「アクティヴレイド -機動強襲室第八係-」特集 スタッフ連続インタビュー 第2回 秋田谷典昭監督

プロダクションアイムズ制作によるTVアニメ「アクティヴレイド -機動強襲室第八係-」の制作秘話に迫る連続インタビュー。第2回は現場の指揮を執った秋田谷典昭監督だ。「コードギアス 反逆のルルーシュ」シリーズで第1話の演出を務め、谷口悟朗作品に長年携わってきた監督がどのような想いから本作に参加したのか。撮影出身という自身のキャリアや、スタッフを信頼した自由な作品作り、ダイハチとアニメスタジオの意外な類似点まで、さまざまな話題を語っていただいた。


谷口さんは私にとっての師匠


──秋田谷監督はこれまでも数多くの谷口作品で活躍されてきました。本作ではどのような経緯で携わったのでしょうか?

秋田谷典昭(以下、秋田谷) まず2005年放送の「ガン×ソード」に参加し、それから「コードギアス 反逆のルルーシュ」と続編の「R2」、TVスペシャルの「ジャングル大帝 -勇気が未来をかえる-」で演出を担当しました。そこでいったん離れましたが、いつかまた一緒に仕事がしたいと思っていたんです。だからアイムズのプロデューサーから谷口さんが総監督の企画があると聞いて、すぐに飛びつきましたね。今度は監督として作品に立ち会えるのなら、もっと勉強できそうだなと。それに谷口さんが個人的に好きなことも決め手でした。

──演出家から見て、谷口さんやその作品の魅力はどこにありますか?

秋田谷 ファンをよろこばせたり驚かせたりするエンターテインメント性にあふれていて、そういった点にシンパシーを感じています。やはりアニメに携わっているからにはお客さんを楽しませることを大事にしたい。その考えは私の土台になっています。

──谷口さんの仕事ぶりを間近で見て、いかがでしたか?

秋田谷 発想の切り替えに驚かされましたね。シナリオ会議では最初に上がったプロットをどう面白くするかと考えがちなんですが、谷口さんは1つのアイデアに固執しない柔軟性を持っているんです。アプローチを切り替えて、それをポンと捨ててしまう。ただ無責任に切り替えるだけではなく、きちんと代案も出してくる。その引き出しも豊富でまさに知識の宝庫ですし、ストーリーの盛り上げ方や声優さんのディレクションも熟知している。盗みたい部分は本当に多いですよ。谷口さんは私にとって監督の師匠だと勝手に思っています。

──本作では谷口さんが総監督、秋田谷さんが監督という役職でクレジットされています。作業としてはどのような違いがあるのでしょうか?

秋田谷 物語の方向性やキャラクター設定は谷口さんがメインで引き受けて、それ以外のサブキャラの設定を私が手がけました。1期では監督として作品を俯瞰して見るために、あえて絵コンテを描かず、各話数の演出さんがさばけない仕事を担当するなど制作現場の取り回しを担当しています。あと、小ネタなどは自由に決められる部分が多いので、任せてもらえるところは自分もグイグイ行ってますね。そういう意味では、谷口さんがうまく自分を立ててくれている面もあります。ウィルウェアの装着バンクでは各キャラクターのどのパーツを見せようか、凛は貧乳だからそれが目立つアングルにしようとか(笑)。


──(笑)。アニメオリジナル企画を監督として手がけるのは初めてですね。

秋田谷 谷口さんが総監督として立たれているので、完全に自分オリジナルの作品というわけではありません。でも制作現場を実際に回してみて、想像以上に何も頼れない状況だと気付きました。ゲームなら原作をやり込めば、マンガならコマをずっと追っていけば、そこにヒントや設定が隠れていますが、基本的に自分の頭の中で創り出すしかない。オリジナルは大変だなと痛感しました。

──ご自身の味付けはどんなところに表われていますか?

秋田谷 間の使い方や話の進め方は谷口さんと異なる部分だと思います。谷口さんはものすごい情報量を矢継ぎ早に投下して、解決する前にさらに被せていく。そこがファンをワクワクさせて、全話数を見終わったところで伏線が消化されるカタルシスもある。私の場合はひとつ大きなドラマがあって、それがある程度解決してから次のエピソードやネタを放り込む方法を採ることが多いです。自然と間尺やテンポは違ってきます。


──監督作の「城下町のダンデライオン」や「PERSONA3 THE MOVIE #1 Spring of Birth」ではエピソードを細かく区切ってテンポをコントロールされてました。

秋田谷 常に同じテンポではお客さんに飽きられてしまうので、ドタバタしたエピソードの後はまったりとした小話を挟み、次により畳みかけるエピソードを置く。そんなふうに緩急を付けるよう心がけています。それは「バクマン。」で一緒に監督をしたカサヰケンイチさんの考え方なんですよ。ストレートの160キロを全力投球した後にカーブで翻弄すればファンに対するサプライズになるし、作品にもメリハリが付くだろうと。カサヰさんも私が監督の師匠だと思っている1人です。

──「アクティヴレイド」のバラエティ豊かな展開もメリハリをつける意図から生まれたのでしょうか?

秋田谷 そうですね。ウィルウェアのアクションが主体ですが、ポーカーをやってみたり、巨大ロボを戦わせてみたり……。それは谷口さんのエンタメ性が強く出ているところでもありますね。


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