【アニメコラム】キーワードで斬る!見るべきアニメ100 第9回「モブサイコ100」ほか

アニメファンの飲み会というのは得てして、大喜利というか連想ゲーム的なものになりがちだ。「○○には××なシーンが出てくるよな」と誰かが一言いえば、ほかの誰かが「××なシーンといえば△△を忘れちゃいけない」と返してくる。アニメとアニメはそんなふうに見えない糸で繋がれている。キーワードを手がかりに、「見るべきアニメ」をたどっていこう。


2016年7月の新番組のひとつモブサイコ100。この作品は「超能力もの」だ。

主人公は、超地味な中学2年生の影山茂夫(通称モブ)。モブは「霊とか相談所」の霊幻新隆の下でアルバイトをしている。霊幻は口八丁で依頼人を丸め込むニセ霊能力者。ところがモブは、正真正銘の超能力者だった。

モブは、幼い頃に超能力を使う時に弟の律を巻き込んでしまい、傷つけてしまったことがあった。それ以来、人間に対して超能力を使うことを封印してきた。だが、さまざまな事件に巻き込まれ、モブの感情が100%に達したとき、圧倒的なパワーの超能力が相手に対して解放されるのだった。

'80年代いっぱいぐらいまで、だろうか。「超能力」といえば、精神の力で物体を動かすテレキネシスや、精神と精神でコミュニケーションをとるテレパシーを指していた。

ところがやがて、もっと単機能だったり、ビジュアル的にもインパクトのある、特殊なタイプの能力が登場するようになる。たとえばR.O.Dに登場する「紙使い」とか、ジョジョの奇妙な冒険の「幽波紋(スタンド)」などを思い浮かべてもらえればわかりやすいだろう。いまやこういった“超能力”のほうが主流で、呼び方も“異能”と呼ばれて“超能力”とは少し区別されている(正確にいうなら、“超能力”は“異能”のサブカテゴリになった)。

そんな昨今のトレンドの中で見ると、サイコキネシスやテレパシーが登場する「モブサイコ100」は、ちょっと懐かしい香りがするのだ。さらにいうと、「霊能力」と「超能力」がシームレスにつながっている設定も、'70年代のオカルトブームと通い合って、これまた懐かしい。そんな懐かしい道具立てが、パワフルな作画を得て、2016年のアニメとなって見事に表現されているのが「モブサイコ100」なのである。

というわけで今回のキーワードは超能力

超能力ものアニメといえば、まず外せないのが幻魔大戦だ。超能力を得た高校生・東丈が、大宇宙を滅ぼそうとする根源的な悪・幻魔との戦いに身を投じていくというストーリー。小説家・平井和正とマンガ家・石森(石ノ森)章太郎が'67年に発表したマンガが原作だ。

「幻魔大戦」は「平凡な少年が、特殊能力に目覚めて、世界の危機に立ち向かう」という“中二”なパターンの黎明期のものだ。努力以上に「目覚めること」が重要な超能力だからこそ、「平凡な僕」である読者も共感的に読むことができるというわけだ。

「幻魔大戦」にはサイコキネシスやテレパシー、それに壁抜けなどの超能力が登場する。特徴は、超能力を使う時、オーラが体を覆う表現だ。ゆらりゆらりと体の輪郭から立ち上るオーラの表現は非常にインパクトがあって、その後もさまざまなアニメがこのオーラ表現を踏襲していくことになる。

超能力ものといえばこちらも絶対外せないのがAKIRAである。全世界的にもあまりにも有名なこの作品は、軍部が極秘に行ってきた超能力研究と偶然にもそれに巻き込まれた不良少年たちの物語だ。アキラという言葉は、重要キャラクターの名前という以上に、「人智を越えた超能力の象徴」としてストーリーを牽引していく。不良性感度が高い作品なので、同時代的なムーブメントであったサイバーパンクとも、“パンク”の部分で若干の共感があるのも本作ポイントだ。

軸となるキャラクターは2人。1人は、不良グループのみそっかすで、軍に捕獲され超能力に目覚めた少年・鉄雄。もう1人がグループのリーダーで、鉄雄の兄貴分ともいえる少年・金田。コンプレックスを抱えたまま超能力を使う鉄雄は次第に暴走していき、金田はそれを止めようとする。

戦う時は鉄雄が強力なサイコキネシスを振るう。ただし、金田のほうはまったく超能力を持っていないので、試作品のレーザー銃などで対抗することになる。この非対称なバトルも「AKIRA」の特徴のひとつといえる。

鉄雄の使うサイコキネシスはどんどん強さを増していく。その力がエスカレートしていく過程が、ハイレベルな作画で描かれているのも本作が伝説の1作となっている理由でもある。

そして最後の1本は、超能力ものの古典バビル2世。サイコキネシスもテレパシーもエンディングの歌詞に読み込まれている。オープニング、エンディングともにアニメソング史上に残る歌だけに、本編未見の人も、歌ぐらいは聴いたことがあるんじゃないだろうか。

「バビル2世」の超能力戦の特徴は、触れた相手にダメージを与える「エネルギー衝撃波」が登場すること。サイコキネシスを駆使した超能力戦というと、どうしても「すごい形相で2人のキャラがにらみ合う」という案外地味な絵面になってしまう(余談だが実写の映画「ダークシティ」ではそれを結構まじめに絵にしていた)。

ところが、“電撃”とも称されるこのエネルギー衝撃波は、電撃的エフェクトもあり、かなりフィルム映えする技である。きっとこのあたりの「オリジナル超能力」が、単なる超能力から、ビジュアル的におもしろい“異能”へと進化していく遠いルーツなのではないかと思う。


(文/藤津亮太)

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