アニメ業界ウォッチング第24回:今年75歳、やぶれかぶれのアニメ人生! 丸山正雄インタビュー!

元マッドハウスの社長・丸山正雄氏が、新会社MAPPAを設立してから5年が経過した。その間、同社は「坂道のアポロン」「神撃のバハムート GENESIS」などすぐれたアニメ番組を制作してきた。2016年11月12日(土)に公開の決まった映画「この世界の片隅に」も、MAPPAの制作だ。

今年で75歳をむかえた丸山氏だが、どんな姿勢でアニメ制作と向き合っているのだろう? 猛暑の中、仕事場にお邪魔した。


来年、再来年に倒れても大丈夫な体制をつくっておく


──MAPPAの立ち上げから5年が経過して、現在の丸山さんのお立場は?

丸山 もともとは、マッドハウスを出て、新しいスタッフたちとで作品をつくるため、2011年にMAPPAを立ち上げました。設立から2年たち3年たち、大塚学プロデューサー(現MAPPA社長)がよく頑張ってくれるので、どんどん大塚くんに現場を任せるようになりました。ついに5年たった今年4月、「年寄りではなく、これからは若い者がやるべきだ」と思い、大塚くんにMAPPAの社長になってもらいました。僕はもう、徹夜徹夜が面白い年齢でもないし、第一線をしりぞく気でいたんですけど……やっぱり、何かやりたくなっちゃったんですよ。 それで、スタジオM2という、プリ・プロダクションのみの企画会社をつくりました。企画会社のつもりだったんですけど、他にもいろいろやらなきゃいけなくなってしまって。そうなってしまうのは、この業界の常なんです。

──M2は、どういう経緯で出来たんですか?

丸山 2014年に亡くなった東大の浜野保樹教授が、細田守くんや原恵一くん、樋口真嗣くんたちと「Hの会」をつくろうと言いだしたことがあって。で、僕は丸山ですから「Hの会」には入れてもらえない。くやしいから、ジェンコの真木太郎さん、ボンズの南雅彦くんとで「ドMの会」でもつくる? とまあ、そんな話だったような気がします。


──本当ですか(笑)。だけど、丸山さんが企画を進めてらっしゃるのは本当なんですよね?

丸山 僕も、75歳ですからね。来年、再来年、もし僕が倒れたとしても、企画だけは僕と一緒に頑張ってきた若いプロデューサーたちがフォローしてくれるよう、この1~2年でストーリーラインなどの土台は固めておきたい。最低、丸山ならではの2本の大物企画は実現させたいと思っています。この2本は、完成までに5年はかかるでしょう。そのうち最初の2~3年に関われるぐらいの体力は僕に残っているので、準備だけは万端にしておきたいと思ったわけです。

──11月公開の「この世界の片隅に」は、片渕須直監督から丸山さんに持ち込まれた企画と聞いていますが?

丸山 持ち込まれたわけじゃありません。僕は、持ち込まれた企画にハンコをつくようなタイプではなくて、作品の成果にかかわらず、いちど組んだ監督とは「次はどうしようか?」という話をするんです。片渕監督の場合、「マイマイ新子と千年の魔法」(マッドハウス制作)を一緒につくりましたので、やっぱり「次はどうしましょうか?」という話から始まりました。企画は割とすんなり決まったのですが、お金がぜんぜん集まらない。最初の3~4年は、地獄でしたね(笑)。

──「マイマイ新子」の松尾亮一郎プロデューサーが、「この世界の片隅に」の現場を仕切っていますね。松尾プロデューサーは、丸山さんが呼んだのですか?

丸山 はい、強引に口説き落としました。片渕監督とのコミュニケーション能力も含めて、「この世界の片隅に」のプロデューサーは、松尾くんしかいない。というより、僕らが「この世界の片隅に」をつくるのは必然。運命なんですよ。そう考えたほうが、気が楽じゃないですか。

──制作が始まってから、MAPPAのスタジオに顔を出したりされるんですか?

丸山 もちろん、ちょくちょく見にいってはいます。だけど、彼らに任せておいて上手くいくなら、僕は何も口出ししません。もし上手くいかないようなら、しゃしゃり出ていって大騒ぎしますけれどね(笑)。

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