色彩設定・松山愛子 ロングインタビュー!(アニメ・ゲームの“中の人”第9回)

アニメ・ゲーム業界の第一線で活躍するクリエイターたちにインタビューを行い、仕事の流儀や素顔に迫っていく本連載。第9回は色彩設定の松山愛子さん。松山さんは「ああっ女神さまっ」、「アマガミSS」、「僕は友達が少ないNEXT」、「学戦都市アスタリスク」といった、数々のヒット作の“色”の統括責任者。当インタビューでは経歴、影響を受けた作品、目標とする人、仕事のこだわり、色彩設定に求められる資質能力、今後の目標など、さまざまな面からお話をうかがった。

「ユンカース・カム・ヒア」のような、人の心に残るアニメを作りたい

─本日はどうぞよろしくお願いいたします。最初に、松山さんが影響を受けた作品を教えていただけますか?


松山愛子(以下、松山) アニメ映画の「ユンカース・カム・ヒア」(1990)です。友達に誘われて3、4度観に行ったのですが、どこの映画館で観ても感動して泣くんですよね。それから「アニメでもこんなことができるんだったら、私も人の心に残るアニメを作ってみたい」思うようになり、アニメの仕事に興味を持つようになりました。


─目標とされる方はいらっしゃいますか?


松山 一番初めにいろいろと教えてくださった中山久美子さんです。作る色がとっても素敵なんですよ。今でも私は技術的に全然追いつけていないと思います。


─お仕事を始められてからは中山さんの作品に影響を?


松山 中山さんが色彩設定をされた「マクロスF」(2008)は「すごいなぁ」、「流石だなぁ」と思いました(笑)最近は「クラシカロイド」(2016)などで活躍されていますね。

色彩設定は「色に関わることにはすべて関わっていく仕事」

─基本的な質問で恐縮ですが、色彩設定というのはどういうお仕事なのでしょうか?


松山 簡単に言えば、「色に関わることにはすべて関わっていく仕事」です。作品によっては美術や特殊効果についてもお話しさせていただくことがあります。


─時代による業務内容の変化はございますか?


松山 仕事を始めたころは、アナログのセル画とデジタルが混在していた時期だったのでデジタルを扱える人は少なかったですね。たとえば、美術がまだデジタル化していなければデジタルに取り込んだものを調整する、といったこともやっていました。今は細分化されています。

AICでキャリアを磨く

─キャリアについてうかがいます。アニメの専門学校には通っておられたのですか?


松山 代々木アニメーション学院の仕上げ科に1年通って、セル彩色を学びました。セル画のことが中心の内容で、デジタル彩色のコースは翌年からできたようです。現場でやっている先生も大勢いらしたので、実践的なスキルを身につけることができました。


─ご卒業後、入社されたのがAICさんですか?


松山 そうですね。当時、AICにはまだデジタル彩色のスタッフがいなくて、私は新規立ち上げスタッフの1人として採用されました。学校ではセル彩色を主に学びましたが、デジタルも勉強していたので応募したんです。


─AICさんが第一志望で?


松山 私はAICしか受けてないんですよ。アニメを作りたいから、アニメの専門学校に通ったのですが、実はあまりアニメを観ていなかったんです。どの会社で何を作っているかよくわかっていなかったんです。そんな中、代々木アニメーション学院で教わった市村勇先生が偶然AICの方で、「AICを受けてみたら?」と言ってくださり、応募したら受かったのでそのまま入社しました。


─デジタル彩色のポートフォリオは、どのようなソフトウェアを使用して作られたのですか?


松山 代々木アニメーション学院で使っていた「PaintMan」です。「アニメの現場で使っているものをすぐ使えますよ」というアピールにもなりました。


─最初はどういったお仕事を?


松山 「ロードス島戦記-英雄騎士伝-」(1998)の仕上げです。セル彩色だけでした。そんなに枚数を塗れていないから、名前は載っていないと思いますよ(笑)


─初期キャリアの方の目標枚数というのはあるのでしょうか?


松山 1日50~60枚を目安にしています。当初は「将来的にはデジタルに移行するから」という部署であり、細かいるルールのようなものありませんでした。完全デジタルに移行するようになり、採算なども考え目標が作られるようになりました。


─「ロードス島戦記」では、1日に何枚くらい塗られていたのですか?


松山 セルに絵具で塗っていたので、10~20枚くらいでした。


─入社してすぐに中山さんからマンツーマンで教わっていたのですか?


松山 セルのころは、多くの先輩たちから教わりました。中山さんとはデジタルになってからお会いしました。

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