それは40年の絆の奇跡。伝説一歩手前の声優ユニット「FULL Kabs(水島裕、井上和彦、三ツ矢雄二)」解散ライブレポート

2017年2月25日(土)夜、東京・科学技術館サイエンスホールにて、声優ユニット「FULL Kabs」の解散ライブが行なわれ、惜しまれながら有終のラスト公演を飾った。



「FULL Kabs」は、「サイボーグ009」(1979) 島村ジョー役や「キャンディ・キャンディ」(1976)アンソニー・ ブラウン役などで知られる井上和彦さん、「六神合体ゴッドマーズ」(1981)明神タケル役や「ときめきトゥナイト」真壁俊役などで知られる水島裕さん、「超電磁ロボ コン・バトラーV」(1976)葵豹馬役や「タッチ」(1985)上杉達也役などで知られる三ツ矢雄二さんという、長い間声優道を歩んできた友人でもあるベテラン声優3人が結成した声優ユニット。水島さんが中心となって、みずからランティスの井上俊次社長に企画書を持ちこんでデビューが実現したというから驚きだ。「古株」と掛けた「FULL Kabs」というネーミングは、「レジェンド・スリー」の仮ユニット名を打診された三ツ矢さんたちが「まだレジェンドとは呼ばれたくない(現役にこだわりたい)」と難色を示したことから、俳優であり声優でもある戸田恵子さんが命名したとのこと。ステージで3人は「グリコ(戸田さんの愛称)が命名してくれたんだ」と語り、同じ時代を駆け抜けた声優同士の友情の深さをうかがわせた。

イベントオープニングの映像演出では、2017年を示していたデジタル時計が時代を巻き戻り、井上さん、水島さん、三ツ矢さんの生まれた日付と共に3人の子供時代のプライベートフォトを表示。再び時計が現代に戻る「バック・トゥ・ザ・フューチャー」的な映像演出だが、これは三ツ矢さんが同作で主人公マーティ・マクフライ役の吹き替えを担当したゆえの遊び心だろう。

ステージに登場した3人は、オープニングナンバー「キャンディ・キャンディ」を披露。井上和彦さんのうっとりする美声、水島さんの表現力豊かな、どこか歌謡曲的な歌唱、そして「三ツ矢雄二」さん以外の何者でもありえない個性の塊のボーカルと、歌声は面白いまでに三者三様。元々は堀江美都子さんが高い音域で可憐に歌った楽曲を3人が低音で聴かせても違和感が全くないのは、3人の強い存在感あればこそだろう。

オープニングトークで水島さんが「いよいよ解散コンサートとなりました! デビューコンサートからずっと見守ってくれたお客さんが多い」と語り、井上さんが「トリオを組んで長いのに、あっという間だなという気がする」と続けたが、会場は笑いのムード。それもそのはず、実はFULL Kabsは昼の部が「デビューコンサート」、夜の部が「解散コンサート」という、コンサート活動期間半日のユニットなのだった。

ユニットとしてはデビュー直後とはいえ、メンバー1人ひとりはこの道40年以上の達人ばかりで、客席もまた長い期間彼らを追いかけてきたファンが多い。それだけにトークも、遅れてきた観客をいじったり、隣の日本武道館で行われている某ロックバンドのライブをネタにしたり、今度は三ツ矢さんが台本をベッドに忘れてきたことをいじったりと脱線しっぱなし。だが客席も憧れの3人のトークをいつまでも聞いていたいというようになごやかなムードだった。

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