【アニメコラム】アニメライターが選ぶ、2017年冬アニメ総括レビュー! 「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」「けものフレンズ」など、5作品を紹介!!
2017年春アニメが続々とスタートする中、3月にフィナーレを迎えたTVアニメを総括レビュー。全50話で少年兵たちの戦争を描いた「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」、「月刊ビッグガンガン」の人気コミック原作の「ACCA13区監察課」、戦記ファンタジー小説を映像化した「幼女戦記」、冬アニメの話題作「けものフレンズ」、4月からは女性向けバージョンもオンエア予定の「One Room」をピックアップしました。
2人のヒロインがいるアニメでは、どちらが主人公を射止めるのかに注目されがちだ。しかし本作ではヒロイン同士がタッグを組み、主人公のすべてを奪おうとするガンダム・バルバトスとの間で争奪戦を繰り広げる。恋のライバルは同性ではなくガンダムなのだ。
悪魔の名を持つバルバトスは敵機のパーツを取り込んでパワーアップする凶悪なモビルスーツ。略奪の対象はパイロットにまで及び、機体の性能を引き出した三日月・オーガスは視力と運動機能を失ってしまう。このままでは三日月がどこかに行ってしまうのではないか……。心配したヒロインたちは三日月を繋ぎ止めておくために、彼の子供を望むようになる。
エピローグには三日月と瓜二つの息子が登場し、あの大きな目は継承されるために存在していたのかと気付かされる。ヒロインたちはバルバトスと同じようにパーツを受け継いで、子供を2人で育てることによって戦いに勝利したのだ。勝ちヒロイン・負けヒロインという区別のない結末が爽やかな後味を残す1作。
13の自治区を持つドーワー王国の平和は統一組織・ACCAによって守られていた。ACCA本部監察課のジーン・オータスは各区の視察中にクーデターの噂を耳にする。そして自分が13区をまとめるパイプ役として疑われていることを知る。
自治区はそれぞれの特色が強く、まったく違う国のように見えるほど。背景美術には各区の魅力が凝縮されており、のどかな畑が広がるファーマス区、豪雪地帯のビッラ区、カジノのネオンが煌びやかなヤッカラ区など、いずれも存在感を持って描かれている。唯一の回想エピソードである第8話はシーンごとに統一された色使いが印象的。キャラクターは背景に溶け込むように表現され、どこかノスタルジックな出来映えとなった。ジーンが視察先で食べるおやつはどれも美味しそうで、旅行アニメとしての見どころも多い。
30代のサラリーマンが金髪碧眼の幼女に生まれ変わり、そのうえ悠木碧の声色まで備えているというアニメファンの夢を具現化した本作。しかしながらストーリーは夢からはほど遠く、世界大戦期のヨーロッパに似た異世界で血みどろの死闘に巻き込まれてしまう。銃火器に加えて魔法が実在しているのがポイントで、空を翔る魔導兵が史実と異なる歴史を生み出していく。
「幼女の皮をかぶった化物」と称される主人公 ターニャ・デグレチャフの過激なセリフが最大の見どころ。「神よ…… 貴様を切り刻んで豚の餌にでもしてやる!」など、バラエティ豊かな罵詈雑言が視聴者の快感を誘う。EDテーマ「Los! Los! Los!」にはターニャの演説が収められており、歌声だけでなく罵声も堪能できる。飛田展男が演じるマッドサイエンティストも流石のひと言で、キャストの熱演が光っている。
キャラクターの魅力と知性は反比例する。アホであればあるほど愛おしい。何もない場所で転んだり、宿題を忘れて廊下に立たされたり、いい歳してサンタを信じていたり……。そんな天然ボケやドジっ娘たちを見ているだけで不思議と多幸感に包まれ、世界はまた一歩平和に近付いていく。だがあまりにアホ過ぎると「この子の将来は大丈夫なのだろうか?」と余計な考えが浮かんでしまう。先人たちはこの宿命に悩まされ続けてきた。
本作はそんな難問を「動物がヒトの姿に変身している」という設定だけでクリアした点が素晴らしい。文字が読めなくても、箱の蓋が開けられなくても、服のまま温泉に入っても、元々は動物なのだから仕方ない。どんな問題行動もありのままに受け入れられる。それに動物だからといって狩りができなくても大丈夫。ジャパリまんがあるから飢える心配はないのだ。今は安心してキャラクターの魅力に浸り続けたい。
アパートの隣に引っ越してきた受験生・花坂結衣、1人暮らしの兄のもとにやってきた中学生・桃原奈月、幼ななじみのシンガーソングライター・青島萌香。ヒロインと2人っきりの室内で育まれる3編のオムニバスアニメは、主観ショットをメインに構成されており、ヒロインに直接話しかけられているようなドキドキ感を味わえる。
勉強を教えている最中に眠ってしまったり、模試で失敗して不安げな表情を浮かべたりと、ヒロインの細やかな仕草がキュートで、作品世界にグイグイ引き込まれる。しかし会話中にも関わらず相手の胸や唇がクロースアップされることで、「主人公はスケベなのでは?」という疑念が頭をよぎる。さらに素足や太ももを映したフェティッシュな光景が挿入され、その疑いは確信に変わる。「こんな男に騙されてはダメだ!」とヒロインをいましめようとした瞬間、本作が「主人公=あなた」という疑似体験アニメであることを思い出してしまう。そのいやらしい視線こそ、ほかならない私そのものなのだ。
(文/高橋克則)
(C) 創通・サンライズ・MBS
(C) オノ・ナツメ/SQUARE ENIX・ACCA製作委員会
(C) カルロ・ゼン・KADOKAWA刊/幼女戦記製作委員会
(C) けものフレンズプロジェクト/KFPA
(C) SMIRAL/「One Room」製作委員会/「Room Mate」製作委員会
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