サンライズメカ×美少女「サン娘」はどのように誕生したのか? プロデューサー&著者へ直撃インタビュー!
「機動戦士ガンダム」「装甲騎兵ボトムズ」など多くのヒット作を生み出してきたアニメーション制作会社・サンライズが運営するWebサイト「矢立文庫」(#)。サンライズ社内に眠る企画たちの“お蔵出し”がコンセプトだというこのサイトで、2017年1月より連載がスタートした「サン娘 ~Girl's Battle Bootlog 」は、サンライズロボットの力を借りて戦う少女たちの姿を描く話題作だ。
⇒「矢立文庫」、サンライズロボの力で戦う美少女たちの物語「サン娘」ほか個性豊かな4作品の第1話を一挙公開!
今回アキバ総研では、そんな本作のプロデューサーであるサンライズ・池谷浩臣さんと小説の著者である金田一秋良さんにインタビュー。企画の立ち上がりやコンセプトなど、まだまだ謎の多い本作についていろいろとお話をうかがった。
「サン娘」に“レイズナーちゃん”が出ない理由──なぜ擬人化を選ばなかったのか
──「サン娘 ~Girl's Battle Bootlog 」(以下、サン娘)の企画がスタートした経緯について教えてください。
池谷浩臣(以下、池谷) 最近、女の子×メカという作品は数多くありますが、サンライズもそれに乗り遅れまいとしてやった……わけではなくて(笑)。
私もロボットものが好きでサンライズに入社して20年以上、制作進行やデスク、プロデューサーとしてやってきたのですが、その折々で「サンライズのロボットを使って何かできないのか」というお話になることが多かったんですね。「サン娘」も、そんな話の中で出てきたアイデアのひとつなんです。
──アイデアが具体的な形となったのはいつごろなのでしょう?
池谷 2015年ぐらいでしょうか。サンライズのメカと女の子を組み合わせるというコンセプトをどのように世に出していくのか、いろいろな方とミーティングをしました。その期間がずいぶん長かったですね。
──河口編集長からは「矢立文庫」の企画スタートが2016年春ごろとうかがっていますので、その当時は小説の企画というわけではなかったんですよね。
⇒サンライズがWebサイト「矢立文庫」を運営するわけとは? 「矢立文庫」編集長・河口佳高に聞く【前編】
池谷 はい。アニメやゲームなど、この企画を形にする方法はいくつも考えましたが、やはり新しい試みですし、賛同も批判も受ける可能性のある内容かと思っていたので、まず何とかして世に出してみるということが必要だと考えました。
幸運にも矢立文庫というサイトが立ち上がりましたので、まずはそこでやってみようということになりまして。矢立文庫での連載の形も、ビジュアルストーリーだったりマンガだったり、いろいろな表現方法があったと思うんですが、女の子たちの日常や楽しい会話などをガッツリとみせたかったので、そうであればやはり小説かな、と。
──そこで金田一さんにお話がいったわけですね。
金田一秋良(以下、金田一) はい。共通の知り合いから紹介されたのがきっかけですね。僕はこれまでソーシャルゲームやコンシューマーゲームといったゲーム関連のライターの仕事を中心にやっていたのですが、その中でサンライズの仕事をなさっているライターさんとご一緒させていただく機会がございまして。それが縁で今回のこの「サン娘」に参加することになりました。
──金田一さんが、「サン娘」企画について初めて聞いたときの印象を教えてください。
金田一 非常にキャッチーな企画だと思いましたね。最近は擬人化作品を目にすることが多くなってきましたが、もしその元ネタがすでに誰もが知っているサンライズのロボットアニメだったら、絶対に盛り上がるのではないかと感じました。
また、僕自身も「伝説巨神イデオン」などサンライズアニメが好きでしたので、ぜひやってみたいと思いました。
──昨今のアニメ・ゲーム業界の流れを考えたときに、擬人化作品になるのが自然に感じますが、あえて「サン娘」を擬人化作品としなかった理由とはなんでしょうか?
池谷 擬人化された「レイズナーちゃん」や「ザンボット3ちゃん」が出てくる方向性に需要があるだろうなとは感じていました。ただ「サン娘」については単純にサンライズのロボットが好きだというファンの方以外にも手に取ってもらいたいと思っていて、そうなると純粋な女の子のかわいらしさはもちろん、女の子が女の子としてどのように活躍するのかが重要なのではないかと考えました。なので、女の子がロボットの力を借りて戦ったり事件を解決したりするいっぽうで、女の子の日常であったり学校生活をきちんと作品には盛り込んでいきたいと思って、あえて擬人化という方向性は避けることにしました。
金田一 日常生活をしっかりと盛り込めるのは、サン娘があくまでアーマーを装着した女の子というコンセプトだからこそできることですよね。
池谷 擬人化作品もたくさんありますし、それぞれの作品性もあると思いますが。もちろんそういった日常だけではなく、サンライズロボットが戦わないでどうするんだと(笑)。そう思いまして、金田一さんにはバトルシーンもしっかりと描写していただいてます。
──そうして描かれる女の子たちの日常ですが、現在はクラス内の人間関係を含めてややシリアスな展開ですよね。
金田一 もちろん、女の子たちにワイワイさせることを中心とした“日常もの”にするという選択肢もあったと思うんです。でもせっかく人間としての彼女たちが登場するのであれば、楽しさだけではない、さまざまな経験を通して登場人物たちが成長していく“青春もの”としての側面も描いてみたかったんです。
──なるほど。ところで「美少女×メカ」というジャンルの中でも腕をメインにしたデザインというのはかなり珍しいと思います。Dアームのアイデアはどのように生まれたのでしょうか?
池谷 キャラクターデザインを担当してくれた射尾卓弥さんには既存の擬人化作品に近いコンセプトにならないよう発注しました。基本的にサン娘状態のキャラクターにはそれぞれコスチュームを着せることは決定していたのですが、ロボのパーツをどうするのか発注までにいろいろと考えましたね。いろいろな方と相談したり、射尾さんとも何度も会いました。最終的には、射尾さんからエッグパーツのアイデアが出て、そこから腕を出しましょう、ということになりました。
そのときに元となったロボットの腕のデザインをそのまま使用せず、だけどひと目見て元のロボットがわかるデザインにしてほしいという無茶振りをしてしまいましたが、射尾さんのおかげでどれもいいデザインになったと思います。ザンボット3なんかは肩にツマ先のパーツがあったりして、そういった部分を見てもらうのも面白いと思います。
ザンボット3(上)をモチーフにしたサン娘・神月楓。Dアームの各部にザンボット3らしい意匠がちりばめられているほか、ザンボットバスター風の髪留めなど、コスチュームも作品をイメージしたデザインとなっている
──金田一さんはこちらの設定を見たときの印象はいかがでしたか?
金田一 すごく面白いと感じました。それに「サン娘」は小説作品ですから、読者の方のイメージに頼る部分も大きいので、あまり複雑なデザインや凝ったギミックを設定しても伝わりにくいと思うんです。であれば逆にこういった特徴的な1パーツがあって、それを使って戦闘が展開するほうが読者にもわかりやすいのかな、と思いました。
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