春アニメ「アトム ザ・ビギニング」、原作漫画家・カサハラテツローが語る「鉄腕アトム」と本作の関係

2017年春スタートのTVアニメ「アトム ザ・ビギニング」より、原作漫画を手がけるカサハラテツローさんのインタビューが公開された。



「アトム ザ・ビギニング」は、「月刊ヒーローズ」で連載中のマンガ作品で、手塚治虫さんが生んだ永遠のヒーロー“鉄腕アトム”の誕生までを描く物語。手塚眞さんの監修のもと制作されており、「鉄腕バーディー」のゆうきまさみさんがコンセプトワークスとして企画原案を、「RIDEBACK」のカサハラテツローさんがマンガ制作を担当している。
TVアニメは総監督を「踊る 大捜査線」「PSYCHO-PASS サイコパス」の本広克行さん、監督を「モーレツ宇宙海賊」の佐藤竜雄さん、シリーズ構成を「BLOOD+」の藤咲淳一さんが担当する。
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今回、公開されたカサハラテツローさんへのインタビューでは、企画の始まりや「鉄腕アトム」との関係性などが語られている。

また、本作ではAIの来るべき未来を描くため、松原仁さん(公立はこだて未来大学教授)、栗原聡さん(電気通信大学教授/人工知能先端研究センターセンター長)、山川宏さん(ドワンゴ ドワンゴ人工知能研究所所長)、松尾豊さん(東京大学特任准教授)といった、最先端でAIを研究する4人の専門家が監修に入ることも発表された。
松原さんは、「子供の頃にアトムのアニメを見て、天馬博士やお茶の水博士に憧れてAIの研究者になった自分が、若いときの彼らを主人公にしたアニメに関わることができて感慨深いです。若い天馬やお茶の水に憧れてAIやロボットに興味を持ってくれる人が出てくれるとうれしいです」と語っている。

以下、カサハラさんのオフィシャルインタビュー。

【オフィシャルインタビュー】

――カサハラ先生はどういう経緯で参加されたのでしょうか。

カサハラテツロー(以下、カサハラ) 僕は「ヒーローズ」編集部の依頼がきっかけですね。ゆうき先生が作られた基本設定、それから一部のネームやプロット案がいくつかあり、それをもとにマンガを描いてほしいと。その段階では天馬とお茶の水の学生生活がメインでした。プロット案にも恋愛話があったりして、そういう方向性でしたね。

――A106はいなかったそうですね?

カサハラ そうです。A106は、編集部から「『ヒーローズ』という雑誌なので、この設定のままで、ヒーローが活躍する話にしてほしい」という注文があったから登場させました(笑)。実は、こんな感じで、当初からいろいろ条件が決まっている企画だったので、最初は引き受けるかどうか迷ったところもありました。でも、AIの世界ではディープラーニングなど、新しい動きがありましたし、さらに連載開始は2015年になる、と。2015年といえば「アトム」とも縁の深いTVアニメ「ジェッターマルス」('77)の舞台です。これは「鉄腕アトム」をリブートするとしたら、神様が用意してくれたとしか思えないタイミングだな、と。それで、力足らずかもしれないけれど、ほかの人に描かれるぐらいなら、自分で描きたい!と決意したんです。

天馬とお茶の水によって開発されたロボットA106のアクションも本作の魅力の一つ。

A106のライバル的な存在のロボット、マルスも登場する。


――カサハラ先生は「鉄腕アトム」をどんな作品だと考えていますか?

カサハラ 子供の頃に読んだ時は素直に少年ヒーローものとして読んでいました。でも今回改めて読み直したら、「手塚先生はずっとアトムを描き続けていたんじゃないか」という気持ちになりました。たとえば「ブラックジャック」。あれは死にかけた間 黒男(はざま くろお)という男の子が、ツギハギされることで再生される物語でしょう? しかもパートナーになるピノコも、人工的に命を与えられたキャラクターです。あと映画「火の鳥2772 愛のコスモゾーン」('80)に登場するオルガ。オルガは主人公ゴドーの育児ロボットなんですが、ゴドーの母であり同時に恋人でもある。彼女もまた人間になりたいロボットなんです。つまりオルガもまたアトムなのではないかと。こんなふうにあらゆる手塚マンガに「アトム」の要素が入っているのは、「虐げられている命なきものに、命を吹き込んでいく」ということなんだと思います。

天馬とお茶の水の研究テーマ「ベヴストザイン・システム」により自我という概念を与えられたA106は他のロボットとの会話を求めるようになる。

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