あえて立体的にしないキャラクターの味と風景の調和──「きみの声をとどけたい」インタビュー第3弾は伊藤尚往監督!

2017年8月25日(金)、アニメ映画「きみの声をとどけたい」が全国公開された。今回は、本作を手がけた伊藤尚往監督のインタビューを紹介する。



「きみの声をとどけたい」は、「時をかける少女」「ちはやふる」をはじめ、数々のアニメを手がけてきたマッドハウスが贈るオリジナル劇場アニメ。声の力、コトダマの力をテーマに、湘南にある小さな喫茶店のミニFM局と女子高生たちを巡る物語が描かれる。監督は伊藤尚往さん、脚本は石川学さん、キャラクター原案はゆるカワなデザインで知られる青木俊直さん。昨年夏に開催された「キミコエ・オーディション」から誕生した新人声優ユニット・NOW ON AIRと、三森すずこさんがメインキャストを担当している。

今回のインタビューでは、メインキャストを務めたNOW ON AIRの魅力や、映画制作の裏話を語っていただいた。

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オーディションから参加した「きみの声をとどけたい」プロジェクト

──伊藤監督は「オーバーロード」など、原作の持ち味を活かしたアニメ化を得意とされている印象がありますが今回、長編オリジナルアニメを手がけられた経緯を教えてください。

伊藤 個人的には、原作物であるかオリジナルであるか、という感覚はあまりありません。「きみの声をとどけたい」にしても、石川学さんの脚本であり、青木俊直さんのキャラクターデザインという元になるものがあって、そこから作っていくので。そもそものきっかけは、マッドハウスさんからこういう企画があるんですがというお話があって引き受けたところからです。やはり、オリジナルで長編をやらせていただけるというのはありがたい機会ですから。

──石川学さんとは以前から接点があったのでしょうか。

伊藤 石川さんがタツノコプロの出身で、自分もタツノコアニメ技術研究所にいたので、近くで仕事はしていたんです。そして、どんな仕事をされているかは知っていたのですが、直接ご一緒するのは初めてです。

──伊藤さんが「きみの声をとどけたい」に関わったのはどのあたりからなのでしょうか。

伊藤 プロジェクトとしては「キミコエ・オーディション」と一体になっていて、声というものを大切にした作品にすることはすでに決まっていたんです。そのオーディションに関しては早い段階から審査に関わって、自分も選考基準に意見を出していきました。

──プロジェクトをずっと見てきた立場として、作品作りで意見を出した部分はどのあたりでしょうか。

伊藤 6人の新人キャストを選ぶわけですから、それぞれにしっかりと見せ場を用意したいと伝えていました。しかし主演全員の出番や役割を単に均等にしたのでは、作品としては成立しないんですね。物語の構成上、あやめや乙葉のようにどうしても登場タイミングが後ろになってしまうキャラクターもでてくるんですが、その分あやめはキャラクター性を強くして印象的な登場をさせたり、乙葉には音楽という形での見せ場を作ったりと、バランスを取ることを意識していました。

──アフレコをご覧になってどうでしたか?

伊藤 NOW ON AIRのみんなはとてもがんばっていたと思います。この作品では4日間に分けてアフレコを行なったんですが、実はNOW ON AIRの6人に関してはその前に1日、本番を想定したスタジオレッスン日があったんです。また、それとは別に読み合わせもあったのかな。かなりしっかりとした準備をしたおかげで、いい演技をしてくれたと思います。

湘南の風景×青木俊直のビジュアルで魅せる特徴的な映像


──湘南がモデルとした美しい風景が印象的です。湘南という場所を選んだ理由はあるのでしょうか。

伊藤 まず海があって坂があって、海辺のミニFM局から病院に電波が届いて、といった条件がありました。もっともミニFM局をクリアに受信できるのはせいぜい100mとかの範囲ですから、厳密に考えると無理があるのですが(笑)。その分ラジオの放送機材などのリアリティはしっかりと調べてこだわっています。行ってみないとわからないので実際に現地のロケハンをしてみて、この感じなら何かしら違いがある絵を作れるだろうな、という手応えがあったので、このようになりました。

──作品のビジュアルはどのように作っていったのでしょうか。

伊藤 青木俊直さんの絵がとても印象的だったので、そのイメージを生かしたいと思いました。青木さんの作品の中に、イラストの人物と実写を合成した絵があって、その感じがとてもよかったんです。なのであまり人物を立体的にせず、そのまま背景に乗せていくほうがいいと考えました。

──精緻な背景と合わせるのに、立体的にしないというのは面白いですね。工夫などはあるのでしょうか。

伊藤 青木さんの絵と実写画像との合成が違和感なくおさまっていたイメージがあったので、成立するだろうとは思っていました。あまり影をつけず、ハイライトで輪郭を表現したりと工夫はしています。影に当たる部分の色への落とし方などにも気を使っています。平面的なよさを出しながらも画面から浮いてしまわないように、木陰から日向にでるような明暗差のある場面などは必然性がない限り避けるようにしています。

──最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

伊藤 いい作品に仕上がってるんじゃないかと思います。キャスト陣もすごくがんばってくれている作品なので、見ていただけたら嬉しいです。

(取材・文/中里キリ)


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