【犬も歩けばアニメに当たる。第35回】「Infini-T Force」熱い!カッコいい!タツノコ4大ヒーローがフル3DCGで共演

心がワクワクするアニメ、明日元気になれるアニメ、ずっと好きと思えるアニメに、もっともっと出会いたい! 新作・長期人気作を問わず、その時々に話題のあるアニメを、アニメライターが紹介していきます。

今回は、10月から放送中の「Infini-T Force(インフィニティ フォース)」を取り上げます。

オールドアニメファンにはことに懐かしい、タツノコ4大ヒーローたちがフル3DCGアニメで共演。タツノコプロ55周年記念作品として、テレビシリーズで放送されており、来年2月には劇場版公開も予定されています。

原作に親しんだオールドファンも心ときめく、新作の魅力をご紹介します。


40年の時を超えてよみがえったヒーローたち


1970年代にタツノコプロ(当時は竜の子プロダクション)が生んだアニメの人気ヒーローたちが共演するのが、本作の一番のお楽しみだ。

「科学忍者隊ガッチャマン」(1972年)から、ガッチャマン/鷲尾健。
「宇宙の騎士テッカマン」(1975年)から、テッカマン/南城二。
「破裏拳ポリマー」(1974年)から、ポリマー/鎧武士。
「新造人間キャシャーン」(1973年)から、キャシャーン/東鉄也。

それぞれの世界で仲間とともに悪と戦いぬいた伝説のヒーローたちが、現代の渋谷に時空を超えて呼び寄せられ、界堂笑(かいどうえみ)という少女を守って戦うことになる。

ヒーロースーツは、原作のウェットスーツのようなピッタリ素材に筋肉が浮き出たスタイリッシュな姿から、3DCGのプロテクターを装着したようなスタイルとなり、筋肉のつきかたがリアルになっている。しかし、カラーリングが原作に忠実なため、意外にも見ていて違和感がない。

モーションキャプチャーでリアルな人間の動きを取り入れて描くヒーローアクションは、特撮のスタイルに近く、ヒーロースーツのデザインともあいまってなかなかハマる。


原作ファンにはなつかしいフレーズに心が燃える


原作を知るファンが心つかまれるのが、劇中に登場する技、武器、アクション、そして声だ。往年の懐かしい画面のイメージが、CGと声の演技で再現される。

「バードラン!」
「ペガス、テックセッター!」
「ポリマーホーク!」
「超破壊光線……!」

第1話で、ガッチャマンが天空から斜めに飛び降りてくるシルエットは、原作のオープニング主題歌でストップモーションするタイトルカットと同じ。そして変身するときの、左手のブレスレットを顔の前にかざすポーズもかつてのままで、「バード……ゴー!」の言い方もそのまんまだ。懐かしさに、心が熱くなる。

3DCGアニメのビジュアルに違和感を感じる人もいるかもしれないが、旧作のファンは見る価値あり。かつてのファンがうれしくなる工夫が随所にほどこされている。


違和感が逆に興味をそそるCGキャラ


いっぽうで、原作ファンにとって違和感が大きいのが、ヒーロースーツを脱いだときの素顔の4人の見目かたち、そして性格設定だ。

CGで描かれた素顔のヒーローたちは、古く懐かしい2Dの原作とはまるで似ていない、現代風の頭身が伸びたイケメンになっている。性格も違う。しかも全体に年をくっている。

原作では16~18歳、ハイティーンの青少年だった。絵柄のために筋肉ムキムキで大人っぽく見えても、ハイティーン。これ、タツノコヒーローのお約束だ。

それが、この劇中では20~24歳の青年になっている。髪型も違う。ヒゲも生えている!

イメージとしては、かつての私たちが知っていた「彼ら」から4~5年後の姿、という感じだ。それは年もとるだろう。大人にだってなるだろう。大きな戦いを超えているのだから、落ち着いたり、変わったりもするかもしれない。

現代の渋谷という舞台に突然連れてこられた彼らは、いろんな意味で浮きまくっている。悪を憎む正義の心をふりかざされても、ヒロインのような現代っ子からすれば「何それ?」という感じだし、スマホもIHヒーターも知らない。

とはいえ、原作ファンとしては、姿や年齢設定が違うからこそ「同じだけど違うもの」として楽しめる安心感もある。

人気の4ヒーローたちは、それぞれにアニメの続編、リメイク新作、実写映画などなど、いろんなかたちで派生作品が作られてきた。原作が好きな人間からすると、「ここが違う」「あそこが違う」と言いたくなることもある。

そうした中で、本作のヒーローたちは、姿やアクションのカッコよさ、熱さ、魅力に懐かしさがあるからこそ、CGの人間キャラクターたちの「違い」を受け入れることができるといえる。


