TVアニメ「影鰐-KAGEWANI-承」高嶋友也監督インタビュー。制作秘話から単独イベントまで語り尽くす!

奇獣と呼ばれるUMAが人々を襲うパニックホラーとして話題をさらったアニメ「影鰐-KAGEWANI-」。その余韻も冷めやらぬ中、2016年4月から第2期「影鰐-KAGEWANI-承」がスタート。前回では見られなかったアクションまで盛り込まれた怒濤の展開でまたしても視聴者に衝撃を与えた。

アキバ総研では1期に続き、高嶋友也監督へのインタビューを敢行した。異例のスケジュールをどう乗り越えて、多彩なキャラクターにどのような想いを込めたのか。そして8月20日に迫る初の単独イベントに向けての意気込みをうかがった。


制作期間は3か月


──まずは2期の制作が決定した経緯について教えて下さい。

高嶋友也監督(以下高嶋) 2015年12月に長江努エグゼクティブプロデューサーから「2期があったらやってみたい?」と言われたのがはじまりです。そのときに「ものすごくタイトなスケジュールだけど、頑張ってね」と付け加えられました(笑)。1期のオンエアが15年10月から12月までで、2期のスタートが4月ですから、自分でもとんでもないスケジュールであることはわかっていたのですが……。

──やり遂げられるという自信があったのでしょうか?

高嶋 いやまったくなかったんですよ。脚本の熊本浩武さんはバラエティ番組でタイトな現場を経験していましたが、それでも「こんなスケジュールはやったことがない」と驚いていました。「1クールではなく、半分にしますか」という提案もあったぐらいなんです。でも1期を制作したことで、僕たちの中にまだまだ語れなかった部分があることに気付きましたし、続編を望んでいるファンが大勢いるのを知って、その声に応えたいという想いも生まれました。それなら1クールをやり遂げるしかないだろうと決意しました。

──「影鰐-KAGEWANI-承」というタイトルはいつ決まったのでしょうか?

高嶋 2月に制作を発表しましたが、その前日の夜中でしたね(笑)。最初の案は「弐」でしたが、長江プロデューサーの考えもあって「承」にしました。起承転結として次に繋がるものを作りたいという意図はもちろんありましたし、影鰐は憎しみの連鎖によって生まれた奇獣ですから「承」という漢字と相性が良いなと思いました。それに「承」の形がどこか影鰐っぽく見えたのもポイントでした。

──2期はどのような方向性を目指したのでしょうか?

高嶋 1期は作品が成立するのかさえわからなかったので、各エピソードごと同じ路線を踏襲するオムニバスホラーを意識しました。でも2期ではジャンル自体をガラッと変えて、影鰐の力を手に入れた番場のダークヒーロー路線にしようと思ったんです。焼き直しをするだけではジリ貧になって飽きられてしまいますからね。ただそれでも番場があまり活躍しないことは決めていました。番場が奇獣退治をするストーリーだと「ゲゲゲの鬼太郎」や「地獄先生ぬ~べ~」になってしまう(笑)。あくまで影鰐という奇獣をメインに据えたうえで、それに引き寄せられる人たちの物語にしたかった。そのバランスは難しかったです。


──第5話「衝突」ではアクションシーンがありますし、映像面でも新しい表現にチャレンジしています。

高嶋 フラッシュアニメ的な手法でアクションを描くのはあまり例がないので反対意見も多かったのですが、どこまでできるのか試してみたかったんです。でもアクションはやっぱり難しかったですね。第5話は編集演出の安喰秀一さんにとても助けてもらいました。完パケ映像を客観的に見てもらって、カットを入れ替えたり、テンポよく繋げ直したりして、完成までたどり着けました。安喰さんには編集段階でストーリーの結末を大幅に変えてもらったこともありましたし、編集マンとしての役職以上の作業をしていただきました。

──2期では3DCGも取り入れたとうかがっています。

高嶋 それも挑戦のひとつでした。たとえば第10話の廃墟は3Dを組んでいて、カメラを自由に動かせるようになっています。何よりも大きかったのは第2話の舞台となった列車です。あれは3DCGソフトウェアの「MikuMikuDance(MMD)」で列車のモデルを作っている方をネットで見つけて、使わせてもらったものなんです。社内にもCGを作れる人間はいるのですが、列車の車内や運転席まで精巧に作るのは難しくて、それならと僕から作者に連絡を取って許可を得ました。


──監督がみずから交渉したんですか?

高嶋 はい。作品のクオリティに直接結びつくことでしたからね。ブレーキなどの細部まで用意していただけたのでありがたかったです。

──限られたスケジュールの中で作品を面白くするために何でも取り入れていったんですね。

高嶋 そうですね。第2期を形にすることができたのにはさまざまな要因がありますが、超少数精鋭で作っていたため取り回しがよかったことが一番でした。皆がライブ感覚でアイデアを出し合って、トラブルも臨機応変に対応することができました。スタッフには本当に感謝しています。

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