【アニメコラム】キーワードで斬る!見るべきアニメ100 第15回「リトルウィッチアカデミア」ほか

アニメファンの飲み会というのは得てして、大喜利というか連想ゲーム的なものになりがちだ。「○○には××なシーンが出てくるよな」と誰かが一言いえば、ほかの誰かが「××なシーンといえば△△を忘れちゃいけない」と返してくる。アニメとアニメはそんなふうに見えない糸で繋がれている。キーワードを手がかりに、「見るべきアニメ」をたどっていこう。


TVアニメ「リトルウィッチアカデミア」の主人公は、ルーナノヴァ魔法学校で魔法を学ぶ学生・アツコ・カガリ(アッコ)。幼いころ、シャイニィシャリオの魔法ショーを見て魔女に憧れたアッコは、やる気は十分だが、実力は全然足りておらず、いつも空回してばかり。ルームメイトのロッテやスーシィを巻き込んでの大騒動になってしまう。でもアッコはいつもケロリとしたもの。悪気がなくて(純粋で)、失敗をすぐに忘れてしまう(いつも前向きな)のがアッコの長所なのだ。

本作はもともと文化庁による若手アニメーター育成プロジェクト「アニメミライ2013」の参加作品として制作された1編がもとになっている。若手アニメーター育成事業とは、実制作を通じて経験の浅いアニメーターの育成を行おうというもので、2010年から始まり、現在も「あにめたまご」の名称で継続している。
同プロジェクトは、原則オリジナル企画が対象となっており、制作プロダクションが企画を応募すると、審査のうえ、毎年4社4作品が選ばれ制作される。完成した作品は、制作プロダクションが活用することができる。

「リトルウィッチアカデミア」の場合、英語字幕付きでYoutubeにアップしたところ、世界各地のファンが大熱狂。続編を望む声があがったため、クラウドファンディングを実施。これが目標金額を数時間で達成し、最終的に終了までに目標金額の約4倍にあたる62万5000ドルが集まった。こうして2015年に公開されたのが続編「映画 リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード」だ。

つまり「リトルウィッチアカデミア」はそれ自体が、短編からTVシリーズへと“成り上がって”いくという、ひとつのサクセスストーリーを秘めた物語なのだ。「アニメミライ」の時に若手アニメーターとして参加していた半田修平さんが、TVシリーズではメインキャラクターデザインを担当しているのもドラマチックなポイントのひとつだ。
ちなみに、TVシリーズは、お話を仕切り直し、前2作とは無関係に、アッコがルーナノヴァ魔法学校に入学するところからストーリーを始めているので、前2作を見なくても楽しめるようになっている。

というわけで今回は若手アニメーター育成プロジェクト初のアニメ作品をご紹介。なかでもTVやパッケージソフトなどで接することのできる作品を取り上げていこう。

「リトルウィッチアカデミア」と同年の「アニメミライ2013」に登場したもうひとつの作品「デス・ビリヤード」。若者と老人が、謎のバーに置かれたビリヤードで、命をかけた勝負をするというハードな内容は、同プロジェクトの中でも1.、2を争う異色さだった。
この「デス・ビリヤード」の設定を生かして始まったのが2015年から放送された「デス・パレード」だ。

謎のバーを訪れたお客が、死のゲームへとチャレンジされるという設定を踏まえつつも、TVシリーズは、その終盤で、ゲームを見続けてきたバーテンダー・デキムの心へと迫っていく内容となった。また「デス・ビリヤード」の時から、デキムの側にいた黒髪の女が何者かもついに描かれることになった。ドライな始まり方をしながらも、最後は「人間とは何か」という感動的なドラマになっているのが本作の特徴だ。なお、第11話「メメント・モリ」では本格的なフィギュアスケート描写があるのも見どころのひとつ。

また、同プロジェクトは過去に「アニメミライ2013」と「アニメミライ2013」が映像ソフト化されただけで、そのほかの過去のプロジェクト作品を見ることはなかなか難しい。

そんな中で「リトルウィッチアカデミア」と並んで単体で映像ソフト化されたのが「アニメミライ2014」の「アルモニ」だ。

主人公の本城彰男は高校生。一番興味があるのは昨晩のアニメのこと、というオタク。だが彰男はずっと、社交的な友だちに囲まれたクラスメイト・真境名樹里のことが気になっていた。ある日、思わぬことがきっかけとなり彰男は真境名樹里の世界に触れることになる。真境名樹里は決して彰男が思っているような女の子ではなかった。
学校を舞台にした地味な生活芝居の連続だが、これもまた育成プロジェクトらしい題材選びといえる。

育成プロジェクトらしいといえば「アニメミライ2012」の作品「わすれなぐも」は、アニメーター学習用iOSアプリ「アニメミライプラス2 『わすれなぐも』Full」として販売されている。走りや歩きなど8つの基本の動作に対し、本編で使われたカットが自在に見られるようになっている。(無料のlite版もある)。

同プロジェクトは今年も継続しており、3月11日には「ちゃらんぽ島(ランド)の物語」(スタジオコメット)、「RedAsh -GEARWORLD-」(STUDIO4℃)、「げんばのじょう-玄蕃之丞-」(日本アニメーション)、「ずんだホライずん」(ワオ・コーポレーション+スタジオ・ライブ+SSS合同会社)の4作品がお披露目された。

これら4作品は4月22日から4月28日まで、テアトル新宿にてレイトショー上映される予定だという。興味のある方はぜひ足を運んでいただきたい。


(文/藤津亮太)

(C) 2017 TRIGGER/吉成曜/「リトルウィッチアカデミア」製作委員会

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