仮歌を歌っていたサウンドクリエーターが、表舞台へ。プロフェッショナル集団のeyelisが、ファーストアルバムをリリース

川崎里実、増田武史、前口渉という3人のサウンドクリエーターからなるユニット、「eyelis (アイリス)」。「ハヤテのごとく! CAN’T TAKE MY EYES OFF YOU」、「神のみぞ知るセカイ」、「赤髪の白雪姫」などのアニメ主題歌を歌ってきた彼らが、いよいよファーストアルバム「crescendo(クレッシェンド)」をリリース。アルバム用の新曲は、今まで手がけてきたアニメへのオマージュとなっているという。また、特典CDには、普段は表に出さないデモテイクを収録。音楽制作の現場を垣間見ることができる作品になった。今回のインタビューでは、業界の裏話も!


「仮歌」の歌い手として、業界内で好評を得ていました


──eyelisは2012年5月30日に、セルフカバーアルバム「PRE-PRODUCTION」でデビューしています。ユニット結成のきっかけは何だったのですか?

前口 3人とも、スマイルカンパニーという事務所に所属している作家で、いつもお世話になっているディレクターさんが、この3人でユニットをやってみようと思いついたのがきっかけです。

川崎 同じアニメ作品に、それぞれが別の形で関わることが何度かあった中で、私と増田さんの仮歌を、ディレクターさんが気に入ってくださって。この3人なら面白いことができるんじゃないかと。

増田 僕も川崎さんも、それまでは仮歌を歌ってきていたので、自分の歌が作品として表に出るということは驚きでした。いったいどうなるんだろうと、想像がつかない中でスタートを切ったという感がありました。

前口 それぞれが曲作りをして、メインボーカルは川崎さん、メンズeyelisの時は増田さんという体制で、eyelisが始まりました。

──それでデビュー作がセルフカバーアルバムだったんですね。いろいろな歌い手に提供してきた楽曲を、川崎さんと増田さんのボーカルで、改めて世に送り出した作品でした。その半年後に、ファーストシングルの「CAN’T TAKE MY EYES OFF YOU」(TVアニメ「ハヤテのごとく! CAN’T TAKE MY EYES OFF YOU」オープニングテーマ)をリリースして、そこから何作ものアニメ主題歌を手がけていくことになります。

前口 川崎さんや増田さんの歌声がTVから流れてくるのが、最初は新鮮でした。「ああ、仮歌の声が聞こえる」って(笑)。

──そもそも、「仮歌」とはどういったものなのでしょうか?

前口 声優さんなど、本番で歌う方にお渡しする素材です。

川崎 メロディにこういうふうにボーカルが乗るという見本ですね。

──仮歌を歌う時に、気をつけていることは何でしょうか?

増田 自分のキャラクターで歌うのではなく、その曲を最終的に表現することになる歌い手さんの個性を踏まえて歌うということですね。仮歌はあくまでガイドという心がけがありました。

川崎 私もそうです。アイドルソングだったりバラードだったりと、アニメの楽曲は幅が広いので、曲ごとに歌い方を変えて、この曲はこういう方向性ですということを、わかりやすく伝えることを意識しました。

増田 好青年の爽やかな曲だったらやさしく、ロックだったら時にシャウトして、と。

前口 いろいろな歌い方ができる2人が、僕からするとうらやましいですね。

増田 僕らはもともと、自分の曲をコンペに出す時に自分で歌っていただけなんです。でも、気がつくと、他の作家さんが作った曲の仮歌も依頼されるようになっていました。

──eyelisになったことで、お2人の歌が初めて世に出ることになったと。

川崎 eyelisはアニメソングを手がけるユニットなので、仮歌の時と大きく意識は変わっていないですね。アニメ作品のファンの方のために歌いたいと思っているので、たとえば、少年マンガ原作の「神のみぞ知るセカイ」の曲だったら、男性ファンに向けてちょっとアイドルっぽい歌い方をしてみたり、逆に「赤髪の白雪姫」は女性ファンが多い作品なので、私の素に近い歌い方になっています。

増田 僕がメインボーカルの曲は、「THE UNLIMITED 兵部京介」という作品の曲のみですが、作品の世界観を表現するために、自分はこう歌いたいというスタンスで歌っています。本当の自分の歌は何なのか、ということを突き詰めたりはしないんですけど、作品ありきでありながら、より自発的に歌うという部分では、仮歌の時とは意識が違うかもしれません。

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