【アニメコラム】キーワードで斬る!見るべきアニメ100 第13回「ユーリ!!! on ICE」ほか
アニメファンの飲み会というのは得てして、大喜利というか連想ゲーム的なものになりがちだ。「○○には××なシーンが出てくるよな」と誰かがひと言いえば、ほかの誰かが「××なシーンといえば△△を忘れちゃいけない」と返してくる。アニメとアニメはそんなふうに見えない糸で繋がれている。キーワードを手がかりに、「見るべきアニメ」をたどっていこう。
「ユーリ!!! on ICE」はフィギュアスケートが題材。物語の縦軸になるのは、メンタルの弱い特別強化選手・勝生勇利と彼のコーチとなったヴィクトル・ニキフォロフの関係だ。
勇利は23歳。実力はあるもののメンタルが弱く、初出場したグランプリファイルで大敗。久しぶりに故郷の九州・長谷津へと帰郷する。故郷のリンクであこがれのヴィクトルのプログラムを滑る勇利。その動画がネットにアップされ、その動画を見たヴィクトルは、現役を引退し、勇利のコーチになることを申し出る。
ヴィクトルは、世界選手権5連覇をなしとげたリビング・レジェンド。自分が愛され尊敬されることを当たり前のことのように受け止めて生きているタイプ。メンタルの弱い(つまり自己評価が低いほうへふれがちな)勇利とは正反対のタイプ。だから勇利とヴィクトルの思いには若干の距離がある。
そんな2人の大きな転機となったのは、第7滑走「開幕グランプリシリーズ やっチャイナ!!中国大会FS」。
SPで1位発進した勇利だが、緊張のあまり夜も眠れず、ヴィクトルに昼寝を命じられても寝られない。ヴィクトルも、勇利のメンタルがよくない状態なのは理解しているが、どうやったら勇利のモチベーションがあがるのか、まったくわからない。
ここでヴィクトルはなんと、ならいっそ勇利のガラスのハートを砕いてみるか、と無謀にも逆療法を試す。このあたりがいかにもヴィクトルらしい。勇利がもしフリーで失敗して表彰台に立てなかったら、自分が責任をとってコーチを辞める、とさらに勇利を追い込む。ついに涙を落とし始め、自分が負けたらコーチ引き受けてくれたヴィクトルに迷惑がかかるから不安なんだと訴える。
「泣かれるのは苦手なんだ。こんな時、どうしたらいいのかわからない」というヴィクトルに、勇利は「僕が勝つって、僕より信じてよ! 黙ってていいから……離れずにそばにいてよ!!」とついに思いをぶつける。
2人の思いのすれ違いはここで頂点に達するのだが、ここからの展開がおもしろい。
勇利の涙にうろたえるヴィクトルを見て、勇利は逆に冷静になるのである。ここでこれまで不均衡だったヴィクトルと勇利の精神的関係がようやく並ぶことになる。ヴィクトルに愛されることが、逆に不安につながっていた勇利だったのだが、これを期に、勇利は自分をちゃんと愛してくれなくては困る、と考えるようになる。
この精神的位置関係の変化が、プログラムの始まる前に、勇利が頭を下げたヴィクトルのつむじをつつくという演技に現れているのである。ここが「ユーリ!!! on ICE」のクライマックスのひとつだったのは間違いない。
ことほどさようにコーチと選手の関係はドラマチックだ。というわけで今回は「コーチ」をキーワードに作品を選んでみた。
「コーチ」といえば絶対にはずすことができないのが「エースをねらえ!」の宗方仁コーチ。「エースをねらえ!」は、コーチが地味な選手に無限の可能性を発見するというストーリーの原型ともいえる作品だ。
宗方仁は、余命が限られた中で、日本のテニス界を担って立つ選手として、テニスを始めたばかりの岡ひろみを見出す。宗方の意図もわからないまま、厳しい練習を課せられたひろみ。やがて2人は、強い精神的絆で結ばれていくことになる。
「エースをねらえ!」はTVシリーズ2作、劇場版と3回映画化されており、宗方とひろみの関係は基本的には変わらない。が、ここではドラマの凝縮力という点で「劇場版 エースをねらえ!」をおすすめしたい。
この宗方仁のキャラクターにオマージュを捧げた(パロディ?)のが「トップをねらえ!」のコーチことオオタ・コウイチロウだ。
オオタ・コウイチロウは、限られた時間の中で宇宙怪獣に対抗できるガンバスターのパイロットを見つけ出すことを自分の使命としたキャラクター。そして劣等生だったタカヤ・ノリコが抜擢される。タカヤ・ノリコを導く先輩、アマノ・カズミとコーチの恋愛が描かれるところも注目点だ。
卓球を題材にした「ピンポン」もコーチと選手の関係がポイントになっている作品。
幼なじみのスマイルとペコは片瀬高校卓球部。ペコは自分が天才なのを疑わない天然タイプ。スマイルは、内気で無口だが卓球は強い。さまざまなライバルと出会う中、2人はそれぞれの才能を伸ばそうとするコーチに鍛えられることになる。
スマイルのコーチになるのは、卓球部の顧問の小泉丈。英語教師なので、セリフに英語が交じるのが特徴。いっぽう、ペコを鍛えるのは、田村卓球場でペコたちが幼いころから卓球を教えてくれたオババ。いつもタバコをふかして、ぶっきらぼうに喋る。2人のコーチに鍛えられ、2人は2年の県大会に挑む。
コーチと選手は運命共同体。だが精神的にはコーチが優位だが、実際にプレイをするのは選手である。この非対称な関係が、さまざまなドラマを生み出すのだ。
(文/藤津亮太)
(C) はせつ町民会/ユーリ!!! on ICE 製作委員会
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