ノリの良さは子供の頃からのルーツ。アニメを楽しんできた血脈が生きる作品作り 「ブレンド・S」益山亮司監督×シリーズ構成・雑破業インタビュー
ウェイトレスがそれぞれ、ツンデレや妹といった“属性”を演じるコンセプト喫茶店を舞台に、ドS属性担当の桜ノ宮苺香がアルバイトに奮闘する姿を描いたコメディ「ブレンド・S」。キャラクターたちが喫茶店で演じる“属性”と彼女たちの本来の日常の姿を、キュートでリズミカルなアニメーションとして展開した。
原作をアニメ化するにあたってどのようなアプローチをしたのか、益山亮司監督とシリーズ構成の雑破業さんにお話をうかがった。お2人の丁々発止の対談模様をお楽しみいただきたい。また、本作が初監督となった益山監督のアニメ作りに向かう姿勢は、毎シーズン数多くのアニメが放送される昨今の状況において、制作現場のひとつの解法を示すスタイルではないかとうかがい知ることができた。
苺香のドS接客は鋭くガツンと見せたかった
──最初に、益山監督は「ブレンド・S」が監督デビュー作品となりました。以前から監督業にご興味がおありだったのでしょうか?
益山 実は、監督をやりたいと積極的に働きかけていたわけではなかったんです。今までの僕の仕事を見ていてくれた人が「作品が合っているんじゃないか」ということで今回、声をかけてくれました。原作を読ませていただいて、「ブレンド・S」の持つ作品の力を強く感じ、アニメーションとして動かすことでより原作の持つパワーが増すだろうと思えたので、お引き受けさせていただきました。
──雑破さんはどういった経緯で本作に参加されたのでしょうか?
雑破 以前、「エロマンガ先生」でこの作品のプロデューサーとお仕事させていただいたときに、「きらら作品なんだけど、萌えよりはギャグの切れ味が中心な感じの作品なので、君はお笑い担当なんだからひとつどうかね?」みたいな感じで(笑)。実際、原作を読むと、4コマギャグ漫画としてすごく面白くて、ぜひお願いしますという形で参加しました。益山監督とは、以前TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ」で助監督をされていたときに何度も顔を合わせて仕事ぶりを拝見していたので、特に心配もなかったです。
──シナリオ作りに関して、原作の中山幸先生とはどんな相談をされましたか?
雑破 シナリオはほとんど直しもなく、スムーズに進められましたね。中山先生や先生の担当者さんがマメに打ち合わせに来てくださったというのもあるんですけど、もしかしたら同じ関西ノリということで波長が合ったのかもしれません(笑)。
益山 中山先生も雑破さんも僕も、大阪の出身なんですよね。原作サイドとは良好なコミュニケーションがとれていて、こちらからも提案がしやすかったです。さっき雑破さんがおっしゃったように「ブレンド・S」は「きららタイトル」の中でもギャグ色が強く、ファンの皆さんもそこを求めているはずだと考えてイメージを広げていきました。
益山 単純にラブコメとしてもギャグ漫画としても原作のポテンシャルがすごく高いので、僕としては原作のよさをなるべく損なわないようにすることを一番に気にしていました。
──5人のメインキャラクター描写においてはどんなことに留意されましたか?
雑破 原作のテンポ感や切れ味をそのままアニメに持ち込もうとしたとき、最初のキーになったのはやはり苺香のドS接客でした。作品のキモですから鋭くガツンとやりたいのですが、声と動きがつくことで、良い意味でも悪い意味でも原作よりパワーが出る気がしていたんです。でもヌルくなっては面白くないですから、シナリオは原作をほぼ踏襲したままでお渡ししました。結果的に、かわいいキャラクターデザインと魅力的なアニメーションに仕上がっていて、作画や演出に助けていただきましたね。同じように、ひでりもけっこうアクの強いキャラクターですから、ヌルくはならないように気をつけました。登場するタイミングも後半の話数だったので、インパクトを出しつつ、ひでりのいいところを見せられるようにエピソードを構成した形です。
益山 僕からはキャストの皆さんに「切り替えの幅をしっかり出してほしい」とオーダーしました。なので、ドS接客のセリフは「もっともっとドSにしてください」と(笑)。苺香役の和氣あず未さんは初期に比べてドSにますます磨きがかかりましたし、夏帆役の鬼頭明里さん、麻冬役の春野杏さんも普段と接客時の差がうまく出せるようになっていって、みんなそれぞれにお芝居が上達している感じがいいなぁと思いましたね。
雑破 たしかに声優さんたちの力は大きかったですね。夏帆はツンデレという大きな武器があるんだけれど、普段と接客時のチェンジがそこまでドラスティックではない分、他のキャラに比べて普通っぽくなってしまわないかと少し懸念はしていたんです。でも、アニメーションの力で、とりわけ頑張って胸を揺らしていただいたこともあり(笑)、そしてキャストのちょっとした演技がキャラをとても魅力的にしてくれました。第3話でスティーレに同人誌の忘れ物があったとき、夏帆がこっそり本を見ようとするシーンがありましたよね。そこで誰に言うわけでもなく「失礼しまーす」というあの感じとか、別にシナリオ的には意図して置いているわけではないひと言にひと味足してくれたのがすごくよかったです。
益山 ちなみにそのセリフは「控えめな気持ちというよりは“ごめんなすって”みたいな気持ちでお願いします」と伝えたところでした(笑)。すぐにそのオーダーを消化して打ち返してくれたのはさすがでしたね。
雑破 ひでりも、シナリオを書いた時点ではあそこまでドラスティックに男女が切り替わるとは想像していませんでした。あれも益山監督がディレクションを?
益山 ここだけは変えてほしいという個所はざっくりとお願いしましたが、それ以外は徳井青空さんにおまかせでした。
雑破 微妙に男声と女声のあいだみたいな部分も出されていて、面白かったですよね。
益山 すごくいい芝居をつけてくれました。美雨役の種﨑敦美さんもむちゃくちゃお上手で、何も言わなくてもガッツリと料理した美雨をスっと出してくださり、作品に素晴らしい緩急をつけてくれましたね。
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