【アニメコラム】ときめき☆タイムトリップ第10回「家庭教師ヒットマンREBORN!」カッコよくてかわいくてダーク。お楽しみがいっぱいの夢の宝箱!

「今見ても、やっぱりいいわー!」
「なんでそんなに女性に受けたの?」
おもしろいものには理由(ワケ)がある! 女性アニメファンの心をつかんでヒットした懐かしの作品を、女性アニメライターが振り返ります。

今回取り上げるのは、2017年1月から放送がスタートした「エルドライブ【ēlDLIVE】」と同じ原作者(天野明)によるヒット作品、「家庭教師(かてきょー)ヒットマンREBORN!」

放送当時、リアルタイムで原作とアニメを追っていた筆者が、その魅力を振り返ります。


日常コメディからシリアスバトルへ! 4年間にわたる大人気アニメ


アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN!」は、2006年10月から2010年9月までの4年間にわたり、全203話が放送されたロングヒット作品です(原作コミックは2012年11月に完結)。

原作は「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載されたコミック。美麗で個性的な男性キャラクターたちが、女性ファンの人気を集めました。

その人気は根強く、放送終了から6年が経った2016年年末のジャンプフェスタでも、イベント限定の、アニメバージョンの絵柄による商品が販売されています。

キャストが歌うキャラクターソングも大ヒットし、雲雀恭弥vs六道骸が歌うエンディングテーマ「Sakura addiction」は、オリコン最高7位を記録。キャストが出演するコンサートイベント、通称「リボコン」は、2008年から2011年まで5回開催され、台湾にも遠征しました。

「君の名は。」「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」などで知られるアニメーター・田中将賀さんが、初めてキャラクターデザインを手がけた作品としても知られています。田中氏は、「原作者・天野明さんの絵のおかげで今の自分の絵の基礎が出来上がりました」と語っています。(「田中将賀アニメーション画集」シナノパブリッシングプレスより)

田中氏が手がけた、DVDジャケットイラストを中心としたオールキャラ総登場のアニメ版美麗イラストは、上記の画集に集められています。ファンなら必見です。


クセ者ぞろい! かわいくてカッコよくておもしろい登場人物たち


「家庭教師ヒットマンREBORN!」の人気の秘密といったら、1にも2にも魅力的で心おどる、よりどりみどりの個性豊かなキャラクターたちです。これは間違いないでしょう。

どのキャラクターもカッコよくて、かわいいのです。そして強烈に「変」です!

赤ん坊が黒服を着込んだ最強のヒットマンで家庭教師という、謎の存在、リボーン。
日本の落ちこぼれ中学生がイタリアンマフィアの次期ボス候補という、成長する主役、沢田綱吉(ツナ)。

爆弾を操る不良なのに、ツナには絶対服従の右腕、獄寺隼人。
さわやかな野球少年なのに、天性の戦いの素質を持つ友人、山本武。
孤高の戦闘狂でかわいいモノ好きの風紀委員長、雲雀恭弥。
単純バカで妹思いの、熱すぎるボクシング部主将、笹川了平。
牛の模様のついた服を着ている、泣き虫でうざい幼児、ランボ。

1人ひとりがツッコミ倒したくなる奇妙な連中ばかりです。そう、主人公の一番の仕事は、おかしな仲間たちにツッコむことでした!

いつも白眼をむいてあわあわしているツナが、シリアス展開で仲間のために試練に耐え、「死ぬ気の炎」を額に灯すと、クールで無表情な最強キャラになるというのが、ツボでしたね。


血と暴力と悲劇と……見え隠れする暗さが想像をかきたてる


次から次へと現れるライバルキャラがまたイケメンで、暴力的でダークです。そしてこれまた奇妙奇天烈です。

マフィアの牢獄から脱獄した犯罪者で、色違いの右目に「六道輪廻」の特殊能力を秘めた六道骸。
骸なしでは存在できない、内臓を失った薄幸の美少女、クローム髑髏。

怒りに満ちて暴力的な、暗殺部隊ヴァリアーのボス、XUNXUS。
XUNXUSの腹心で、言動は乱暴だが情の深い剣士、スクアーロ。
自分のことを「王子」という天才ナイフ使い、ベルフェゴール。
なまいきですっとぼけた、したたかな幻覚使いの少年、フラン。

甘いものが好きで残酷な、ミルフィオーレファミリーのボス、白蘭。
白蘭にふりまわされ、胃痛に悩む技術者で幹部の、入江正一。

特に暗殺部隊ヴァリアーは、女性ファンに絶大な人気がありました。

ごく普通のご町内の日常と重なりあって、マフィアの世界が広がっている。同級生の女の子に片思いしてドキドキし、テストや夏祭りがある生活に、危険な暗殺者がやってきて命がけのバトルをする。まるで「不思議の国のアリス」のように、奇妙で楽しげで理不尽な夢の世界です。


「家庭教師(かてきょー)」との師弟関係が最高にクール!


