【アニメガタリズ特集】森井ケンシロウ監督が語る「アニメガタリズ」誕生秘話と作品に込めたこだわりとは?
2017年10月8日(日)よりTOKYO MXほかにて放送がスタートする完全オリジナルの秋アニメ「アニメガタリズ」。アキバ総研では放送を目前に控えて期待が高まる本作をピックアップ! キャストやスタッフ陣へのインタビューを中心に、作品に込めた想いや魅力などをお届けする。
⇒2017秋アニメ
「アニメガタリズ」は、劇場映画の幕間に上映されていたショートアニメ「アニメガタリ」の1年前を描いた作品で、「アニメガタリ」の監督である森井ケンシロウさんが初めて監督を務めた30分アニメだ。今回は森井監督に制作に至った経緯やこだわり、キャスト、音楽のことなどたっぷりとお話をうかがった。
一生に一度あるかないかのチャンスをやらない選択肢はなかった
――「アニメガタリズ」はどのような経緯で制作がスタートしたのでしょうか?
森井 TOHOシネマズさんの幕間でやっていた、「アニメガタリ」というショートアニメが昨年の春に終わりまして、その後、DMMがアニメレーベル「DMM pictures」を設立してアニメをやることになり、DMM.futureworksのオリジナル作品で下地のある「アニメガタリ」をふくらませようということになりました。それで監督をしていた僕に話が来た、というのがざっくりとした経緯です。「森井、30分アニメやる?」「やるやる!」というやり取りでしたけど(笑)。
――森井監督はこれまでショートアニメやPVを作られていましたが、30分アニメは初めてですよね。
森井 そうです。僕はもともと漫画家をやりつつアニメにも片足を突っ込んでいたという変な立場ではありましたが、30分アニメに自分が関わるとは思っていなかったんですよ。ただ、ここで躊躇したらもったいない、オリジナルの30分アニメなんて一生に一度やれるかどうかだと思ったので、やらないという選択肢はなかったです。
――そして前「アニメガタリ」の設定をベースに製作がスタートしたと。
森井 前作「アニメガタリ」は1分半の尺でひたすらマシンガントークをする作品で、たとえばロボットだったらロボットについて、作画崩壊だったら作画崩壊についてしゃべるアニメでした。ただ、それを30分アニメでやるのはきついので、コンセプトはそのままだとしても仕組みを考えなきゃいけないね、と話していたんです。
とはいえ、前作と全く繋がりがないのもどうかと思ったので、設定は引き継ごうかなと。前作の主人公である水瀬いのりさん演じる「マヤ」には「よくできたアニオタの妹がいる」という設定があったので、その妹にフォーカスしてアニメを作ってみようとスタートしました。
――今作の内容はどのように考えていったのでしょうか?
森井 最初に僕のほうからプロットというか流れを提案したんですが、やはり僕はショートアニメ準拠の考え方なので、最初に考えたプロットでは30分の1クール作品だと難しいということになり、そこからは脚本家の方々と一緒にブレストしながら作っていきました。でも、本読み(脚本会議)ではおのおのの好きなアニメについて脱線することが多くて(笑)。
――先行上映会でもそういう話をしていましたね。
森井 当日いらっしゃっていたシリーズ構成の広田(光毅)さんが「いや、お前が脱線しているんだろう」とずっと叫んでいたらしいです(笑)。僕から見たら、ほかの人たちみんな同じぐらい脱線していたと思うんですけど……。僕らがまず、どんなアニメが好きかという「アニメ語り」をしちゃうことが結構あって、1時間、2時間オーバーすることもざらにありましたね。
――だからこそ、作中にはいろいろなアニメのネタが登場するのですね。
森井 そうですね。漫画畑の僕が最初にアニメ業界にからんだのは、「鋼の錬金術師」第2期のエンディングをやらせていただいた時なんです。そこからはある程度アニメを見ているんですけど、最近のものだけにフォーカスするのも、逆に昔のものだけにフォーカスするのもバランスが悪いじゃないですか。そうは言っても好きなこと以外は語れないので、結局は僕らが好きなアニメの話になったと思います。
――ちなみに監督が語ってしまうようなアニメは何でしょうか?
