「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第二章」上映記念インタビュー第4回!「2202」が描くテーマとは? 羽原信義監督×福井晴敏インタビュー【後編】

待望の「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」の第二章「発進篇」が、現在、全国劇場で絶賛上映中だ。




旧作「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」、「宇宙戦艦ヤマト2」を下敷きにしつつ、「宇宙戦艦ヤマト2199」の正統な続編として制作された本作は、「2199」第9話、第19話にて演出・絵コンテとして参加した羽原信義さんが監督を務め、「機動戦士ガンダムUC」のストーリーを手掛けた小説家・福井晴敏さんがシリーズ構成を務める大作アニメである。

今回、本格的に物語が動きだした第二章をより深く読み解くための、裏話とメッセージをおふたりにたっぷりと語っていただいた。

ヤマト、抜錨!
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「2199」は311震災以降の物語

――今作の「2022」は「2199」から3年が経った世界とはいえ、アンドロメダの同型艦5隻や「波動砲艦隊」といった大軍拡をするには短い期間です。それを「時間断層」(地球を再生する「コスモリバースシステム」の副作用で生じた「時間が現実の10倍早く進む空間」)で辻褄を合わせたのはスゴイなと。あの発想はどこから?

福井 これはちょっと経緯がありまして。俺が提出した企画とは別の流れで、羽原さんのほうでも「2199」を受けた続編を、脚本に入られた岡秀樹さん(映画「ウルトラマンサーガ」監督)と2人で作っていたんですね。ようやく企画の概要が固まって、はじめて顔合わせしたときに、「こういうものを作りました」と出された資料の中に、「時間断層」ってアイデアがあったんですよ。双方が全く違う構想を持ち寄った形になって、いろいろなことを考慮してこちらの案で行くことになったんですけども、羽原さんサイドで作っていた「時間断層」は絶対に役立つだろうと。それで、こちら側に組み込ませてもらった感じですね。

――時間断層は「3年で大艦隊の建造」という時間の整合性だけでなく、「地球政府とガミラスが結託して隠していた闇」でもありますね。

福井 あれはリアルに考えていくと怖いものなんですよね。あれがあることで、何ができちゃうんだろうって。それは、これから先々の展開でも見せていくつもりです。

羽原 あれで、より地球とガミラスとの癒着が、明確にビジュアルでわかる感じになったのはよかったですね。

――「2199」の時間軸上では、旧作「さらば」と違ってガミラスが滅亡せずに存在するから可能になったと。それにしても、「地球とガミラスとガトランティス」という構造は、旧作より複雑ですね。

羽原 そこは福井さんも、すごく苦労されたと思います。三勢力出てくるから描き方が非常に難しくなるんですよ。

福井 逆にいうと、三つ巴にしないようにがんばりました。それをやっちゃうと、本来の「ヤマト」のテイストと違ってきちゃうところがあるので。むしろ日米同盟のメタファーとして「地球とガミラス」を使おうとしましたね。

──前編でも話題に出ましたが、「波動砲の封印を解く」ことがドラマの大きな軸となっていますね。

福井 波動砲問題は原発のメタファーとして使おうということで。昨年の「シン・ゴジラ」がそうでしたが、「ヤマト」もやっぱり「日本が大きな経験をしたあとに、それを自分のなかで昇華してどうやってカタルシスにするか」という物語なんですよね。旧作の「ヤマト」は、日本が昔の第二次世界大戦で負けた後に「戦争はダメ」という言葉が独り歩きした時代を生きてきた若者たちが、「なぜ戦争はいけないのか」を実地で体感できたことが、非常に大きかったと思うんですよ。初代の「ゴジラ」も東京大空襲であったり、故郷が蹂躙された人達の経験を、映画の中で再現してカタルシスにする。その背景があったから、ブームも起こったと思うんです。

──巨大な共通体験を持つ人達にとって「もうひとつの現実と、その回答」が映像化されることには感動があり、先に進む力にもなりますよね。

福井 もう戦争って遠い昔になって、我々の世代は見たことも聞いたこともないものになっている。でもいっぽうで大震災が起こって、そういう大きな出来事にカタルシスをもたらさなければいけない時代がまた来ている。そういう前提があっての「2202」であるし「シン・ゴジラ」だと思います。「2199」の上映は震災以降なんですが、企画自体は遥か前から進んでいたので、決してそういった状況を受けたものにはなってなかった。今回は、企画の立ち上げ自体が震災後なので、そこをガツッととらえて、昔の「ヤマト」が広く受け入れられた構造をきちんとやろうという感じですね。その意味で言うと「2199」が残した宿題であったり、元々の「さらば」が構造として持っていた設定もけっこう使えた。それに加えて、俺の中から出てこなかった「時間断層」というアイデアも組み込めましたし、やっぱり時代の後押しってあるんだよね。その意味じゃ、「2202」はこれから跳ねていけるんじゃないかなと思います。

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