TVシリーズから一新された「劇場版 艦これ」の音楽──西辺誠プロデューサーに聞く
2016年11月26日から全国公開となった「劇場版 艦これ」。そのサウンドトラック「艦響 Vol.2」が、いよいよリリースされる。TVシリーズの楽曲を使わず、具体的なシーンに合わせて音楽を付ける“フィルムスコアリング”で新たに制作された、劇場版のサウンドトラック。その鍵を握るのが、音楽プロデューサーの西辺誠さんだ。西沢幸奏さんが歌った主題歌「帰還」と合わせて、「劇場版 艦これ」の音楽の成り立ちについて、たっぷり話をうかがった。
音楽を新たに作りましょうと、言ってしまったのが全ての始まりでした
──「劇場版 艦これ」の音楽について、いろいろおうかがいしたくて、やってまいりました。よろしくお願いします。まずは、サウンドトラックの総括からお願いします。
西辺 TVシリーズの劇伴(サウンドトラック)を一切使わないコンセプトでいきましょうと言ってしまったことが、全ての始まりでした。打ち合わせの中で、今作はTVシリーズを越える劇場版を作ろうと意気込んでいるのに、TVで使用した劇伴をそのまま使っていいものかという話になって。「じゃあ、思い切って『劇場版 艦これ』の音楽をあらたに作りましょう」と、いうことになりまして。
TVシリーズのサウンド感を継承しつつ、さらにその上を目指してゼロから作っていくというのは、本当に難しかったですね。さらに、今回はフィルムスコアリングをやっているので。
──すべての曲を、使われるシーンに合わせて作っていったということですね。
西辺 つまり、曲の秒数があらかじめ決まっているし、どの曲も特定のシーンに合わせて作るので基本的には一度しか使われません。絵コンテの段階で秒数を計算して、ある程度合わせてデモ音源を作り始めるのですが、映像制作の過程で、どうしてもそれが変わっていくんですよね。
──想定していたよりもシーンの長さが変わったり、カットが切り替わるタイミングが変わったり。
西辺 そういうことです。それに合わせて音楽も作り直して。ですから、ある期間集中して作って完成というわけにはいかず、映像制作の進行に合わせて、ずっと音楽も作り続けていたという感じで。
──劇場版を見たら、とにかく音楽が鳴っているという印象を受けました。
西辺 本作は艦隊戦が大きな見どころのうちのひとつなので、爆発音だったりスクリュー音だったり、効果音がたくさん乗るわけですが、映像や効果音が派手な分、劇伴曲を減らすという考え方もあったんですけど、結局、かなりの楽曲数になりました(笑)。
海上の戦闘を高揚感のあるリズムで煽ると、やはりかっこよく見えると思うんですよね。逆に、ドラマの部分では情感があふれる音楽をつけて、起伏を作って。劇場版は、TVシリーズより生楽器をベースに、実写映画に近いイメージで音楽を作っていったというのがありますね。
──「艦響 Vol.2」には30曲が収録されていて、なかには3分を越える長い曲も、いくつかあります。
西辺 長い楽曲は、ひとつの曲の中で、絵の演出に合わせて展開を持たせている曲ですね。たとえば、最初はリズムだけで始まったのが、セリフをきっかけにメロディラインが入って、キャラクターも疾走していく感じとか。魚雷が海底に着くタイミングで、鈴の音を鳴らしてみたりとか。効果音とは別に、音楽でシーンを盛り上げるということも試みました。
──音楽が効果音の働きの一部を担っていると?
西辺 特にリズムはそうだと思います。水面を滑走しているシーンで、ダダンダダダンとリズムを鳴らすと躍動感が増して、盛り上がりますので。
──海上の戦闘というのが、音楽の作り方にも影響してそうですね。
西辺 海戦は壮大ですし、水を切るスピード感が出るので、音楽もシュッと切れ味が鋭くなるんですよね。今回の「劇場版 艦これ」の場合はそれに加えて艦載機や他の兵装も出てきますし、小さな妖精さんが働いている姿も、音楽が乗るとかっこよく見えるんだと思います。
──作曲は亀岡夏海さんです。亀岡さんの持ち味を、どのようにとらえていますか?
西辺 他作品の劇伴を共作でやられていたりしますけど基本的にはアレンジャーとして活躍してこられた方で、僕も他の作品でお願いする機会がいろいろありました。その時に思ったのが、こちらが伝えたイメージを具現化するのが巧みだし早いんですよね。アニメの劇伴を単独で手がけるのはTVアニメの「艦これ」が最初だったんですけど、アレンジではアニメ、ゲーム、実写といろいろなジャンルをやってきたのが強みで、表現方法は実に多彩な方だと思います。
──作曲は、具体的にどのように進めていったのでしょうか?
西辺 まず全体のコンセプトや各楽曲のイメージの摺り合わせをした後に、ある程度楽曲が出来た段階で、僕が彼女の仕事場に行って、メロディや楽器構成について話し合いました。
金管はこんなフレーズがいいんじゃないかと、その場で鍵盤を弾きつつ、彼女が「こういうのはどうでしょう?」と、お互いの意見を出し合いつつ。
──アイデアを出し合って、二人三脚で作っていったという感じですね。
西辺 お互いフレキシブルだからこそ、いいものを作るために試行錯誤して、結果的に進行が流動的になりましたが、最終的に映像とうまく合わせることができたと思います。
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