森井 「鋼の錬金術師」以前の作品では「フリクリ」ですね。鶴巻(和哉)監督が好きで、アニメだけでなく漫画版も好きなんですよ。サブカルチャー好きとして湯浅(政明)監督の「マインド・ゲーム」も好きです。あと、トラウマという意味では小学2年生の時に親戚のお兄ちゃんと一緒に見た「AKIRA」が、しばらく脳裏にずっと焼き付いていました。1988年にこの作品が出たのって改めて考えるとすごいですよね。
割とストレートな作品(あくまで監督基準)の「ゲンジ通信あげだま」や「ナースエンジェルりりかSOS」なども見ていたんですが、その後はサブカル寄りになっていきました。なので、僕の根底にあるのはやはり「AKIRA」や「フリクリ」だと思います。ガイナックス作品では「トップをねらえ!」も最近Blu-rayで見てすごく面白かったです。
――それらの作品が、少なからず影響を与えているのですね。
森井 それはあると思います。でもその半面、僕が描いているのは4コマ漫画なので、4コマ漫画のテイストが強いかなと思うんですよ。ショートアニメは割と4コマ漫画のテンポに近いものがあって、ゆったり構えていると尺が終わってしまうので勢いで走り続けるというのが基本としてあります。
でも、30分アニメは違うじゃないですか。最初はショートアニメの走り方をしていたんですが、それってマラソンなのにスタートダッシュするようなものなので。僕は小学校のマラソンで一瞬だけでも目立とうと開幕ダッシュするほうだったこともあり、「アニメガタリズ」でもうぉーっと走ったらあっという間に息切れしちゃって。30分アニメは開幕ダッシュすると死ぬなと感じました(笑)。
アニメに対するリスペクトで作品を作りたい
――テンポ感のほかに、実際の製作でショートアニメとの違いを感じたことはありますか?
森井 打ち合わせです。ショートアニメは内部で全部作っていたので、初めて会う人と自分の作品を語り合うことはあまりなかったんです。でも、30分アニメの場合は「この作品はこうで……」と何十人に同じ説明をしないといけなくて。そこでまずくたばりました。オタクって人とのコミュニケーションが苦手なところがあるじゃないですか(笑)。僕も得意か苦手かで言ったら苦手なほうなんですが、監督はコミュニケーションを取らないといけない位置にいるので、そこがきつかったです。
なので、「ショートアニメと30分アニメの一番の違いは?」と聞かれたら「人との関わり方」と答えますね。本来であれば、監督をやる前に演出をやったりするんですが、僕は裏口入学みたいにいきなりポンと監督になっちゃったので、まずは30分アニメのルールや文脈を覚えなきゃと。「SHIROBAKO」見直して覚えようって(笑)。
――それは重要ですね(笑)。逆にショートアニメの経験を生かせたところもあるのでは?
森井 ショートアニメって短い尺なのでどうしてもオムニバス形式になることが多いんです。どのタイミングから見ても大丈夫で、興味を持ったら過去の話も見てもらえれば、というのが多いんですね。さすがに今作は2話を見て次は6話、というわけにはいかないですけど、あまり構えずに見てほしいというのは念頭に置いてやっています。
最近はアニメの本数が多くて、見る側も大変じゃないですか。僕らが小さい頃に見ていたアニメって、ちょうどそのタイミングに家にいればテレビをつけるぐらいだったと思うので、楽しみ方が重くなってきたと感じるところがあります。なので、もうちょっと気軽に見てもらえるアニメを作りたいという思いがありました。
――ショートアニメほどではないですが、気楽に見られる作品になっているのですね。
森井 もちろん縦軸としてのストーリーは進んでいくんですけど、毎話違ったテーマがあって、いきなり入ってもそれなりに楽しめるようにしています。とにかく見て面白い、引っかかりのある作品を作りたいなと。あと、今後しばらくは30分アニメをやらせてもらえないだろうなと思っていたので、ビックリするようなギミックも考えています。ストーリーにしても絵の演出にしても、ほかがやっていないというところに踏み込んでいるので、30分アニメとしては攻めている表現を要所要所に入れています。
――先行上映会で見た限りでもかなりすごい内容になっていましたが、さらなる飛び道具があると?
