さな欠片となって飛び散った「四魂の玉を集める」といって始まった犬夜叉とかごめの旅ですが、長い長い旅の果てに、本当に完全な玉を取り戻すまでにいたるとは!

奈落を仇と憎む不良法師の弥勒に、妖怪退治屋の珊瑚。四魂の玉で命をつなぎ、奈落に操られる、珊瑚の弟の琥珀。犬夜叉をさげすむ冷徹な兄・殺生丸。なぜかその殺生丸が情けをかけた人間の少女・りん。恐ろしく哀しいさまざまな人間模様がもつれあい、解きほぐすことは不可能と思われたのですが、本当にきれいなエンディングを迎えました。大団円はかくありたいものです。

それにしても、選べないのはわかるけれど、犬夜叉は本当に罪な男! この作品に限っては、ふりかえると、凛々しく成長した折れない主人公は、犬夜叉ではなく、かごめのほうだったかもしれないなと思います。


「家庭教師ヒットマンREBORN!!」(2006年放送)


勉強も運動もダメダメな中学生・沢田綱吉(通称ツナ)のところに、ヒットマン(殺し屋)を名乗る奇妙な赤ん坊リボーンが、家庭教師としてやってきました。リボーンはツナを、イタリアのマフィア、ボンゴレファミリーの10代目ボスとして教育するためにやってきたのだというのです。リボーンに「死ぬ気弾」を打たれると、ツナは「死ぬ気モード」となって火事場のバカ力を発揮し、さまざまなトラブルを解決。ボンゴレ10代目候補をねらって次々とやってくる敵を迎え討つうちに、ツナの力は開花していきます。

全203話にわたるTVシリーズの約3分の2を占めた長いストーリーが「未来編」です(「未来チョイス編」「未来最終決戦編」などを含む)。ツナと仲間たちはある日突然、10年後の未来にタイムスリップします。そこでツナは、10年後の自分がすでに死んでいることを知ります。住み慣れた自分たちの町は戦場と化していて、ボンゴレファミリーに関わった人物が殺されたり、行方不明になっていました。わけのわからない状況の中で、ツナたちは死と隣り合わせの恐怖に耐え、戦い抜くことを決意します。仲間のみんなそろって誰ひとり欠けずに、生きて10年前の日常に戻るために!

コメディやギャグもあった日常ものから、次第にバトル色の強い展開になった本作は、「未来編」にいたって、SF調の完全シリアスストーリーになりました。視聴者もびっくりするショッキングな展開の中で、「みんなで日常に帰るんだ」という中学生たちの決意は、まるで祈りのようで、到底不可能に思えたものです。

自分に自信がなく、ダメダメだったツナが、危機の中でボスとして強く成長していく展開、またそれを信じて待つリボーンの師弟愛には、王道の気持ちよさがあります。足手まといに見えた女子や幼児が、戦いに大きなヒントを与えて勝利につながるという展開も、この作品ならでは。少し長いですが、個性的なキャラクターたちが活躍し、みんなの願いが叶う感無量の最終話までをたっぷり楽しめるでしょう。


「ダイヤのA」(2013年放送)


サウスポーの沢村栄純は、西東京地区の野球の名門校・青道高校に進学し、野球部に入部します。天才捕手の御幸一也、同じ1年生で豪速球投手の降谷暁らチームメイトと切瑳琢磨しながら、投手として成長していきます。夏の西東京地区大会、青道は3年生エースの丹波光一郎を中心に、投手4人の継投で、強豪・稲城実業と、息詰まる熱戦を繰り広げます。

2015年4月からスタートしたSECOND SEASONの青道では、3年生が引退し、御幸をキャプテンとした新チームが発足。春の選抜甲子園出場をかけて、秋の大会の勝負がスタートしました。現在、青道VS薬師の秋季東京都大会決勝戦が行われています。沢村たちの青道高校は、勝てば7年ぶりの王者復活。いっぽうの薬師高校は、勝てばこれが初の甲子園出場。どっちも全力、一歩も譲れません!

甲子園出場は、前キャプテン結城たち3年生世代からの夢。「努力は嘘をつかない」を合い言葉に、部員たちが一丸となって挑んできました。しかし、それでも届かない夢があった。なんという厳しい現実!

秋の大会が終わったら辞任するという片岡鉄心監督を引き止めるためにも、優勝しなければならず、部員たちの心はひとつ。しかし、前日のクロスプレーで、チームの要である御幸に、異常が出ています。「夏の雪辱を晴らす」が合い言葉の今大会で、あと試合ひとつ、青道は夢の切符をつかむことができるのでしょうか? 部員たちの夢が叶う感動の瞬間、ぜひとも見届けたいですよね。


以上、困難と思えた初志を貫徹する6作品をご紹介しました。

やはり、王道の少年漫画作品が多くなりました。共通しているのは、主人公が、バカがつくぐらい無骨なまでに一途なところです。けれど本当にバカでは務まらない。困難にあってなお意志を曲げない姿に感動するのは、彼らが痛みや辛さを抱えていて、それを見せずに前を向こうとしているから。その明るさ、強さが、どこかリアルでもある痛みや影に負けず、困難を乗り越えたとき、視聴者は心から拍手を贈りたくなるのでしょう。

彼らの活躍を見て清々しい気持ちになったら、ファンも、受験や就職など、荒波を乗り越えて新生活に強い気持ちで挑戦したいものですね。

(文/やまゆー)

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