【アニメコラム】アニメライターが選ぶ、2016年夏アニメ総括レビュー! 「アクティヴレイド -機動強襲室第八係-2nd」「腐男子高校生活」など、注目の5作品を紹介!!

2016年夏アニメも大団円を迎え、今年も残りはすでに3か月。今回は9月末に最終話がオンエアされた注目作を総括レビュー。近未来警察アニメ「アクティヴレイド -機動強襲室第八係-2nd」、8年ぶりのテレビシリーズ「マクロスΔ」、WEBコミック誌「裏サンデー」連載の「モブサイコ100」、大ヒットアイドルアニメの続編「ラブライブ!サンシャイン!!」、ボーイミーツボーイ「腐男子高校生活」の5作品をラインアップ!


アクティヴレイド -機動強襲室第八係-2nd


総監督の谷口悟朗さんが初めて体制側をテーマにしたことで注目を集めたオリジナルロボットアニメ。これまではテロリストや流れ者といったアウトローばかりをメインに描いていたからなのか、エピソードが進むごとに警察ものというよりは愚連隊の様相を呈してくる。セカンドシーズンでは権限が拡大したこともあって暴走はよりエスカレート。「私が正義よ!」と叫んではばからないヒロインは盗撮犯の射殺を目論み、メカニックは国に内緒で特殊機能を仕込み、武装の使用に法的手続きが必要という建前は、総理の生返事を許諾と解釈することで黙殺される。

第3話「天使と破壊神」では警察と犯人がボイスチェンジャーを使い、全員が小澤亜李の声になることによって、両者の差は限りなくゼロに近付く。警察とヤクザを同類として描いた名作「県警対組織暴力」さえ彷彿とさせる攻めた作品でありながら、エンドカードにピーポくんが現われることで我々の驚きは頂点に達する。そう、本作は警視庁とコラボしていたのだ。さらにメカの最終形態には拳以外の武装が見当たらず、パンチ一発で東京を救うという劇的なクライマックスを迎える。すべてのしがらみから解放されたラストは痛快エンタテイメントにふさわしい爽快感を引き出している。



マクロスΔ(デルタ)

アニメの主人公は女の子の気持ちがわからない鈍感男だらけなので、意中の彼を射止めるためには好意をストレートに伝えることが重要になる。そう考えると「マクロスΔ」の三角関係を司る2人のヒロイン、フレイアとミラージュのどちらが勝利をつかむのかは一目瞭然。フレイアの頭には、感情に応じて光を放つ感覚器官・ルンが付いているからだ。好感度がアップすると輝きが増して音が鳴り、そのうえ見た目はハートマークというルンの親切設計は、どこか往年の恋愛ゲームを思い起こさせる。ミラージュに胸を押しつけられたときも無反応だった主人公・ハヤテであろうとも、フレイアのルンはさすがに無視できず、彼女を意識せざるをえなくなってしまう。恋の勝敗は胸の大小ではなくルンの有無が握っていたのである。

そんな感情ダダ漏れ娘のフレイアだが、彼女の告白シーンは最終回まで持ち越される。端から見れば相思相愛なのは明らかなのだが、

ルンを持たない=本当の気持ちがわからない相手に想いを告げることに恐怖心があったのかも知れない。「好き」という言葉をようやく口にして、自分の気持ちを歌うことで戦争を終結に導くフィナーレは、これぞ「マクロス」という幕切れだ。



モブサイコ100

「ワンパンマン」の原作者・ONEが手がけるサイキックアクションをアニメ化。圧倒的な力を持つ主人公・影山茂夫(モブ)をはじめ、火、重力、悪霊、幻覚など多彩な力を操る超能力者たちによってサイキックバトルが繰り広げられていく。シンプルだが存在感のあるキャラクターデザインと、ときには鉛筆画や油絵といった手法も織り込まれたアニメーションが抜群にマッチしている。

だが本編最大の盛り上がりは、何の力も持たない自称霊能力者の詐欺師・霊幻新隆が口八丁手八丁で超能力者をなぎ倒していく場面だ。超能力者を大人になれなかった子供だと喝破し、説教で妄想から現実に引き戻すシーンには、不思議な説得力が備わっている。原作のキャラデザをそのまま再現したエピローグは妙な脱力感にあふれていて、こちらも必見の仕上がり。



ラブライブ!サンシャイン!!

「ラブライブ!」の主人公・高坂穂乃果は一見思いつきだけで行動しているかのように見えたが、実際は学校を廃校から救う使命に燃える策略家であった。μ'sを結成するときもメンバーに相応しい人材だけを的確にスカウトし、協力を申し出てきた友人3人組に対してはμ'sに誘うそぶりすら見せなかった。確かに友人たちもキュートではあるのだが、サンライズ制作のアニメらしく、μ'sのメンバーとは主役機と量産機の関係に似た壁が立ちはだかっていた。μ'sは9人のスクールアイドルグループなのだ。

だが「サンシャイン!!」の高海千歌は、Aqoursの活動を見て憧れた友人3人組のお願いを聞いて、彼女たちもステージに上げようとしてしまう。μ'sの輝く姿を見てスクールアイドルを目指した千歌にとって、その願いを断ることは過去の自分を否定してしまうように思えたのかもしれない。ステージへの扉を開ける前に「9人だけじゃない」とつぶやく千歌の言葉から彼女のやさしさが感じられた。



腐男子高校生活

一迅社のWEBコミック配信サイト「ゼロサムオンライン」で連載中の人気コメディが原作。性癖はノーマルだがBLをこよなく愛する腐男子高校生・坂口亮と、そんな彼に振り回される一般男子・中村俊明をメインに、愉快なメンバーたちの学園ライフを描く。仲良くなった婦女子と同人誌即売会に出かけたり、仲間の腐男子とBL本の売り子をして周囲の腐女子を興奮させたりと、一風変わっているものの、何だかうらやましくもある青春の日々を過ごしていく。

ショートアニメは30分枠のアニメよりも主題歌が印象に残りやすいが、本作のエンディングテーマ「SEKAIはボーイミーツボーイ♂」はその中でも出色の出来映え。BLへの愛を高らかに歌い上げる魂の叫びを聴くと、こちらも「ボーイミーツボーイ♂」と合いの手を入れたくなってしまう。一迅社のCMではお便りコーナーも盛り込まれ、放送枠を目いっぱい満喫できる。



(文/高橋克則)

おすすめ記事