【アニメコラム】キーワードで斬る!見るべきアニメ100 第19回「ボールルームへようこそ」ほか
アニメファンの飲み会というのは得てして、大喜利というか連想ゲーム的なものになりがちだ。「○○には××なシーンが出てくるよな」と誰かが一言いえば、ほかの誰かが「××なシーンといえば△△を忘れちゃいけない」と返してくる。アニメとアニメはそんなふうに見えない糸で繋がれている。キーワードを手がかりに、「見るべきアニメ」をたどっていこう。
足を踏み入れたダンススタジオには、同級生の花岡雫も通っていた。多々良が自分と同じく将来に悩んでると思っていた彼女は、実はアマチュアランキング1位のダンサーでプロを目指していた。そして借りたDVDを見たことで、多々良は社交ダンスの魅力に触れる。ハートに火がついた多々良は仙石の下で、ダンスのレッスンを始めることになる。
第1話の見どころは、仙石が多々良の前でステップの手本を見せるシーン。仙石の長い足が、振り子のようにぐっと振り出され、それに引っ張られるように上半身がグイっと動いていく。付けPANでダイナミックに描かれる仙石の動きの緩急が心地よく、ダンスを知らない視聴者にもそのカッコよさがひと目で伝わってくる。
魅力的なのは動いているカットだけではない。止め絵で見せるカットも、キャラクターの長い手足を生かした印象的なシルエットで描かれていて、華やかな雰囲気が見事に表現されている。キャラクターの首が長いのも、全体のシルエットのシャープな印象につながっている。アニメ化されたことで、色や動き、そして音楽が加わって、社交ダンスのかっこよさが一層伝わるようになっているのだ。
というわけで今回のキーワードは「ダンス」。アイドルを題材にしたアニメも多いし、オープニングやエンディングで踊っている作品も多いが、今回はそういう“ダンスが登場しそう”な枠組みからちょっとはずれたダンス作品をセレクトした。
「トライブクルクル」は、ヒップホップダンスを題材にした作品。放送時間が日曜朝のキッズ向け作品だが、これは平成24年度(2012年度)の学習指導要領改訂により、ダンスが必須科目化され、フォークダンス、創作ダンス、ヒップホップダンスの中からどれかひとつを授業で行うようになったことが背景にある。また子供の習い事としてヒップホップダンスがポピュラーな存在になっているのも理由のひとつらしい。
主人公の飛竜ハネルは、ダンス好きの中学1年生。小柄なハネルが出会ったのが、音咲カノンという背の高い少女。2人はチームを組んで、人気ダンスチーム・トライバルソウルとダンスバトルに挑む。やがてハネルとカノンは、そのトライバルソウルのメンバーとチームを組むことになる。こうして生まれたダンスチームが「TRIBE COOL CREW(トライブクルクル)」なのだ。
キッズものといっても、あまり超常の要素は入れず、適度にケレン味を加えつつも、地に足の着いたスタンスでヒップホップダンスを描いているのが本作の特徴。番組では実際のダンスチームが登場してヒップホップダンスを披露する実写コーナーもあり、その点でも、地に足のついた形でヒッピホップダンスに親しんでもらおうという趣旨が明確な作品だった。
「ボールルームへようこそ」と「トライブクルクル」に共通するのは、ダンスで競い合うところ。両作はそういう意味では「スポーツもの」のバリエーションでもある。
けれど、いかにうまく踊るか以前、楽しくってなぜだか体が動いちゃう、ということもまたダンスの本質ではないだろうか。
そんなことを考えさせられるのが「夜明け告げるルーのうた」。つい先日、アヌシー国際アニメーション映画祭でクリスタル賞(グランプリ)を受賞した映画だ。
この作品に登場する人魚のルーは音楽が大好き。中学生の男の子カイが作った音楽が流れるとルーの尾びれは2本の足になって、華麗なステップを踏み始める。それを見ていた人間たちも、頭は冷静でも、足が体がどんどん動き出してしまう。地方の港町を舞台に、ルーとカイの出会いが思わぬ出来事を巻き起こすことになる。
ダンスというのは、みずからの感情の解放であり、そこに身を任せることこそ。踊ることなんだということが実感できるのが同作だ。
そして最後に紹介するのは「ポッピンQ」。
こちらに登場するのは、主人公・小湊伊純を始め、それぞれに後悔を抱えた5人の中学生。彼女たちは“時のかけら”を拾ったことで、時の谷へと迷いこんでしまう。その時の谷の危機を救うため、彼女たちはポッピン族に教えてもらいながら、世界を救うためのダンスを覚えていく。主人公たちがかわいらいしい衣装と振り付けでもって踊るだけでなく、小柄で丸っこいポッピン族もその小さい手足を振り回して踊り、その姿もとても魅力的に描かれている。
見知らぬ相手と徐々に親しくなりながら、自分の後悔と向き合っていく伊純たち。ここでもダンスは――世界を救うだけでなく――心の解放と深く結びついているのだ。
(文/藤津亮太)
(C) 竹内友・講談社/小笠原ダンススタジオ
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