アニメ業界ウォッチング第23回:下町を舞台にした小粋なショートアニメ「夕やけだん団」、その完成度の秘密とは? 二村秀樹監督、インタビュー!

JR日暮里駅前の名所、夕焼けだんだんと谷中銀座――そんな東京の下町を舞台にした短編アニメ「夕やけだん団」をご存知だろうか? シネコン・チェーン“109シネマズ”で、昨年春から、本編の開始前に上映されているショートアニメだ。

“地域振興のご当地アニメ”と、甘く見てはいけない。キャラクターデザインは村田蓮爾、主演は山寺宏一である。江戸っ子気質のネコ・コトブキと都会的な少女・七海の軽妙な会話は、情緒的なようでいて、どこかクールな笑いをふくんでいる。

この小粋な3Dアニメを監督するのは、フリーランスの二村秀樹(ふたむらひでき)さん。二村監督に、「夕焼けだん団」の魅力を聞いてみた。


村田蓮爾さんがキャラデなのに、女の子がいなかった?


──二村監督は、どのような経緯で「夕やけだん団」に参加したのですか?

二村 企画書を拝見したその夜、夢枕にネコが立って……といった小粋な話でもあればいいのですが、そんなことは一切なくて(笑)、フライングドッグのプロデューサー尾留川宏之さんが、以前から温めていらっしゃった企画です。声優は山寺宏一さん、キャラクターデザインは村田蓮爾さん、物語の舞台は日暮里の夕焼けだんだん坂。そこまではプロデューサーの尾留川さんとIWABの渡邊智博さんでスタッフィングされていました。 その段階で企画書をいただき、僕は「夕焼け」といえば世代的に「夕やけニャンニャン」なので、あの番組を思い出しながら(笑)、実際の谷中だんだん坂を検索してみると、やさしい感じの作品になりそうかもと。ネコが主人公という点も含め、今までの僕のダークサイドな雰囲気の作品ではないものへの期待も含め、お引き受けしました。

──過去の二村監督の作品といえば、「アニマトリックス」(2003年)や「Genius Party」(2007年)の短編「LIMIT CYCLE」など、ハードSFのイメージがあります。

二村 そうですね(笑)。「LIMIT CYCLE」の場合は、ブニュエル「アンダルシアの犬」やジャン・コクトー「詩人の血」のような作品も好みで目指していましたので。ただ、同様に「Peeping Life」や「紙兎ロペ」のようなゆる系アニメも好みでしたので、「夕やけだん団」のような作品も、もしかしたら自分に合っているのかもと思いました。

──背景はほとんど固定で、ネコ(コトブキ)と少女(七海)が漫才をするようなスタイルですが……。

二村 僕は昭和コント好きなので、「ダウンタウンのごっつええ感じ」のように、舞台の上でしゃべっているみたいな構図には親しみがあります。今作の背景にも「8時だョ!全員集合」みたいに派手なギミックを仕込めるとうれしかったのですが、予算的に怒られそうで無理でしたけど(笑)。


──だけど、コトブキと七海のかけ合いには、つい笑ってしまいます。

二村 脚本は、藤沢文翁さんという劇作家の方が書かれているのですが、山寺宏一さんの舞台の脚本も書かれている方なので、そのテイストが強くでているのかと思います。

──女の子とネコの組み合わせは絵的にも楽しいですが、七海は最初からいたんですか?

二村 実は、最初はネコ達だけだったんです。僕は「ガンバの冒険」世代なので、一匹だけでなく何匹か出したらどうだろう?と。村田さんが、先に何匹か描かれていたネコもすでにあったので、それをふくらませようかとも考えたのですが、結果として実現しませんでした。 僕としてはそれとは別に「村田蓮爾さん作品なのに、どうして女の子キャラがいないのだろう?」と思っていて。それで村田さんにお願いしたら、快く描いてくださいまして。ちなみに、僕としてはもっと露出も高くしたかったんですけど、プロデューサーの尾留川さんからは「パンチラ禁止」と言われていて。デザイン決定後に他の方からもスカートは「短いなぁ、短いなぁ」と言われたりしましたし。僕はあまり気にならないんですけど……(笑)。

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