【本日発売】EPICAが「進撃の巨人」楽曲をシンフォニックメタルとして強力な形で生まれ変わらせた!「EPICA VS attack on titan songs」レビュー

2002年にオランダで結成されたシンフォニックゴシックメタル・バンド「EPICA」。
メタルでありながら金管・民族楽器やクワイヤも活用し、プログレッシブな要素も持ち合わせた楽曲は重厚にして華美。シンフォニックゴシックメタルの名にふさわしい音楽は世界中で支持されている。2017年4月には遅まきながら初来日を果たし、熱狂を持って迎えられた。
そのEPICAが初のカバーアルバムをリリース、それが「EPICA VS attack on titan songs」である。収録される楽曲はTVアニメ「進撃の巨人」のために制作された3曲と「紅蓮の弓矢」などが収録されているLinked Horizonの大ヒットシングル「自由への進撃」のカップリング曲の全4曲。手がけたのは全曲ともサウンドクリエイター「Revo」だ(リリースは彼が主宰する音楽ユニット「Linked Horizon」名義)。




EPICAによって再構築(カバー)された楽曲群を聴いていると、まるで別の世界線に存在するもうひとつの「紅蓮の弓矢」や「自由の翼」に出会ったような感覚を抱く。それほどまでに「進撃の巨人」楽曲という側面を失っておらず、メンバーが作品を愛しているという話も納得がいく。

そのうえで、シンフォニックメタルらしい大仰なまでに壮大さをまとった楽曲ともなっている。その一因はやはりボーカル力。ボーカルを務めるシモーネ・シモンズのメゾソプラノは美しく、引き連れる荘厳なコーラスとの親和性も高い。そのため、時に付き従うように、時に手を取り合うように、ソロに対するコーラスのポジションが目まぐるしく変わるものの、常に調和に満ちたボーカル空間を作り出す。しかもそこにグロウル(グラント、デスボイス)が登場することで、より完成度は高まる。メタルバンドにおける最大の特徴でもあるグロウルであるが、今回の楽曲たちにおいては「巨人」の存在感を表す最大のピースにほかならない。シモーネ&コーラスとの対比は、恐怖の対象との対峙を喚起させる。

さらには、ツインペダルによる高速ビートがもたらす効果も絶大。「進撃の巨人」楽曲の中で最大のヒット曲である「紅蓮の弓矢」では、「進撃の巨人」という壮大な物語の幕開けをも表現するかのように、始まりは劇伴音楽のようなアレンジが施されているが、すぐさまバスドラの連打が耳に届く。迫りくる巨人の足音と、調査兵団(主人公エレンたちが所属し、前線で巨人と戦う部隊)が駆る馬の足音が重なりを感じるだろう。中盤で差し込まれたシンセの速弾きもHR/HM感があるが、翻弄されながらも自分の生きる道を選ぶエレンの決意とともに焦燥感が感じとれる楽曲にもなっている。EPICAによるカバーでもエレンの存在を感じずにはいられない(余談だが個所は違っても「Jaeger」の語も曲中に登場する)。

「自由の翼」は、物語の焦点がエレンたちだけではなく、人類全体へと広がっていく際に主題歌として提示された楽曲だが、EPICAも冒頭は勇壮に、そしてブラストビートで苛烈になる「壁の外」との戦いを表している。また、主題歌ではない「もしこの壁の中が一軒の家だとしたら」を選曲したところも感嘆せざるを得ない。「進撃の巨人」は主人公であるエレンと親友アルミン(そしてミカサ)の冒険譚でもある、という面を表現した曲だが、シンフォニックな音から一転してメタルサウンドへと移りゆく様は非常に原曲とイメージを残しつつ、伸びやかなシモーネの歌唱も相まって、愛らしくも勇ましさを感じさせる楽曲となっている。そして「心臓を捧げよ」。シモーネがまるで熱弁を振るうように歌う個所もあれば、合唱が主軸となる個所もあり、より複雑に構成された楽曲を多層的に聴かせてくれる。特にサビはその勇猛さが、原作にその場面はないにも関わらず、調査兵団が声を合わせて歌う様を自然と脳裏に浮かび上がらせる。

1枚を通して聴き進めるとタイトルに「vs」とはあるものの、まるで「盟友」からの返歌のように感じ取ってしまう。Revoが(主題歌という枷のためか)成し得なかった方法によって、これ以上ない形で、「進撃の巨人」を楽曲で表現してくれたEPICA。物語のような起伏に富んだ楽曲構成、シンフォニックメタル要素を増幅させることで原曲の秀でた部分を再認識させてもくれる。作品愛という原曲の意思をも継承したという意味で、カバーという形に留まらない、それでいてまぎれもないカバーアルバムとなっている。EPICAの見事なまでの秀逸なパフォーマンスを味わってほしい。

(文/清水耕司)

【CD情報】

■EPICA VS attack on titan songs

・発売日:2017年12月20日

・価格:1,500円(税別)

・発売:ワードレコーズ

<収録曲>

1. 紅蓮の弓矢 / Crimson Bow and Arrow

2. 自由の翼 / Wings of Freedom

3. もしこの壁の中が一軒の家だとしたら / If Inside These Walls Was a House

4. 心臓を捧げよ! / Dedicate Your Heart!

5. 紅蓮の弓矢 / Crimson Bow and Arrow (Instrumental)

6. 自由の翼 / Wings of Freedom (Instrumental)

7. もしこの壁の中が一軒の家だとしたら / If Inside These Walls Was a House (Instrumental)

8. 心臓を捧げよ! / Dedicate Your Heart! (Instrumental)

<LIVEインフォメーション>

「EPICA VS attack on titan songs」東京1夜限定スペシャルライヴ

「THE ULTIMATE PRINCIPLE TOUR 2018」

オープニングアクト:Ayasa(ロック・ヴァイオリニスト)



2018年1月18日(木)

TSUTAYA O-EAST

OPEN: 18:00/ START: 19:00

チケット一般発売中

価格: 10,000円(税込、300枚限定直筆サインカード+CD『EPICA VS attack on titan songs』付)、7,500円(税込、チケットのみ)

[後援] bay fm「パワー・ロック・トゥデイ」

[主催] 東京音協 / ワードレコーズ

[総合問い合わせ] 東京音協 03-5774-3030

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