ホビー業界インサイド第29回:アオシマが目指す“実車テイスト”の未来カーモデル、1/24アスラーダG.S.Xのフルスペック!

青島文化教材社(アオシマ)がアニメ「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」をプラキット化する……と聞いても、多くの人は「かなり以前からキット化していなかったけ?」と首をかしげるかもしれない。その通りなのだが、シリーズNo.20となる“1/24 スゴウ アスラーダG.S.X”は、従来のキットとはコンセプトが大きく異なる。OVAシリーズから「サイバーフォーミュラ」のメカ作画監督として本編に深く関わってきた重田智氏が開発に参加、アニメならではのデフォルメされたデザインを「カーモデルとして作るならこうなるのでは?」と、実車テイストの整合性と説得力を加味して、解釈しなおしているのだ。
企画を担当したアオシマの飯塚秀実氏、設計担当のユニテックの原章浩氏、そしてアニメーターの重田智氏に、「最新解釈のアスラーダG.S.X」キットのスペックをうかがった。


カーモデル開発のノウハウをキャラクターキットに投入


──アオシマさんが最初に「サイバーフォーミュラ」をプラキット化したのは、いつごろなんでしょうか?

飯塚 最初のOVA「新世紀GPXサイバーフォーミュラ11」(1992年)が発売されて、ある程度の人気が確立された頃です。シリーズの開始当初は、キャラクターキットとしての側面が強かったと思います。ディスプレイモデルではありましたが、外装だけを作った感じで、弊社の普通のカーモデルとは、ちょっとテイストが違いましたね。


──アオシマさんのサイトを見ると、2006年発売の「No.10 スーパーアスラーダ AKF-11 エアロモード」から「サイバーフォーミュラレーシングマシンの商品化再開」と書いてあります。

飯塚 90年代から続けてきましたが、弊社の中では「サイバーフォーミュラ」は波のあるシリーズなんです。2006年頃に第2期ブームが来て、3~4年前ぐらいから、再び「サイバーフォーミュラ」の既存キットが売れはじめたんです。OVAの時代設定が2016年なので、それも関係してるんでしょうね。最近になって、いわば第3期ブームが訪れたわけです。これまではOVA版のマシンをキット化してきましたが、時代設定とリンクしていることだし、いよいよテレビ版の初代マシン“アスラーダG.S.X”をキット化することにしました。ちょうど水素エンジンやAIナビゲータなど、劇中の未来技術が現実に近づいてきましたから、今風の実車の解釈を加えつつ、従来とは違うコンセプトのプラキットにしたい。
いっぽう、弊社では1/24スーパーカーシリーズとして、エンジンまで再現したカウンタックやアヴェンタドールを商品化してきましたので、そこで培われたノウハウもフィードバックしたいと考えました。サンライズさんからお借りした設定資料の中にエンジンの設定画もありますので、過去の「サイバーフォーミュラ」のプラキットとは一線を画したものができるだろうと思いました。


 とはいえ、「サイバーフォーミュラ」のプラモデルを買われる方は、スケールモデラーではなくアニメ作品のファンだと思いましたので、部品点数はなるべく抑えてあります。


──ホビーショーに展示された試作品を見ると、かなり細かく色分けされているようですが?

飯塚 ランナー単位で色分けし、素組みでデカールを貼れば劇中のイメージに近づくよう、キャラクターモデルとしての要素も残してあります。

──実車的な解釈が入っているとのことですが、フォルムは、アニメ設定とは違うのですか?

飯塚 だいぶ違います。

 実車モデルの横に置いても違和感のない、実在感のあるプロポーションを目指しました。

──アスラーダG.S.Xはウイングが可動するなどのギミックがありますが、そこはどうなっているのでしょう?

 可動のためのヒンジを入れたりすると、どうしても見映えが悪くなってしまいますので、ウイングは可動ではなく差し替え式です。今回のキットでは、設定に描かれている内部メカもなるべく再現し、組み方によっては完成後もパーツを外して見ることができるよう設計してあります。また、ホイールのデザインは非常にシンプルですが、ホイールキャップの奥に本来のホイールがあるのだろうと解釈しました。かといって、初代アスラーダがOVAなど続編シリーズのテクノロジーを超えてしまってはいけないわけです。そこで、作画監督の重田智さんにお願いして、プロポーションや細かな整合性に関して、具体的な提案をいただきました。

おすすめ記事