映画「BLAME!」公開記念インタビュー! 第2回「BLAME!」のサウンドにおけるキーマン瀬下監督、吉平副監督、岩浪音響監督インタビュー!

瀬下寛之監督や吉平“Tady”直弘副監督、岩浪美和音響監督など「シドニアの騎士」のスタッフが再び集ったポリゴン・ピクチュアズの最新作「BLAME!」。映像化不可能といわれたこの作品を、いかにして劇場版作品として作り上げていったのか。また、ドルビーアトモス上映も用意される本作のサウンドについて、本作のキーマンとなる瀬下監督、吉平副監督、岩浪音響監督にインタビューさせていただくことができたので、その様子をお届けしよう。


──まず、2017年5月20日から公開される本作「BLAME!」劇場版は、原作ファンのあいだでは映像化は不可能だろう、といわれていた作品と聞いていますが、そんな“難関”に挑んだきっかけというのはTVアニメ「シドニアの騎士」があったからでしょうか?

瀬下監督(以下、瀬下) もちろん「シドニアの騎士」を作ったことが根底にありますが、それだけではなく、弐瓶勉先生ご本人に深く監修に携わっていただけたことが最大の要因だと思います。でなければ、「BLAME!」のような伝説的な作品には手が出しづらかったと思います。

吉平副監督(以下、吉平) 原作の単なるトレースになってしまい、初めて「BLAME!」を見てくださる方や従来のアニメファンに賛同を得られない可能性もありますし。

瀬下 我々としては、アニメならではの表現を盛り込んでいきたいと考えるのですが、原作のイメージを逸脱しているような内容になってしまっては本末転倒ですし。弐瓶先生ご自身がこれだったらやりたいと思える表現を、我々スタッフとともに作り上げていったことが、この作品の実現と完成に繋がったのだと思います。


吉平 結果として、チーム全体が自信を持って作り上げることのできた作品です。「シドニアの騎士」のスタッフの多くがそのまま制作に携わったので、次は「BLAME!」と聞き、スタッフ全員がモチベーションをさらに高めることができたのも事実ですが。

──映像に関して、特にこだわった部分はどのあたりでしょうか?

瀬下 弐瓶勉先生の原点であり、そのエッセンス、「BLAME!」ならではの世界観をどうやって映像化するかという事、そのものですね。閉ざされた空間の空気感のようなものをいかに臨場感を高めて表現できるか、また、光と影、明暗の落差が大きいヴィジュアルとなるため、それをどういった映像様式にまとめ上げるか、そうやってすべての場面がこだわり抜いて作り上げたものばかりです。

吉平 いっぽうで、ゴリゴリのハードSFさと、今のアニメファンが違和感なく見られるようなポップさとの融合といいますか、両者をいかにバランスさせるかにも苦労しましたね。キャラクターデザインも背景も演出も、どういったものがベストマッチになるのかを探り続けました。

──そういった意図は、実際の映像からも感じられました。

瀬下 原作との比較と考えると相当ポップなイメージにできたと思っているのですが、一般的な視点であらためて見なおすと、やはり相当ハードなSF作品になっていると思います(笑)。

吉平 作品の立ち位置的には、「BLAME!」の世界観を知る入門編といいますか、ハードな「BLAME!」とのマリアージュを目指した作品という立ち位置にとらえていただけるとわかりやすいかもしれません。


瀬下 このバランスが本当に難しく、たとえば、主人公・霧亥(キリイ)は、原作ファンからすればしゃべりすぎ、と思う人がいるかもしれません。しかし我々からすれば、全然セリフがないと思ってしまうレベル。こんなにしゃべらない主人公でどうしよう、と悩みました(笑)。結果的には、菅野祐悟さんの音楽や、岩浪音響監督が作り上げてくれた絶妙な音響デザインなどによって、沈黙の場面でも感情の動きがしっかりと感じられるような、そんな仕上がりになってくれました。

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