【中国オタクのアニメ事情】中国における1月新作アニメの人気、注目される題材とリスク
中国オタク事情に関するあれこれを紹介している百元籠羊と申します。
今回は中国の動画サイトで配信されている日本の1月新作アニメ(冬アニメ)の人気や、そこから見えてきた人気の題材に関する傾向などを紹介させていただきます。
前回のコラムにも書かせていただきましたが、この時期は中国の春節休みと重なるので交流が減り話題のために作品を見ることも少なくなることから、中国のオタク界隈では1月の新作アニメに関する話題はあまり活発にならず、既存の「大作」や「話数が多くて高評価になっている作品」を休みの間にまとめて視聴する人が多くなるといった傾向があるそうです。
そういったこともあってか、今年も1月の新作アニメに関しては他のシーズンに比べて落ち着いた展開になっているようですが、イロイロと興味深い話も出ているようです。危ないが手堅い人気のミリタリー系作品
前回のコラムでも触れた、中国ではかなり「危ない」ところのある作品になってしまう
「GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」、
それから中国と直接の関係はないものの設定的に中国では扱いが難しい部分がある
「シュヴァルツェスマーケン」
は比較的堅調な人気となっているようですが、これに関しては中国におけるミリタリー系作品の強さという背景も影響しているのではないかと思われます。
中国ではメディアに流れる軍事カテゴリのニュースや情報が多く、戦争関係のドラマなども数多く制作されています。また学校においては国防教育なども行われていますから、軍事関連の話題は慣れ親しんだものになっているという見方もできます。
中国のオタク界隈においても軍事関係の話題は定番ネタのカテゴリーになっていますし、日本と比べて人気になりやすく、作品関係の話題が拡散しやすいジャンルとなっているのは確かです。中国のオタクの黎明期には「フルメタル・パニック」が大人気となりましたし、ここ数年の間では「ガールズ&パンツァー」が大人気となったこともあります。
当然ながら中国の社会では「日本」と「軍事」が絡むと扱いが難しくなってしまいますし、場合によっては社会的な批判の対象となってしまうようなリスクも存在します。しかしミリタリー系の作品に関する一定の需要が存在するのも確かですし、ミリタリー要素のあるアニメは人気の面では「手堅い」と言えるのかもしれませんね。
やはりお色気系の内容は強い?
それから人気と話題の広がりが活発な作品としては
「だがしかし」
があります。
「だがしかし」は日本の駄菓子をテーマにした作品であることから、放映開始前の時点では
「中国のオタクの間で一般的なレベルの日本文化知識では理解するのが難しいのでは?」
といった話も出ていました。
実際、作中に出てくる日本の駄菓子を実際に食べたことがある、味を想像できる中国のオタクな人は極めて少なく、駄菓子方面のネタに関する食いつきはあまり活発ではないようです。
ですが「だがしかし」は作中にちょっとしたお色気要素を絡めた隠喩的な表現が散りばめられていることから、そちらの方に食いついて話題のネタにする人が続出している模様です。
現在の中国のネットのコミュニティや、いわゆるニコニコ動画的な動画の字幕コメント上で盛り上がる際にはお色気要素や下ネタ的な要素が格好の話題になっています。
この方向の「話題性」に関しては「だがしかし」以前にも、「下ネタという概念が存在しない退屈な世界」が中国のオタク会話における話題をかっさらい、そのシーズンのダークホース的な作品となった例があります。
下ネタ、お色気的な表現はあまり極端にやり過ぎると見ている人が引いてしまったり、中国の感覚では理解できなくなってしまったりする可能性が出てきますし、取り締まりのリスクが跳ね上がるといった問題もあります。しかし「中国のオタクな人の理解できる、受け入れられる範囲」であれば作品が話題になるための強力な武器になるようです。
有料会員限定配信作品が健闘
中国の動画サイト「Tudou」では、前期、前々期に続いて有料会員限定での配信を行っていますが、今期はそこで配信された作品が人気や話題性の面で健闘している模様です。
「僕だけがいない街」
は配信前からマニア層を中心に評価の高かった作品ですが、ミステリー要素とタイムリープ的な要素を組み合わせた展開が中国のオタクの好みにあったようで、配信開始後もファンの間では露骨なネタバレを見ない、あるいはしないようにしながらのやり取りが飛び交っています。
またほかにも
「無彩限のファントム・ワールド」
は中国のオタク界隈で評価の高い京アニブランドであることや作品自体のクオリティなどから安定した人気となっているという話ですし、
「この素晴らしい世界に祝福を!」
は中国でもさまざまなコンテンツで活用され定番ネタとして認識されている「トリップ、転生」的な展開やファンタジーのお約束に関するパロディを含んだ作品ということから、中国のオタク層にもかなり「刺さる」作品となっているそうです。
今後、中国の動画サイトにおける有料会員限定向けの配信に日本のアニメが組み込まれていくのかといったことに関してはまだわかりませんが、中国のオタク層の好みに合致した話題作であれば有料会員限定の配信であっても一定の人気や話題性をきちんと獲得できるようになってきているのは間違いないかと思われます。
1月の新作アニメに関してはこれらの作品以外にも「暗殺教室」がオタク層だけでなく一般層からの人気も集めているようですし、「うたわれるもの」や「ヘヴィーオブジェクト」といった作品が2クール目に入ってから注目が強まり、作品関係の話題も活発になってきています。
ちなみに「暗殺教室」に関しては前回のコラムで昨年3月末の取締りの際にブラックリスト入りして配信中止となっていた影響なのか中国語タイトルを「極速教師」と変えて配信されているとお伝えしましたが、その後また中国語タイトルが変更されたようでこのコラムを書いている時点では「三年E班」に変更して配信されているようです。
中国において規制や社会的な批判の対象となった場合、作品の配信や話題の広がり方に影響が出るのは避けられません。
中国で配信される日本のアニメの人気や話題性に関しては、作品の面白さや題材だけでなく、中国社会における扱い、規制の対象となるリスクといった事情も考慮しなければならないのが、なんとも難しいですね。
(文/百元籠羊)
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