森井 そうですね。今はもう全話に着手していている段階なのですが、12話まで走り終わった後に前半の話数を見ると「この頃はまだアニメの枠組みに沿って真面目にアニメを作っていたな」と(笑)。そのぐらい後半はとんでもないことになっていきます。やっていくうちにどんどんエキサイトしちゃって、ていねいに積み上げていったものを自分たちで壊していくような流れになったといいますか……。そういうところも楽しんでもらいたいです。
――内容的には、第1話からちょっと謎めいたところも出てきますね。
森井 だんだんと謎も増えていきますが、やはりどちらかと言えば「アニメを語る」ほうがテーマになっています。そのテーマのうえで、自分たちが好きだったアニメのことをキャラに代弁してもらっているんです。ただ、アニメのキャラであれば「あそこのシーン面白かったよね」という話だけでなく、実体験としてすごいことが起こってもいいわけじゃないですか。なので、大変なことを彼らに体験してもらおうと思っています。
――キャラクターたちや本作の舞台は、どのようにして考えたのでしょうか?
森井 前作は大学のサークルが舞台で今作は高校になるんですけど、女子高生っていいよねと(笑)。ここは外せないだろうと。制服はみんなで趣味を話し合って、ジャケットの襟元はセーラー服っぽくなっているけど下はブレザーという、いいとこ取りをしています。
主人公の阿佐ヶ谷未乃愛は、この作品をアニメに詳しくない人にも見てもらいたいなと思ったので、アニメを全く知らない、見ていてもジブリ作品や「君の名は。」、というくらいの女の子にしました。企画書には「ジブリしか見ない」と書いていましたから(笑)。ただ、巻き込まれ型で「ザ・主人公」という感じの子ですね。その未乃愛の周りに「僕らが作品の中でアニオタをやるんだったら」「こういうアニメが好きで、こんな話し方をする人いるよね」といったステレオタイプを揃えようと思い、ベタな感じのキャラクターを登場させました(笑)。
――ちなみに、監督は何タイプですか?
森井 「ミーハータイプ」ですね。オタクの中には「誰も好きと言っていないけど俺はこれが好きなんだ」というような人もいると思うんですが、僕はネットとかで大多数の人がいいと言っているものを好きになって、安心してほかの人にも勧めちゃうタイプです(笑)。
――逆に、流行っている作品があると「この作品はここが違う、こうじゃないんだよ」と言う人もいますからね。
森井 そういう意味では、実はキャラクターの設定にこだわりがあって。意見の相違でぶつかることはあっても、基本的に「アニメに対してネガティブな発言をする人はいない」ようにしているんです。アニメを語る人たちの中に「このアニメはダメだ」という言い方する人がいるのはどうなのかな……というのが僕のテーマでもあるんです。やっぱりアニメに対するリスペクトで作りたいなと。なので、この作品に出てくるキャラは、否定から入るのではなくて「これが好き」と語れる人として存在しているんです。
――議論をしても否定はしないという感じですね。
森井 そうです。喧嘩することもありますけど、相手の好きな作品を「ダメ」と言っているのではなく、どこに重きを置くかで喧嘩しているんです。そういうことってありますよね。「3話切り」のような言い方もそうです。この作品のキャラたちは3話切りとかしないで、たとえば撮り溜めておいて優先順位は低いかもしれないけどちゃんと見る人たち、という描き方をしています。
――あくまで否定の方向はない、と。
森井 そもそも「切る」という話題自体に、今のアニメの本数の多さやアニメを見る人の疲弊している部分があると思うんです。時間がなくて優先順位をつけちゃうのは仕方ないと思いますけど、だんだんと「アニメを楽しんでいる」ところから離れていっているなと。
――義務感で見ている人もいますよね。
森井 そうなんですよ。それはそれでひとつの楽しみ方かなとは思うんですけど、Twitterで喧嘩している人などを見ていると、もっと肩の力を抜いて見られるアニメがあってもいいのかなと思って。だからこの作品は気楽に見てもらいたいです。
……今期の秋アニメは屈強な作品が多いですし(笑)。秋アニメのラインアップに正面からぶつかっていくと大変なことになるので、オリジナルアニメということでうまく隙間を切り抜けながら屈強な原作モノが立ち並ぶ中で生き抜けていけたらと思っています。
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