「ゼーガペインADP」、下田正美監督インタビュー【予習編】

2006年に全26話がテレビ放送された、サンライズのロボット・アニメ「ゼーガペイン」。 当初はDVDの売り上げもかんばしくなかったが、ファン投票によって、放送から4年後にBlu-ray化が実現。10年目となる今年、ついにテレビ版の映像に新規カットを加えた特別編「ゼーガペインADP」が、全国8館の映画館で、2週間限定でイベント上映される。 アキバ総研では、2度に分けて、テレビシリーズと「ADP」、両方の監督をした下田正美さんにお話をうかがう。まず今回は、「ADP」を見る前に、「ゼーガペイン」を未見の人にも読んでもらいたい【予習編】である。


「ADP」は「ちょっと変わった総集編」


──今あらためて聞きますが、「ゼーガペイン」とは、どういう作品なのでしょう?

下田 自分は単純に、エンターテインメントとして作ったつもりですが。

──そうは言っても、世界設定が独特ですよね?

下田 少しだけ不思議でミステリアスなSFテイストが、視聴者の知的好奇心に訴える作品ではありますね。初めて「ゼーガペイン」が放送された2006年は、やや難しい作品が増えてきた時期でしたから、僕や原作者が見ていたNHK「少年ドラマシリーズ」や筒井康隆さんなどのジュブナイルに立ち返って、当時の少年たちのように夕方6時からの放送をドキドキしながら待てるように……と思って、つくりました。「俺のクラスにも、こんなヤツいるよ」と思ってもらえるような主人公で、とっつきやすい作品になるよう、心がけました。


──当時は、仮想世界をベースにした「マトリックス」が公開された後でしたね。

下田 ええ、打ち合わせのたびに“登場人物が全員死んでいる「マトリックス」です”と説明すると、何となく「ゼーガペイン」の世界設定を理解してもらえました。“死んでしまって、記憶のデータだけになってしまった人類が、生身の肉体を取り戻すために戦う話”と言えば、わかってもらえるのではないでしょうか。

──そうした特殊な世界設定の話を、10年ぶりに新作で蘇らせるわけですが……

下田 ビックリですよね(笑)。

──「総集編」というとらえ方で、合っているでしょうか?

下田 テレビシリーズのBlu-rayがいずれ再販されるだろうから、それに合わせてのとば口、入門編として「ゼーガペイン」の全容を理解できるような総集編をつくれないか?というオファーがありました。だけど、普通の総集編ではつまらないので、「ゼーガペイン」のループする世界を逆手にとった、ちょっとだけ変わった総集編を提案したわけです。

──そのとき、新作カットが必要になるとわかっていたのですか?

下田 普通、総集編の新作カットは売りとして派手でキャッチーなシーンを作画することが多いと思います。だけど、今回の「ゼーガペインADP」は、「ドラマ的に必要な絵を新作でつくる」コンセプトです。地味なのに大変な芝居が多いのですが、新作カットを担当する作画スタッフは、僕が絵コンテに描いてない分まで、「このキャラなら、こういう芝居をするはずだ」「いや、させたい!」と、さらに手間をかけてくれました。


──テレビシリーズを見ていた人からすると、「ADP」はかなり冒険的な作品になっていると思います。

下田 冒険しているからこそ、テレビシリーズを熱心に見ていてくれたファンから、絶対にセリフや設定面でつっこまれないように、何度も仔細に検証しました。そうは言いつつ、あえてズラしていたりボカしていたりする個所もあることはあるのですが(笑)、まずは大丈夫なはずです。安心して、見てほしいと思います。

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