【アニメコラム】キーワードで斬る!見るべきアニメ100 第14回「けものフレンズ」ほか
アニメファンの飲み会というのは得てして、大喜利というか連想ゲーム的なものになりがちだ。「○○には××なシーンが出てくるよな」と誰かがひと言いえば、ほかの誰かが「××なシーンといえば△△を忘れちゃいけない」と返してくる。アニメとアニメはそんなふうに見えない糸で繋がれている。キーワードを手がかりに、「見るべきアニメ」をたどっていこう。
2017年1月期は「けものフレンズ」が大きな話題を集めた。「○○なフレンズなんだね!」というフレーズがここまでネットを席巻すると放送前に予想した人は少ないだろう。
本作の舞台はジャパリパークと呼ばれる施設。美少女化された動物たちがそこで暮らしている。記憶を失った主人公は、知り合ったサーバルなどの力を借りて、自分の正体を知るために施設内にある「図書館」を目指していく。
フレンズと呼ばれる、美少女化されたさまざまな動物キャラクター(ツチノコのようなUMAもいる)のかわいらしさ、というのが作品のセールスポイントとして想定されていたはずだ。それはそれとして確かに魅力的にできてはいるけれど、話題を呼んでいるのは、むしろキャラクターの背景に垣間見えるSF的な部分だ。
主人公はどう見ても人間だが、フレンズたちは“人間”という概念がないらしい。ジャパリパークは実質廃墟同然の状態である。こういった断片を見ると「人類滅亡後に、美少女化された動物たちがポスト・ヒューマンとして生き延びている世界」(かもしれない)という妄想を止めることは難しい。
この独特の世界観を支えているのが、セルルック3DCGで描かれたキャラクターたちだ。
エイゼンシュテインは、手描きアニメ―ションの「どんな形にもダイナミックに変化してしまう力」を「原形質性」と呼んだそうだ。これはつまり煎じ詰めれば、手描きアニメは線の組み合わせに過ぎないということであり、実はそこに生命感が宿る秘密がある。
3DCGで描かれたキャラクターはそうではない。仮想空間の中にしっかりとした空間を占めており、「どんな形にもダイナミックに変化する」ことはない。むしろ「変わらなさ」こそが3DCGの長所であり短所である。
フレンズたちは、「その動物の習性」と「そこから連想される性格付け」をベースに行動している。1種族1人と縛りがあるようだから、その動物の習性はそのままそのキャラクターの個性に一直線で結び付けられている。その結果、各キャラクターの言動は記号的でアイコン化されたものになっている。
アニメの原形質性から遠く、アイコン化された性格を与えられたキャラクターというのは、その人工性ゆえに、人間から遠い存在に感じられる。
というわけで、今回は「3DCGで描かれたキャラクター」をキーワードに考えてみたい。
「けものフレンズ」のアニメーション制作を手がけるヤオヨロズが2013年から2015年に手がけていたのが「てさぐれ!部活もの」シリーズだ。
これはセルルック3DCGのキャラクターたちが、「新しい部活動のあり方を考えるための部活」という設定で、「あるあるネタ」を披露したり「大喜利」を展開したりしていた。いわゆる「日常系4コマ作品のアニメ化」のパロディであると同時に、そのギャグ部分だけを濃縮した“いいとこどり”でもある。
この作品のおもしろさは、キャラクターの会話が決められたセリフからはずれ、キャストのフリートークで展開している部分も少なからずあるところだ。そして実は、このフリートークからにじむキャストの“人間くささ”が、セルルック3DCGキャラに人間味を与えているのである。
この「人間味の有無」(それは演技の巧拙とは関係ない)が非常に人工的な「けものフレンズ」と「てさぐれ!部活もの」を分けるポイントになっているのだ。
ちなみに「てさぐれ!部活もの」が採用している3DCGキャラ+フリートークという鉱脈を掘り当てた極初期の作品が「gdgd妖精s」(ぐだぐだフェアリーズ)だ。同作、妖精の森に住む3匹の妖精、ピクピク・シルシル・コロコロを主役に、彼女たちがテーマトークをしたり、シュールな映像を見て即興でアフレコをしたりする。
ご存知の方も多いと思うが、一部スタッフや制作体制が変更されながらも、「gdgd妖精s」から「けものフレンズ」までスタッフ的にはほぼ一直線につながっている。その意味でも「けものフレンズ」が(ゲームと連動したメディアミックス企画とはいえ)、フリートークとそこから生まれるギャグを廃した意味は大きい。
3DCGキャラクターが原形質性を持たず、どこか人形のような不気味さを持っているということでもある。この不気味さを、シュールなギャグに落とし込んだのが、「ポピーザぱフォーマー」だ。
キャラクターは、見習いクラウンの「ポピー」と仮面を被った謎の動物「ケダモノ」がメイン。爆発やキャラクターの切断、射殺などが普通に登場するかなりブラックな内容だが、3DCGキャラクターのもつ人形っぽい硬質な感じが、残酷性というよりシュールな味を際立たせて、それがギャグになっている。
3DCGキャラクターは今、かなり手描きに接近しつつあるが、実は「可能性」という点でいうなら、道はそれだけではないのである。
(文/藤津亮太)
(C) けものフレンズプロジェクト/KFPA
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