「アクティヴレイド -機動強襲室第八係-」特集 スタッフ連続インタビュー 第4回 谷口悟朗総監督
TVアニメ「アクティヴレイド -機動強襲室第八係-」の制作秘話に迫る連続インタビュー。第1シリーズの最終回は谷口悟朗総監督に登場していただいた。これまで数々の名作を手がけた彼のプロデューサー的なクリエイティブ手腕が本作の随所に現れている。そうしたものづくりにおける思考法、演出家としての“ドラマ”づくり、さらには“役者”に求めることまで、今回のインタビューではさまざまな話題について語ってくれた。
谷口悟朗総監督「期待は思い切り裏切る。見るのを止めたほうがいい」その真意とは?
──谷口さんは本作において「総監督」という役職を務められています。総監督は作品によってお仕事の形態がさまざまですが、本作ではどのようなお仕事をされているのでしょうか?
谷口悟朗総監督(以下、谷口) これは企画の段階からお話したほうがいいですね。まず、この作品の製作をする創通・フィールズ・フライングドッグから、オリジナル企画の相談をされたんです。そこで私が各社の要望を聞いて、調整して形にまとめたものがこの作品の大元になりました。それをTVアニメとしてつくろう、というのがもともとのスタートです。各社の調整をするだけの仕事でしたらクリエイティブプロデューサーということになっていたのでしょうけれども、全体の面倒を見てほしいということだったので、総監督という立場になりました。
──秋田谷監督との分担はどういうところにありますか?
谷口 制作会社であるプロダクションアイムズ内のスタジオワークは秋田谷監督および副監督の福島さんの指示の下動いてもらっています。私としては主に秋田谷さん・福島さんとお話しすることでポイントを押さえることができる。分担については当初は試行錯誤しましたが、ようやくその形に落ち着いたという感じですね。窓口をできるだけ絞り込んで、より意思疎通しやすい体制にした、といえばよいでしょうか。
──企画のお話に戻りますが、谷口さん発で作られていった部分はどんなところでしょうか?
谷口 なんらかのチームものにしませんか?というのがスタートです。そのほうが、各社の要望をまとめやすいなと。その時に非合法の組織というのも考えたわけですが、その方向を推し進めると、どんどん血生臭くなっていくんですよね(笑)。今回はそっちの方向じゃないなと。じゃあ、体制側ということで警察か。でもTVアニメの尺だとゼロから捜査して解決するまでの時間がないし、前後編といった連続モノの構成はオリジナルでは現実的ではない。であれば、主人公たちの捜査権が最初から限られていればいいといった形で作っていきました。そこは何らかの実験部署で、作中の警察と防衛の人が駆け引きするような、スポット的な位置づけにあって、各方面に配慮しなくちゃいけない立場。そんなふうにしてダイハチができあがりました。
──今回、谷口さんが体制側をどう描くのかにも関心が寄せられています。
谷口 今回はじめての体制側作品なんですよ。今までずっとテロリスト側でしたから(笑)。
あ、プラネテスがあるけど、アレ組織から抜けちゃうからなぁ。反体制側だったら、いろいろ騒ぎのある話になるんですけど、体制側なんだから現状維持でいい。そう考えたからなのか、キャラクターたちがしょっちゅう飲み会をやっているんですね(笑)。これは荒川さんをはじめとしたシナリオチームの趣味もあるかもしれないけど。
──ウィルウェアはどのようにして生まれたのでしょうか?
谷口 かなり初期の段階で、エンターテインメントとして何らかの要素が必要だよねという話になった時に、巨大ロボではないなと。というのも、この世界設定において普通の街中にそんなものが出てきたら、家も壊れるし人が死ぬかもしれない。いや、死にますね。あと、生物兵器との融合とか、家畜軍団を手下として戦うとか考えたんですが、企画の本筋から外れてしまう。本作品はアニメファンの人も楽しめるような作りにはしていますが、一般の人もターゲットに考えているんです。なので、尖りすぎた設定にすることはやりづらい。なら、いっそのこと、どこかで見たことがあるという記号を意図的に使おうとなり、パワードスーツみたいなものとして理解できるウィルウェアになりました。なので、時代設定もちょっと近未来に置いています。
──本作を作るにあたって、谷口さんの中での目標は何がありましたか?
谷口 これはプロダクションアイムズの公式サイトでコメントにも書きましたが、「きちんとしたテレビシリーズを作る」ということでした。私はちゃんとしたTVアニメを作ったことがないんですよ。
──どういうことでしょうか?
谷口 毎週気楽に楽しめるスタイル、という意味です。私はこれまでどうしても、お話として1つに完成させてしまっていたので。今回、総監督を名乗る立場になったので、そうではない作り方を一回試してみようということで複数の脚本家さんにお願いする形にしました。次回予告の文言も荒川さんにお任せしているのは、その顕著な例ですね。私、予告ノータッチって今回はじめてですから。そしたら出てきた言葉が「おはこにゃばちにんこ」(笑)
誤解しないでいただきたいのは、それらのことに対しても責任は取るということです。なので、どんなものでも無条件でOKということはないですが。
──最近の1クールアニメだと各話完結でキャラクター描写などにゆとりをもたせたものが少なくなりがちですね。
谷口 1クールだと、お話を追うだけでいっぱいいっぱいになるので多くのキャラクターのドラマを描写するのがちょっと難しいんですよね。だから、今回はドラマ的なるものは映像の影に隠そうと思ったんですよ。声優さんとの最初の打ち合わせでもドラマをやらないと伝えています。もし私の過去作品のドラマ的な要素が好きでこの作品を見てくれている人がいるとしたら、期待は思い切り裏切るので、変に何かを望んで見るのを止めたほうがいい(笑)。わざとそういう作り方をしていないので、そのような楽しみはありませんということを先に言っておきます。もし入ってきてしまったら「ああ、我慢できなかったんだなぁ」と思ってくれると(笑)
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