「アクティヴレイド -機動強襲室第八係-」特集 スタッフ連続インタビュー 第1回 シリーズ構成・荒川稔久氏
第1クールが終盤にさしかかるTVアニメ「アクティヴレイド -機動強襲室第八係-」。警察を舞台にしつつも、アイドルやギャンブラー、巨大ロボットまで登場する毎回の趣向を凝らしたエピソードを楽しみにしている視聴者も多いことだろう。谷口悟朗総監督が「気楽に見てください」とアピールするように、警察組織というギミックと個性豊かなキャラクターによってTVアニメとしてのバラエティ感を存分に出した面白さを提供してくれている。そうした作品作りの模様をメインスタッフにうかがうインタビュー特集の第1回は、シリーズ構成・荒川稔久氏。キャラクターづくりの細やかな工夫をじっくり語っていただいた。
警察アニメに新要素を盛り込む
──まず、本作の企画は荒川さんにはどのような形でお話が届きましたか?
荒川稔久(以下、荒川)2013年にプロダクションアイムズで「俺、ツインテールになります。」という作品を制作していた前後に今回のお話をいただきました。アニメで警察モノをやるということで、「特捜戦隊デカレンジャー」(注:2004年/荒川氏はメインライターとして参加)のようなテイストでと言われて、「なるほど、あの感じか」と。アニメで警察モノというと、「機動警察パトレイバー」とか、僕も一本だけ脚本を書いた「機甲警察メタルジャック」とかありましたが、意外と久しぶりな感じなんですよね。その意味では、犯罪事件があってそれに対して各メンバーが活躍するという展開が話の軸になりつつも、今だから見せられる新しい表現はあるかなと。彼らの装備や警察内の人間関係に新しい要素を入れることによってまったく違う印象をもたせられるだろうし、そこが楽しみなところではありました。
──お読みになった企画書ではどのくらい固まっていましたか?
荒川 読んだ印象ではけっこう固まっているなと思いましたね。近未来、東京の半分が水没しているとか、組織にはこんなメンバーがいたらどうか、というような部分はある程度整えた形でお声がけいただいたので、その意味ではやりやすかったですね。
──世界観における余白の大きさは感じられましたか?
荒川 素材としての面白みですね。たとえば半分水没しているというのはどういうことか。そこから何を見出すのかというところで現状とは全然違う感覚を引き出せるかもしれないですから。舞台設定とキャラクターとそれぞれにふくらましどころがあるなと思ったので、両方の部分でこの作品に関わった甲斐があるようにはしたいなと。その意味でキャラのいじり方はひと工夫をしようとは思いました。
──キャラのいじり方、というのはどんな風に?
荒川 最初に谷口総監督にお願いしたのは、船坂と凛の立場を逆にすることでした。当初は船坂がボスだったんですよ。やっぱり船坂がトップにいると「パトレイバー」っぽくなってしまうので。さらに凜をあの体型にしたのも私です(笑)。ああいう見た目で実は才女で、しかもボスとして頼りがいがあるっていうのが個人的にどストライクなんですよ。
──逆にしたことで描き方もだいぶ変わってきますね。
荒川 そうですね。アニメならではという感じが出たのではないかなと思います。実写の役者でこれをやると、どうしても船坂の存在感が大きくなりすぎてしまいますし、凛と陽がそっくりという設定も年齢的に難しい。でもアニメだったらキャラクターデザイナーの方もそこをある程度踏まえて、説得力のある見せ方をしてくれるでしょうし、視聴者は1つのインパクトとして捉えてくれるかなと思って。そのへんは結構意識しましたね。
──黒騎と瀬名についてはどんな変化がありましたか?
荒川 黒騎は監督の最初のオーダーそのままですね。瀬名に関しては変なこだわりどころをつけようと思って、几帳面な感じを出していきました。当初は、この部署に飛ばされたことを面白くなく感じている知性派キャラという存在だったんですが、そこにどうにか人間味を持たせたいなと思って、豪放磊落である黒騎との対比も含めてこうしたキャラクターにしていきました。さらにある程度バディ感も発生するであろうことも含め、対極にあるようなキャラ付けにできればなと。
──キーパーソンになりそうな、あさみについてはいかがでしょうか?
荒川 企画段階ではあさみに当たる人物は設定されてなかったんですよ。第1話でダイハチを説明するうえでの狂言回しとして作られていったキャラクターでした。さらに、切れ者に見えるけれどもポンコツな彼女がシリーズを通してどう変わっていくのかもミニテーマとして設定されています。これについておそらく監督の中で最初は大きな思いはなかったのかなと思いますが、結果的に彼女を軸にしていくと見えやすくなるということが徐々に浮かんできて、終盤においても彼女が要所要所に出てきて、ひと言でも大事なことを言うようになっていったという部分はありますね。若者代表のような存在の彼女ですから、当初はメインの話に絡めなくて構いませんと言われていたのですが、ああいうキャラだからこそ一人前に成長していく姿が共感を与えられる気もしましたので、ストーリーの軸にどう絡ませていくかというのが後半のポイントになっていったかなと思います。
──ダイハチのその他のメンバーはいかがでしょうか?
荒川 遥のオタク的なところはこちらから足させてもらいました。当初、彼女はマネージャータイプで一番しっかりしているオペレーターだったんですけど、普段は何をしているのかを描きたかったのと、事件現場において「これって●●では……?」といった形でマニアックな視点から捜査の糸口をつかめるような設定にしたかったのでオールマイティーなオタク属性を入れ込みました。いっぽうで、円の無口さはアクティブな遥との対比ですね。一切しゃべらないという案もありましたが、流石に息遣いだけで声優さんを呼ぶのはなんなので、どこかの回で一気にしゃべるという想定でした。井上敏樹さんに脚本をお願いした第5話でギャンブラーになったのは井上さんの趣味ですが(笑)。メイン回で大々的ににしゃべることでメリハリが付いたかなと思います。
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