どんなにユニークなライバルが登場しても、主役の存在感は薄れません。

ボンゴレファミリーの首領に必要な「大空」の属性を持つツナは、「全てに染まりつつ全てを飲み込み包容する大空」と称されていて、そのせいなのか、なんだかんだ言って、味方にも敵にもよく好かれて(執着されて)います。そして凶悪な敵対者も、いつのまにか仲間に似た立場に巻き込んでしまう。いつのまにか、マフィアがお隣さんになっている。

そんな、弱いようでいて見せる器の大きさや、もともとは臆病なのに、仲間のために勇気をふるって強く成長していく姿に、ファンはときめきました。

そして戦いの場は違っても、強く成長するツナの導き手はいつもリボーンです。一見、主人公とマスコットのように見える2人ですが、そこに成立しているのは、熱く深い師弟関係。絶望の底でくじけそうなときにも、何度となくリボーンがツナを叱咤し、信頼し、見守り、まかせることで、ツナは復活してきました。実に王道の少年漫画展開です。

このちぐはぐな2人の絶対の信頼関係が、何よりときめく見どころでもありました。「この作品で一番ハードボイルドな二枚目は、リボーン先生!」というのは、日常編のころからファンの一致した意見でした。


名物となった「おいしいところ全部先出し」のオープニング映像


アニメ「家庭教師ヒットマンREBORN!」の名物といえば、ネタバレ上等、全部先出しのオープニング映像です。

たとえば、「vsヴァリアー編」(34〜65話)に入る前からスタートしたオープニング「BOYS & GIRLS」には、展開を先取りして、ツナと仲間たちがヴァリアーの1人ひとりと対戦し、必殺技が繰り出されるところまで、プロモーション映像のようにカッコよく詰め込まれています。

これは、放送当時の事情が関係していたようです。今泉賢一監督は、アニメが「最初は1年の予定でスタート」し、「途中で終わる可能性が常にあった」と語っています(学研「アニメディア」2011年7月号)。

もし最初の1年で終わっていたとしたら、「vsヴァリアー編」の途中で終わる可能性もあったでしょう。そのために、出し惜しみせずに一番いいところを早めに見せたかったのではないかと推測できます。

この見せ方はアニメ「家庭教師ヒットマンREBORN!」の名物となりました。その後も、新たな章に進むたびに、ニューフェイスの敵を全員登場させ、新必殺技も先出しで披露しています。原作を知るファンも知らないファンも、先を楽しみに待てる、粋なファンサービスになりました。

もうひとつ、「アニメならでは!」の表現として、大空、嵐、雨、雷、雲、晴、霧という、七つの天候にちなんだ属性に分かれる「死ぬ気の炎」があります。それぞれ虹の七色をしていますが、この炎の描き方が本当に美しく、アニメ映えするものでした。

色が異なるだけではなく、炎のかたちや燃えてゆらめくリズムなどが、七つの炎それぞれでまったく違うのです。色と動きのあるアニメで見られてよかったと思える設定でした。


日常へと回帰する物語は、「エルドライブ【ēlDLIVE】」とほんのりつながる


原作コミックの最終回には、アニメの最初のオープニングテーマ「Drawing days」の歌詞を連想させるモノローグがあり、原作とアニメを並行して楽しんだファンを喜ばせました。まるで、原作者からアニメへの感謝のメッセージのようでもありました。

また、「エルドライブ【ēlDLIVE】」の1話で、TVアナウンサーが、

「イタリアンマフィアの首領後継者が、日本人となる可能性のあることが、取材によって明らかになりました」

とニュースを伝えていて、多くのファンが「これってツナのことだよね!?」と反応しました(これは、原作サイドの「天野明キャラクターズビジュアルブック Rebo to Dlive」のネタが使われたものと思われます)。

「エルドライブ【ēlDLIVE】」の世界と「家庭教師ヒットマンREBORN!」の世界は、もしかしたらつながっているのかもしれません。九ノ瀬宙太たちが活躍する世界のどこかに、並盛町はあるのかもしれません。そう想像してみるのも楽しいことです。

アニメも、そして原作も、ファンが愛したキャラクターや世界をそのままにして、未来を描かず作品が完結したため、ファンの心の中では、今もあの日のまま、沢田綱吉と仲間たちが生きていると思えるのです。

アニメ放送開始から10周年を迎えて、今年の4~6月には「家庭教師ヒットマンREBORN!」Blu-ray BOXが発売されます。また、原作者の原画展「天野明展」が、昨年夏の東京に続き、京都で1~2月に開催されます。根強い作品人気は、「エルドライブ【ēlDLIVE】」のアニメ化でまた再燃しそうです。


(文・やまゆー)

家庭教師ヒットマンREBORN! Blu-ray BOX 1

(C) 天野明/集英社・テレビ東京・リボーン製作委員会

おすすめ記事