深読みすると原作とつながるイメージ


ヒーロースーツを脱いだ「彼ら」は、単に今風イケメンになっているというわけではない。深読みしていくと、それぞれが背負った物語や背景がチラ見えするようになっているところがおもしろい。

探偵稼業で、チャラくて明るい鎧武士(ポリマー)は、変身アイテムであるヘルメットが必須アイテム。1年前からこの世界に来ているため、パソコンやスマホに強く、情報集めが得意。マイペースな自由自在さが個性だ。

「おっさん」扱いされる鷲尾健(ガッチャマン)は、常に一体となった5人チームのリーダーとして戦ってきた。そのせいかチームプレーを疑わず、コミュニケーションに積極的で、責任感が強く、なにかと説教グセがある。

「教授」とあだ名される冷静な頭脳派の南城二(テッカマン)は、宇宙船の移民団の仲間たちがコールドスリープについた状態で、第2の地球を探しながらずっとひとりで過ごしてきた。変身シーンがとても痛そうで、初めて見る人は驚くだろう。

ナイーブな東鉄也(キャシャーン)は、生身の人間の身体には戻れなくなった悲しみをかかえている。食事をしても味はしないし、スーツを脱いだ姿もイメージを投影しているだけだ。ひとりだけ年若い姿なのも、おそらく身体が成長しないからだろう。

原作を知らない人は、「なんでそんな設定なんだろう?」と興味を持つ。原作を知る人は、「そういえばそうだった!」と記憶をくすぐられる。そんな仕掛けがいっぱいだ。

昭和を一身に背負っている感があるのが、ガッチャマンの鷲尾健だ。なにかと健が時代錯誤の「おっさん」扱いされるのは、おかしくも切ないものがある。口元にヒゲをたくわえたスタイルは、原作に登場した健の父親の面影のようにも思える。

あれこれ考えていくと、想像の余地が広がる。

そしてよく見ると、ツッコミどころも満載だ。

ガッチャマンの爆発する手裏剣バードランは無尽蔵だし、なにげに戦闘機やドリルに変身しているポリマーの変身能力は、改めてCGで見ると無茶すぎる。テッカマンのサポートロボット・ペガスは便利だな、やっぱり乗り物持ってると強い! キャシャーンが連れているロボット犬のフレンダーの変身も見たい……などなど。
原作を知らない人も知る人も、見れば見るほどおもしろみを感じる作りになっている。


渋谷は彼らには狭すぎる!? 今後の展開に期待


それぞれの世界で「人類を守るために」戦ってきた彼らにとって、現代の渋谷は小さな舞台だともいえる。今後、どんな活躍が見られるのだろうか?

登場する悪役は、次元を超えた野心を持つ謎の男Z(ゼット)。そしてZに付き従う異形のラジャ・カーン、色気のある青年ダミアン・グレイ、美女ベル・リンの3名だ。

Zは次元移動装置を開発し、あらゆる世界を渡り歩き、世界を滅ぼし続けているという。そして、探偵として鎧武士が調査するよう依頼されたのが、「Zはなぜ世界を滅ぼそうとしているのか?」。

物語が進むにつれて、敵が一枚岩でないことも、それぞれが異なる願いを持っていることもわかってきた。

鍵になるのが「ケース」と呼ばれる、持ち主の願いをかなえる最強の武器。このケースがなぜか界堂笑の手に渡ったことから、ヒーローたちは笑を守り、ケースを守っている。目指すのは、Zに滅ぼされた自分が元いた世界の復活だ。

しかし、すでにZと笑の関係が明らかになっていて、Zを倒せばすべて元どおりという話でないのは見えている。

ヒーローたちは、冷めた現代っ子である笑を変えることができるのか?
そして、最終的に何を相手に戦うことになるのか?

4人のレジェンドヒーローたちはいずれも原作で、家族の物語がとても濃かった。特にヒーローにとって父親の存在が大きく、運命を与えられたり、反発して乗り越えたりと、ドラマの上で大きな役割を果たしていた。これは40年前の作品ならではなのか。

本作は今後、どうやら笑と「父親」の話になっていきそうなので、そんな話もからんできたら楽しいだろうと思う。

そして、小難しいことは抜きにして、ヒーローたちが彼ららしくカッコいいところが見たいものだ。なんといっても、4人のヒーローの共同作戦や共闘は燃える!

本来の彼らの時代、仲間、メカニックから切り離されたところで、どんなヒーローの心意気を見せてくれるのかを楽しみにしたい。



(文・やまゆー)


(C) タツノコプロ/Infini-T Force製作委員会

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