史上初! およそ半世紀にわたる日本のロボット玩具史を辿る大著「ロボットアニメビジネス進化論」発売! 著者・五十嵐浩司インタビュー

2017年8月17日に発売された「ロボットアニメビジネス進化論」(光文社)が、大きな話題を呼んでいる。同書は、「マジンガーZ」、「勇者ライディーン」、「機動戦士ガンダム」、「超時空要塞マクロス」、「トランスフォーマー」、「勇者エクスカイザー」をはじめとするロボットアニメと、その玩具・模型に関するビジネス史をまとめた、史上初の「ロボットアニメ玩具の歴史書」である。

著者は、幼少期より数多くの玩具に触れ、今はアニメーション研究家・ライターとして第一線で活躍する五十嵐浩司さん。彼の知見に裏付けられた正確なロボット玩具の歴史と、深い洞察が本書では展開している。

そんな日本の玩具史において重要な一冊となった本書を執筆した五十嵐さんに、自身の玩具とのかかわりや、本書を通じて訴えたいメッセージについてうかがった。



正しい日本のロボット玩具史を伝えるために


──今回の本のコンセプトは?

最初に作った「超合金ポピニカ大図鑑」(グリーンアロー出版社)からちょうど20年、私もいろいろな本を出してきましたが、これまでのロボット玩具の専門書は、メーカーごと、カテゴリごとの歴史の本が大半で、それらをちゃんと年代順に並べて歴史をまとめたものはないし、やはり正しく伝わっていないことが多々あったように思います。

ただそういうのはネットで調べても正しい情報が出てこないこともあるし、当時のスタッフの方のインタビューでなんとなくの記憶で話されていることもあるので、一度年代順にちゃんと追っていけるものは作らないといけないなと思っていました。

今回の本では自分が生まれる前のことも書いていますが、基本的には私が5歳の頃、「ガッチャマン」と「マジンガーZ」の頃から始まり、物心ついて以降おもちゃ屋さんでどんなものを見てきたかという記憶、体験から構成されています。

──玩具がアニメのマーチャンダイジングとして重要視され始めた頃に、五十嵐さんも玩具に興味を持った。

たまたまですけどね。時代としては、1972年にはポピーの仮面ライダーの変身ベルトやミニサイクロン、タカラの変身サイボーグ1号の変身セット(仮面ライダーやウルトラマンのスーツを着せて変身させるアクションフィギュア。ベースは「ニューG.I.ジョー」)が同時に出てきた頃です。この頃、急速におもちゃがリアルになってきました。玩具がテレビに出たものに近づこうとする潮流があり、ちょうどその頃から「そういうものがどうやら売れるらしい」というマーチャンダイジングのシステムもできあがっていったのです。

それまでの「ウルトラマン」や怪獣のソフトビニール人形がちょっとうまくいかなくなってきたところに、バンダイグループの端っこにいたポピーが、「仮面ライダー」や「マジンガーZ」の玩具でドーンといくと。そしてリカちゃんの会社だと思われていたタカラ「も変身サイボーグ1号」や次の「ミクロマン」でドーンといった。つまり、玩具業界の勢力図が変わり始めた時期なんです。

その結果、最初から「テレビに出てくるもの=商品として作ればいいんじゃない?」という発想が出てきます。玩具メーカーがデザインそのものにタッチするようになりました。ロボットだとまさに「勇者ライディーン」がその先駆けです。

ただリアルな物を作るためには、着色や造形などの技術力を上げないといけないじゃないですか。そこでいうとポピーもタカラも、お互いにどこまでかっこいいものを作れるか、という点でしのぎを削っていたんじゃないでしょうか。

──70年代のロボット玩具は、新しい作品が出るたびに新たなフックを用意しているというすごい時代でした。

そうですね。ポピーは腕を上げてロケットパンチをする「マジンガーZ」の翌年には、もう人型から鳥型に変形する「ライディーン」を作っている、というめちゃくちゃな時代でした。この時期、「超合金」ブランドが売れることで、もともとはバンダイの間借りメーカーだったポピーが、日本の玩具業界の中心にきてしまいました。

──ロボット玩具が日進月歩の進歩を遂げたこの時代の影響を受けた世代から、後に日本の技術力を支える人々が生まれたという可能性も……。

それはあると思いますね。影響を受けた人は多いと思います。

おすすめ記事